名付け
長い。突発的に思いついたネタを即興で書くのはやはり、難しい、と実感してます。
たかだか、3000文字が遠い。そして、書いていくうちに展開を変えたり、言葉尻を変えたり、そんなこんなしてたら四時間_(:3」z)_
おもしろいと感じていただけたら応援よろしくお願いします。
疲れ、処理の重くなった頭を無理やり回転させ、なんとか、名前を絞り出そうと粘る貴大は、夕飯の事など忘れ、スマホを耳に当てたまま唸っていた。
「ねぇ、ご飯なんだけど、何を唸ってるの? てか、誰とそんなに長話してるの?」
「ん、あぁ、名前を考えてて――って菜々、ノックくらい」
思考の海に沈みすぎて、現実へと浮上が間に合わなかった貴大は、焦りを隠す様に、突如入ってきた妹をたしなめようとしたが、思わぬ反撃を喰らう。
「え? 何、おにい、これから抜くとこだったの?」
「おいこら妹。何のことを言ってる?」
まさか、小学生の妹に男子高校生の事情をさらりと言われるとは思っておらず、硬くなりつつある表情をなんとか苦笑いに持っていき、『何のことを言っているのか、お兄ちゃんわかんないなぁ』的な雰囲気を纏うことで、兄の尊厳を守ることに成功している事を願いながら、言葉の真意を問うた。
「なにって、ナニですが何か? てか、さっきから散々謝ったり宥めたりしてたけど、彼女いたんだね? 出来ちゃった娘だかの名前なんていいから、ご飯食べなよ。片付かないってお母さんがうるさいんだから。あと、『後で話がある』って真顔で言ってたよ? 避妊大事。これ絶対」
「ふぁっ!? 何それ? え、なんで彼女とか、そもそも居ない彼女との子供!? 菜々、お前小学生のはずだよな?」
「だから? 今時の小学生、というか、普通の子は知ってることだけど?」
「やめろっ! 何を知ってるか、とか、そんな事を何故とか思わなくも無いが、マジで外で口にするなよ?」
「はぁ、スマホ有るんだから、そんなのは普通じゃん。なに焦ってるの? おにい、キモい。だから、彼女に泣かれるんじゃん」
「だから、彼女じゃねぇっ!」
『貴大との子供……条件に加えておけば……』
その呟きを貴大は拾うことが出来なかったのは、ある意味で貴大にとっては唯一の救いであった。
◆◆◆
夕飯を遅れて一人食べ終えた貴大を待っていたのは、静かに笑みを浮かべ、目が笑っていない母、静江との対談であった。
「で、貴大。お母さんに言う事があるんじゃない?」
「……ご飯美味しかったよ。いつもありがとう」
にわかに重く感じる空気を全身に感じながらも、引き攣る顔で日頃の礼を口にして逃げを謀ろうとする貴大に、さらに口元の笑みを深め、眉間に皺を寄せる静江に貴大は硬直した。
あかん、これ、マジなヤツや。と。
「ふふふ、そう。ありがとう、で? お礼に孫の顔でも見せてくれるのかしら? ねぇ?」
「……何のことか、理解ができないんだけど」
「あら? さっきまであんなに、女の子と仲睦まじくお話ししてたのに? たしか、初めてだったのに、恥ずかしい事をとか言ってたわね、彼女」
「……」
母の耳は地獄耳。どこのデビルなヒーローだよ、と内心こぼしながら、頬を伝う汗を拭うことすら出来ずに貴大は視線をさまよわせた。
「で、名前がどうとか、菜々に言ったみたいね? さぁ、答えて貰えないかしら。せめて、納得いく説明をして欲しいものね」
「……」
無言を貫く貴大を包む空気は重く、そして、どこまでも温度を下げ続けた。
「無言は肯定ととりますよ? さぁ、どこのお嬢さんを手込めにして身篭らせたの?」
「おい、母よ。あまりにも息子への信用が無さすぎないか?」
「あら? それは、真実を口にしない貴大が悪いのよ?」
「いや、正直、何と言ったらいいかわからないんだよ僕も」
「つまり、その気もないのに手を出して、孕ませた、と」
「待って、ねぇ、待って! なんで菜々といい、母さんといい僕を性欲の塊みたいな目で見てんのさ!」
「はぁ。ねぇ、貴大。机の引き出し上から二番目、二重底の下のもの、たしかタイトルは……」
「なんなのっ! アイツといい母さんといい、なんで僕の隠してる事を暴いてくれてんのっ!? とりあえず、彼女なんて居ないし、そんな羨ましい経験なんてしてないっ! 僕は純潔の童貞だ!」
「それをどうやって証明するのかしら? 男のあなたは良くても、彼女は消えない、いいえ、奪われ消失した純潔は戻らないのよ?」
「だから、彼女なんていねぇ! そして、誰の純潔も奪ってねぇ!」
たんたんと、貴大の冤罪を積み上げていく静江に激しく抗議をしたが、それがいけなかったのだろう。
リビングのテーブルを激しく叩き、静江は笑みを消して口を開く。
「陵辱、あの子の純潔は俺だけのもの。これ、なんの事か、わかるわよね?」
それは、貴大がこっそりと自室のノートパソコンに入れていたエロゲタイトルだった。友人から借り受け、インストール後隠しフォルダに入れて、パソコン立ち上げ時のパスコードまで設定し、完璧に隠せていると思っていたものだ。
「さて、貴大あなたの趣向からして、果たしてこれは間違った推理なのかしら? まさか、あのゲームで唯一コンプリートされたCGのような、女の子じゃないわよね?」
「ねぇ、本当にやめて。なんで、ゲーム起動してそこまで見てんだよ……。ゲームはゲームであって、そこに現実を当てはまるほど歪んだ願望はない! 本当に彼女は居ないし、そう言う事はしてない。名前は、そう、あれだ。その子の飼ってる猫が子供を産んで名前考えてって言われたんだよ」
「ふぅん。そう。じゃあ、最後に聞くけど、その子の名前は?」
「うっ!」
「言えないのかしら?」
名前、名前を。そう、脳内を激しくアニメ、ゲーム、漫画、ラノベの様々な好きなヒロインの名前が流れ、そして、先程のゲームで惚れ込んだヒロインの名前が浮かび口にする。
「ユーカ。本名は知らない。ある、ソシャゲで繋がっただけの友達だよ」
「まぁ、ソシャゲで出逢って繋が――」
「悪意ある解釈するな、本当に友達なだけだって」
「ふぅん。ユーカちゃんね。たしか、あのゲームの子もユーカだったわよね? まさか、その子と、ゲームを重ねて」
「無いから。ただの偶然だ」
「じゃあ、親としての不安を消すために、ユーカちゃんとお話しさせてもらえないかしら?」
「断る」
「知ってる? 携帯の解約ってお母さんなら解約出来るって」
「ぐぅ、とりあえず本人に聞いてみてでいいか?」
「ええ」
その言葉を受け、スマホを取り出し、メッセージを打つ。
その際に、最新のメールが、通話前の最後のメールで、彼女の心境が書かれていたのを見て、貴大は優しくしよう。そう、心に決めたのだった。
件名:ねぇ、お願い電話に出て。
本文:怖いの。誰もいない森の中で一人だし、ねぇ、どうしたらいいの? たすけて、貴大。喉渇いたよ。
底知れぬ罪悪感が、胸を締め付け、眉をしかめてしまった貴大の行動を、怪訝な顔で静江はただ黙ってユーカの返事が来るのを待っていた。
そして、メッセージを送った、数秒後に着信があり、貴大は今度は躊躇う事なく電話に出る。
「もしもし、ユーカ。さっき、メッセージした通りだ。出来たら母さんと話して欲しい」
『むぅ。名前、それで良いけど、他の女の臭いがする』
「お叱りは後で聞くから、とりあえず今大丈夫なら、電話代わるから。あとは、頼んだ」
『うん。えへへ、貴大のお母さんかぁ、楽しみ。早く代わって』
そして、電話を静江に渡し、妙な事を吹き込まれたり、吹き込んでないか、気が気じゃないまま、母と、元スマホの彼女、ユーカの会話はその後二時間続き、貴大はその会話の端ばしで、冷たく刺さる視線を静江から向けられたり、変な過去の恥ずかしい話を聞かされたりして、眠る事すらできず、焦点の合わない虚な視線で見守る事しか出来ない自分を呪っていた。
はい、名前までが長く、そして、主人公貴大の生き恥をどうしようかと考えて、出た結論。それがこれ。
母親が掃除して、エロ本を机に綺麗に重ねる。これの上位互換をと、考え出したのがパソコン。
本当に、突然死んだ転生系主人公はその辺、どう思ってるのだろうか?
みなさんも、異世界転生前には必ず処理しておきましょう。(どんな、注意喚起?)




