表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SF英雄伝~若返った廃ゲーマーは自由を謳歌する~  作者: 菊一片
第1章 アルタイル星系記
1/12

第1話 廃ゲーマーの行く末

 ノリで書いた不定期更新です。

気長に付き合っていただけたら幸いです。

 思えば長いような短いような一生だった・・・・

 30代の時に当たった宝くじから、泥沼のような汚い争いを経て、自由を勝ち取り、更にその金を投資によって増やし、それまでの一生の十分の一にも満たない時間で数千億になった。

 その間にも、一生に一度きりの、たった一人だけの女性との出会いを経て、仲を深め、ご両親に挨拶をして、式を挙げて夫婦の契りを交わし、誓いを立てた。

 その翌年には妻は子供も宿してくれた、それも男の子と女の子の双子である。

 その3年後にも男の子を宿してくれて、その頃は正に幸せの絶頂と言っていいくらいに幸せだった。

 その幸せが続くように妻と共に努力して毎日を忙しく、時に傷付きながら、時に妻や家族とぶつかり合いながら、時に力を合わせながら力を尽くして生きてきた。

 だが、その幸せは永遠ではなかった。

 その妻はわずか53歳で最近流行りだした病に侵され先立たれた。

 妻より年上とはいえ自分も63歳だがあまりに早すぎる別れに自分の心は折れてしまった。

 当時働いていた仕事の役職を他の誰かに引き継ぎ、自分は退職した。

 そして、有り余る財力で自らは部屋に引きこもるようになった。

 60代のジジイが何を言っているのかと思うかもしれない。

 だが、それくらい妻に先立たれた事がショックだったのだ。

 そんな生活をして2年程過ぎた頃、末の息子にあるゲームを勧められた。

 「親父、暇ならこのゲームをやってみなよ。」

 そう言いながら息子はゲームソフトを私に手渡してくる。

 パッケージを眺める私に息子は更にこう伝える。

 「兄ちゃんと姉ちゃんが作ったゲームだってさ、親父に是非やってみてほしいって言ってた。」

 今目の前にいる末の息子は小さい頃はゲームクリエイターになると言っていたが、いつの間にか医者になると言い出して医大に進学した。

 上の子達がそういった職種に就いたのに、この子だけは違った。

 「俺もっと勉強するからさ・・・親父ももう少しだけ俺達の事を見てくれよ。」

 息子は私の目を見ながらそう言ってくれた。

 「じゃあ俺、仕事言ってくるから・・・」

 そう言って息子は部屋から出て行った。

 「ふむ・・・」

 そう言いながら私はゆっくりとゲームをパソコンにインストールした。

 「ゲームのジャンルは、SFファンタジーか・・・しかし、SFに魔法は出てきてよいのだろうか?」

 自分でも不思議だが、我が子が作ったというだけで何十年ぶりかわからないくらい久しぶりにコントローラーを握った。

 「説明書を見る限り武器の種類も豊富、フィールドの広さもかなりのモノ、おまけに宇宙船だけではなくパワードスーツにロボットまで出てきてしまうとは・・・まるでレーザーだけでは物足りないあなたへ、と言うようなゲームだな。」

 説明書を読んで一通りの感想を溢して、ゲーム画面と向き合う。

 「昔なら()()()でプレイしたが、今更気にしても仕方ないし、普通にやるとしますか。」

 一通りのプレイヤーキャラクリエイトを済ませて、ストーリーを始める。

 「どれどれ、ボチボチと始めますか。」

 そのゲームにドはまりをしてそれから30年の時間が経過した。

 自分でも驚くくらいにそのゲームをやり続けた。

 我が子が作ったゲームだったからという理由もあったからかもしれない。

 わざわざゆっくりゲームをやりたいが為に、自分の遺産を生前贈与という形で我が子達に渡した上に、メーカーに多額の援助を、つまり息子達の会社に寄付をしてこのゲームが続くようにしたり、末の息子の子に色々と買い与えてみたりと中々な金の使い方をした。

 その後しっかり我が子3人から説教を受けてしまったがまぁ仕方あるまい、後悔はしておらぬ。

 妻が亡くなってからもう少し30年、ワシも90になった。

 心配だった上の子達もしっかりと相手を見つけて、孫を見せてくれた。

 孫達もいい子に育っておる。

 このゲームも遂に10作目、節目を迎えるくらいのゲームになっておる。

 勿論、全ナンバーをワシは制覇しておる。

 これも今戦っているボスを倒せばエンディングじゃ。

 ホレ、これでトドメじゃ。

 「ふぃ~、流石に疲れたわい・・・」

 そして、今そのボスを倒した。

 エンディングが流れ始める。

 ワシが満足した、満ちた心持ちで画面を見ていると睡魔が襲ってくる。

 「流石にはしゃぎ過ぎたかの?どれベッドで一休み・・・」

 そう言ってワシはベッドに倒れ込み、天井を仰ぎ見ながら目を閉じる。

 そう言えば、ワシの名前を伝えておらなんだ。

 ワシの名前は川上 零士じゃ、カッコいいじゃろ?

 そして、このゲームの名前は“ギャラクシーワールドファンタジー”、略してGWFと呼ばれるオンラインRPGじゃよ。

 もう限界じゃ、ではおやすみなさい。


 それから、その老人が目覚める事は無かったがその顔とても安らかな表情だったと彼の家族は答えた。





―――――――――――――――――――――――




 目を開けると満天の星空が目に入った。

 「どこじゃ?ここは・・・」

 ワシはそんな疑問を感じながら辺りを見渡す。

 すると見慣れない機械が目に入る。

 「はて?ワシは何をしておったんじゃか?」

 必死に頭を捻りある答えを出す。

 「ひょっとしてこれは、ゲームでワシが乗ってた愛機 中型宇宙船[カラド・ヴォルグ]か?」

 確かゲームでもコックピットに入れたから間違いない筈だ。

 しかし、

 「この歳になってからゲームの中に入り込む夢を見るとは・・・」

 そのような事を考えながら今更ながらに寒さに震える。

 「とりあえず、エアコンくらいついてるじゃろ?え~と、パネルは・・・」

 そう言いながら操作するとエンジンが掛かったようだ。

 「ふむ、あのまま放置しておくとワシ、窒息しておったのう・・・」

 そんな事を一人でブツブツと言いながらパネルとモニターを見る。

 「ワシみたいな老いぼれがこんな()()()()()機械を操作できないと思うのじゃが・・・あまりわからない所は無いのう。」

 そう言って今度は船の中を探索してみる。

 「食料と水は少しあるが、これじゃさすがに心許ないのう・・・」

 とりあえずの食料と水を見つけたのはいいが、3日分あるかないかの量しかない。

 「()()はバッチリだのう」

 白兵戦に使う兵器と対人戦に使う武器を見て、その中の一つである刀を手に取る。

 「さて、・・・せいっ!!」

 とりあえず昔子供の頃に見た漫画の真似をしてみる。

 すると驚く程、体が()()()動く。

 「90の動きではないのう、鏡を探して見るか。」

 トイレの傍にシャワールームがあり、その中に鏡があった。

 「また随分と面妖だのう・・・」

 鏡の中に立つ自分は20代半ばといった顔つきと肉体だった。

 「いくら何でもそりゃ無いじゃろ、いくら夢でも・・・」

 自分でガックリとしながら、再びコックピットに戻りパイロットシートに座る。

 「とりあえず、適当に動かして見るかのう。」

 そう言ってレバーを握り、アクセルを吹かす。

 「それじゃ、発進・・・おぉっ!?」

 今更ながらに思い出す愛機の性能、シリーズトップクラスの加速力にスピード、旋回性能に攻撃力、更に5枚あるシールドの防御力に耐久値、唯一装甲がそこまで頑丈ではないがそれでも並みの中型艦よりは頑丈だ。

 この機体のチートは改造値がめちゃくちゃ多い事だ。

 つまりこの機体は手に入れた時から伸び代しかない状態だった。

 それをひたすら金と素材を集め、時には課金し、只金を機体に貢ぐ。

 ゲーム内でのこの機体の別名は貯金箱と持て囃されるくらいの金が掛かった。

 だが、その分の見返りは大きく皆が勇んでこの船の改造に手を()()()

 ワシもかなりの時間をかけた、毎日5時間プレイしておおよそ一年以上、しかも後3日でアップデートをして新シナリオが始まると言う所でどうにか改造を完了した。

 新シナリオが始まると百パーセント改造出来ないと言う運営の鬼畜っぷりに多くのプレイヤーが血涙したと攻略サイトで話題じゃった。

 「そろそろ武器も試射して見るかのう。」

 そう言ってワシはウェポンマウントを解放する。

 「とりあえずサブウェポンから・・・」

 適当に宙空に放つ。

 「やはり、何か的に当てないとわからないのう。」

 そんな時にブザーが鳴り響く。

 「ふむ、宙賊かの?ゲームだとこういう時に一般人が来ることはまずないしのう。」

 対応を思案しながらレーダーを確認する。

 すると現れた相手の船からスキャンニングされ、通信が入る。

 「ようブラザー、景気がいいようじゃねぇか?俺らにもその運気を分けてくれよ?」

 いかにもSFのごろつきと思わしき顔が写る。

 「そんなお主が欲しがりそうなモノなんて積んでた覚えはないがのう。」

 そう言いながらコンソールを操作して、今自分の船が何を積んでいるかチェックする。

 するとある貴金属が積んであることに気付く。

 「お主らが欲しいのはこのレア・マテリアル(R・M)かの?」

 ワシがそう言いながら相手の船をスキャンニングする。

 すると案の定、相手は宙賊だった。

 「あ~あ、見ちまったかぁ~」

 ニヤニヤと笑いながら、楽しそうにこちらに告げる。

 「見ちまったからには死んでもらうぜ?」

 ワシは仕方ないと割り切って、

 「悪く()()()()()

 そう言って愛機を急発進させる。

 「なんだと!?」

 驚く賊に反応せず、手短なやつに照準を合わせサブウェポンのホーミング・レイ・レーザーを放つ。

 「何だ!?コレ!?ぎゃあぁぁぁ!?」

 あらぬ方向に放ったレーザーが敵艦に向かって追尾し、3隻の内、2隻撃墜した。

 「てめぇ!死にやがれぇ!!」

 そう言ってレーザーを放とうとする敵機の()()がゲームのように赤い線として浮かびあがり、自分の視界に入る。

 「おっと、危ないのぅ」

 それが見えた瞬間にまるで無意識に反応して射線から避ける。

 「れ、レーザーを避けやがった!?」

 そのままフェイントと混ぜながら敵機とドックファイトに入り、メインウェポンである大型レーザーキャノンを放つ。

 「く、ちくしょおぉぉぉ!?」

 断末魔を残しながら宙賊艦はレーザーによって宇宙の藻屑と化した。

 「ふぃ~、ここまでやって夢から覚めんとは・・・やはり現実かのう?」

 一通りの戦闘行動も終わらせ、今の自分の状況を精査する。

 「とりあえず、サルベージかのう?若返ったのも悪い事では無いし、また新たな人生を謳歌するのも一興かのう?只、新しく嫁を貰うのは・・・どうしようかのう?先逝かれた嫁にも少し悪い気もするし・・・う~~~~む??」

 そう言って敵機の残骸にドローンを放って回収物をチェックする。

 「とりあえずデータキャッシュをチェックするかの」

 あまり良くない事だが、結論を先伸ばしにした。

 これからどうなるかはわからないが、どうにかなるだろうと自分に言い聞かせながら。


 この時、この瞬間に銀河一の理不尽と呼ばれる傭兵がこの世界に誕生した。

 宇宙暦 887年 1月 30日  本項目を登録。

 これから若返ったじい様の無自覚道中が始まります。

 じい様はゲームと現実が分けれないダメな大人なのでご注意ください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ