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病的に人見知りな幼なじみと七不思議を創ります。  作者: ナカネグロ
第6の不思議︰呪われネットワーク
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第6の不思議︰呪われネットワーク-01

 珍しく、部室にはオレと日下さんしか居なかった。宮華は歯医者で、他のみんなはまだ来てない。

 結局あれからスニークさんに出会った、みたいな話は特になく、あれはあれでリアルタイムな“事件”なんかじゃなく、ふとしたはずみに思い出される星高の怪談話になったんだと思う。


 オレは本を片手に椅子に座り、日下さんは少し離れたところで机に突っ伏して寝てる、と見せかけて寝てない。頭を腕に乗せたまま顔をこちらに向けて、オレのことをじっと見てる。そうやって動かないでいると、なんとなく爬虫類みたいだ。

 にしてもあらためて意識すると、背の高い日下さんが普通の高さの机に上半身乗せて寝ようとすると、かなり椅子を引かなきゃならないんだな。


「ああ、その、どうした?」


 たっぷり2分くらい待ってから尋ねる。


「なんか、長屋くんて変わったようで変わってないな、と思ってた」

「なんでまたそんなこと」

「私、高校入ってから変わったな、とか考えてて、そのついで」

「ああ、まあ、日下さん高校で再デビュー目指してるんだもんな。デビュー目前くらいまでは来てるんじゃないか?」

「なんかそういう、気の利いたこと言ってるふうなこと言うの、直したほうがいいよ」

「……そうか。ごめん」


 真顔で責められオレは申し訳なく思うと同時に、ちょっとだけ嬉しかった。なにせ、ただの雑談でこんなに二人で盛り上がったのは初めてだ。……これでも盛り上がってるんだよ!


「じゃあ真面目な話するけど、変わったようで変わってないって、どういうことだ?」


 外見の話じゃないと解っていても、つい自分の体を見下ろす。


「あー。えーっと」


 日下さんは言葉をまとめようとする。


「──まあ、いい」


 諦めた。


「おい! 気になるだろ」

「長屋くんがすっきりするために、私が苦労しなくてもいいでしょ。知ったところで何かあるわけじゃないし」


 ヤレヤレというように息を一つ吐くと、日下さんはスッと目を閉じた。


「や、でもほら、他人からどう思われてるかちゃんと聞く機会なんてそんなにないだろ? 知りたいっていうより、なんていうか、教えてほしいんだ」


 日下さんが眉間にシワを寄せながら目を開き体を起こしたことに、オレは少し感動した。以前ならオレが何を言っても、面倒なら相手にしてくれたりはしなかった。いちおうそれなりに親しい人間だと思ってもらえてるんだろう。


「うーん。言葉を選ばなくていいなら。あと、絶対に怒らないなら」


 つまり、ストレートに言うとオレが怒りそうな話なのか……聞くのやめようかな。

 まあでも、せっかく話す気になってくれたんだし、やっぱり気になる。


「約束する。そもそもオレ、日下さんに本当に怒ったりイラついたりしたことないだろ?」

「そんなに酷いこと言ってないから」


 まさに今の言葉にイラッとさせられたのは認める。日頃オレをサンドバッグとして好き放題遠慮無し、いつでもどこでも好きなように言葉で殴ってくるのは誰なんだと言ってやりたい。“兎和さんとか? あれは自業自得でしょ”とか言われそうだけど。


 オレはそんな考えは少しも表に出さず、軽くうなずいた。こうやって抑えられるあたり、やっぱり本気で腹を立ててるわけじゃないのだ。本当だよ? 本気で腹立ててるのにガマンするなんて、オレにそんな忍耐力はない。


「最初、長屋くんて独りよがりな正義感を押し付けようとして空回ってるうっとおしい奴だと思ってたんだよね」


 おおっとお。本人が許可したとたん、いきなり重量級のパンチを放ってきたぞ! オレ、今まで生きてきて一番ヒドイこと言われてる。

 日下さんとの出会い方は最悪だったし、慣れない新生活でストレス抱えてたろうし、オレの印象が悪かったのは仕方ない。そう思ってどうにか持ちこたえる。


「それが今は七不思議で怖がる人いても平気そうだし、逆ラブ地蔵のときに人間関係おかしくなりそうな人が出てもたいして気にしてなかったみたいだし、霧島さんの弱み握って口封じもしてるし、正義感どころか倫理観なくしててずいぶん変わったな、って」


 オーケー認めよう。今もオレの印象は最低だし、オレは泣いてもいい。


「ま、まあ霧島さんの弱みを見つけたのは湯川さんだし、今は霧島さんが自滅しないようにむしろ手助けしてるんだけどな」


 泣きたくて声が震えそうになる。


「まあ、それでね」


 精一杯のセルフフォローは流された。


「長屋くんて流されやすいでしょ?」

「お、おう」


 それは前から自分でも認めてる。


「最近気が付いたんだけど、結局、変わったように見えるのは七不思議創ることに流されてるだけで、そこは少しも変わってない。解る?」


 オレは日下さんの言葉を考える。


「つまり表面的には変化したけど、その土台の部分は少しも変わってない。そういうことか?」

「そう。それに長屋くんて、その時その場で一番いいと思った方を選ぶでしょ? だから何が起きるかで言動が変わる。それで──」


 どういうことだ? オレの疑問が顔に出たのか、日下さんは言葉を切った。


「ふざけるつもりとかないんだけど……どういう意味だ? だって、そのとき一番いいと思うことがあるなら、普通それを選ぶだろ」

「そう言っちゃうとそうなんだけど……」


 上手く説明できないみたいで、日下さんは言葉を探すように黙り込む。少しして。


「ねえ。本当に面倒だからもう終わりで」

「いや、もうちょっとだろ! がんばろう。な?」

「だって、なんで長屋くんのためにこんなこと」

「あ、じゃあ、ほら。今度なんか、おごるから」

「なんでそんなに知りたいの? 知ったところで変えなきゃいけないものでもないんだし、私の考えが間違ってるかもしれないし」


 できれば間違ってて欲しいけど、大事なのはそこじゃない。


「話が中途半端で気になる」

「でも何かおごるとか、そこまでして知りたいの?」

「ああ。日下さんからどう思われてるのかなんて、知りたいに決まってるだろ」


 日下さんの顔が歪む。


「気持ち悪い……」


 “キモっ”とか言われるより重いな! じゃなくて、誤解をとかないと。


「日下さんだけじゃないからな!? よく一緒にいる相手からどう思われてるか気になるだろ。普段はこんな話する機会ないし」

「確かに、いきなり“なあ、オレのことどう思う?”なんて聞かれたら──」


 そう言うと、日下さんは露骨に嫌そうな顔をした。


「まさに今がそんな状況じゃない。なんか本当に気分悪くなってきた」


 日下さんが気を取り直すまでしばらくかかった。


「じゃあ、明日のお昼おごりで。買ったもの写真で送るから、部活のときに精算して」


 一緒に食べに行くとか、そういう発想がないのは日下さんらしい。


「解った。お昼ってことは、さすがに1000円もしないよな」

「なんで? おごりなのに?」

「だよな……」


 それでも食べる量を思えば、2000円はしない、はず。


「ちゃんとお昼に食べる分だけにするんだぞ」


 いちおう釘を刺す。


「え? もちろん。まあ、食べる気で買って、意外とお腹がいっぱいになって残っちゃうことはあるかもしれないけど……」

「残った分は払わないからな」

「精神的な苦痛の見返りなんだから、あれこれ言わないで」


 返事としてはおかしいけれど、そこを言い出すと話が進まない。


「それで、さっきの話の続きは?」

「ああ、えーっと」


 考え込む日下さん。オレはじっと待つ。………………長いな。なんでこんなに時間かかるんだ。もしかして何も考えてなかったとか?

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