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第4の不思議︰あかずの首-13

 重苦しい空気になりかけたところで、いきなり兎和が入ってきた。


「みんないるの?」

「兎和さん!?」


 湯川さんの顔が明るくなる。そっか。湯川さんは兎和が好きなのか。


「本当に入部したのね」

「えと、その、すみません」

「別にいいけど」


 兎和は座らず、立ったままオレたちを眺めている。


「今日は、いったい……」


 宮華が少し警戒するように言った。


「湯川さんの入部と、今日の部活の連絡くれたでしょ」


 なに!? この中に兎和側の内通者がいるのか?


「長屋くんが連絡くれたの。たまには神野さんたちが連絡くれてもいいのよ」


 はい。オレでしたー。昨日のうちに兎和と圭人に連絡したのだ。予想どおり圭人は既読もつかなかったけど。だって知らせるの遅くなって後で何か言われるのも嫌じゃん。決して兎和様に忠義を尽くそうとしたわけではない。


「今日はもう終わり?」

「ああ。なんで七不思議に気づいたのか教えてもらってたんだ」

「そう」


 その一言で色々と察したらしい顔をする兎和。


「そういや、二人ってどういう知り合いなんだ?」

「オカルト同好会を作ろうとしてたときがあったでしょう? あのとき、湯川さん私のところに何度も頼みに来たの。作らせてほしいって」

「なんでだ? 生徒会が承認するわけじゃないんだろ」

「あの、それはですね。なんだかそうする方がいい気が、して」


 相変わらず説明にならないことを言う湯川さん。


「生徒会としては支持する、ということで側面から教師と交渉することはできたでしょうね。ただ、それをやっちゃうと他にも部活作りたい人たちがウチに来るようになる。湯川さんたちだけを優遇はできないから、そうなると手を貸すしかない。学校側も窓口として使うようになる。それを避けたかったの」

「じゃあ、もし説得できてたら」


 兎和さんは肩をすくめた。


「あるいは、ね。実際、上手く行かなかったけど読みとしては悪くなかったと思うわ」


 オレたちは湯川さんを見た。注目を集めたせいで、湯川さんはテンパった顔をする。


 そんなオレたちに兎和はため息をついた。


「湯川さん。そうね……。宮華さんについて、なにか閃くことはない?」

「あっ。神野さん、ですか?」


 湯川さんに見つめられ、宮華は顔をそらすと自分で自分を抱くようにした。湯川さんはまたあの、異世界生物が人の皮かぶって覗いてるような目をしている。あれを正面から受け止めるのは無理だ。


 しばらくして、湯川さんは口を開いた。


「神野さん、夜マやままことさんの親戚かなにかですか?」


 夜マやままことというのは特殊メイクアップアーティストで、最近はお化け屋敷プロデューサーとして活躍してる宮華の叔父の活動名だ。


「なんで……!?」


 宮華の声は震えていた。


「姪がいるなんて公表してないし、顔も似てない。オープンな住所は東京の事務所だし……。どうして」


 湯川さんに詰め寄ろうとして、宮華は足を止めた。湯川さんはすっかり怯えていた。


「すみません。すみません。あの、ごめんなさい。私、あの、すみません。えっと。もう」


 宮華はこめかみを揉むと大きく呼吸をして落ち着きを取り戻した。


「いいから。ちょっと驚いただけ。それより、なんでそう思ったの?」


 穏やかな声だ。


「えっと、はっ、あの……解りません」


 解りませんと言ったとき、その声は心底途方に暮れていた。


「私の仮説だけれど」


 兎和さんが言った。


「湯川さんはたぶん無意識に断片的な情報をたくさん集めていて、ピースが揃って組み上げられたら初めて、その答えだけを自覚するんだと思う。ただし、こうやってある程度方向づけてあげることもできる」

「そんなこと、あり得るのか?」


 人間離れしてる、と言いそうになってやめた。それじゃまるで、湯川さんが化物みたいだ。どれほどそれっぽくても、言われる本人は嬉しくないだろう。


「私に思いつく中で、一番現実的な説明よ。これ以外はファンタジー」


 兎和はどこか諦めたような口調だ。


「少なくとも人並外れた推理力があると思えば、驚きはしても不気味ではない、でしょう?」

「まあ、霊能力やら超能力なんかよりは、それらしい理由があるだけマシか」

「さっきのことだって、宮華さんはホラー好きで大道具小道具を作る技術と環境がある。あとなにかの映像で夜マさんの工房が映ったとき、周辺映像から鶴乃谷周辺だって特定できたのかもしれない。その二つだけでも、二人に関連があるかもしれないって推測はできるでしょう──もちろん、尋常じゃない記憶力と連想能力が必要だけれど」


 兎和と湯川さんの目が合う。


「あの。兎和さんは初めて私の、あの、これを、まじめに説明しようとしてくれて、えと、はい」


 なるほど。それで兎和のこと慕ってるのか。


「まっ、まあ、とにかく。湯川さんくらい特殊な力がないと真相にたどり着くのは難しいみたいじゃない。これまでもバレないようにかなり気をつけてたつもりだったから、実は穴だらけだったんじゃないかって心配してたんだけど」


 宮華の声が少し高くなってるのは、まだ動揺を引きずってるんだろう。


「その、うーん、洞察力、は七不思議創りでも活躍できるかもしれない。もし気が向いたら言ってね。そうじゃなくても、ホラーやオカルトの話ができる人は歓迎」


 隣で日下さんもうなずいている。それを見て、オレは安心した。まあ、なんだかんだ言って宮華も日下さんもさらに言うなら兎和も、ついでに自覚なさそうだけど圭人も。みんなタイプは違うが他人と上手くやってくのが苦手な人間だ。ある意味、多彩な陰キャの見本市と言ってもいい。

 だから解り合ったり共感したりは、まあできてるのか知らないが、お互い冷たくはできないんだろう。


 そんなわけで、なんとなくいい雰囲気のまま次の部活は2学期からということにして、オレたちは校門のところで別れた。


 ……だ、か、ら、オレたちはいつだって現地集合現地解散だっつってんだろ!


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●星高七不思議の4

 星高の使われてないとある部屋には、一度も登校せずに死んでしまった女子の霊が出る。その生徒はあかずの間に入ったせいで命を落とし、その呪いで幽霊になって囚われている。

 彼女は星高生を妬んでいるので、窓辺に立って首を落としてみせて、興味を持った人間をおびき寄せようとする。


 その部屋に入ってしまうと殺されて仲間にされるので、決して行ってはいけない。


 ただし部屋へ入る前に「あかずの首」と三度唱えると中に入っても何も起きず、無事に出てこられる。

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