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病的に人見知りな幼なじみと七不思議を創ります。  作者: ナカネグロ
第2の不思議:幽霊部員の幽霊
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第2の不思議︰幽霊部員の幽霊-15

 翌日の昼休み、オレは圭人に生徒会室へ呼び出された。兎和さんと会ったときのことが蘇ったけど、さすがに顔近づけて詰め寄られることはなかった。


「昨日、先生に事情を話して生徒の顔写真を見させてもらった」

「あ、おまえと日下さんが会った生徒の話か」

「そうだ。それぞれ部室で見覚えのない生徒に会った、ということだけ話してある」

「で?」

「結論から言うと、僕の見た女子の写真はなかった。それらしい生徒さえいない。そこで、本人にはもう話がいってるはずだが、日下さんにも写真確認をしてもらうことになった。生徒じゃないとなれば学外の不審者。放火事件の犯人も見つかっていないし、学校も重く見てる──」


 そこで圭人は言葉を切った。なにか迷ってるみたいだ。そこで、オレは促すためにもさっきから浮かんでいた疑問を投げた。こっちから巻いていかないと昼休み終わりそうだ。


「それで、なんでオレは今ここでその話を聞かされてるんだ?」


 これで圭人はオレを呼んだ本当の理由、何か知らんが、それに関わる話をするはずだ。さあ、本題をどうぞ! 早くしろ!


「じつは、 僕らの目撃した時間の前後で部室周辺を中心に監視カメラの映像を調べたみたいなんだ。結果、今のところそれらしい男女は映ってないらしい。カメラはそれほど密に配置されてるわけでもないし、今後、どこかに映ってるのが見つかる可能性もゼロじゃないらしいが……」


 ん? なんか予想外な話を聞かされてるぞ。


「誰もいないのに勝手に部室のドアが開閉してたとか、そういう映像もないみたいだが、下手をすると本当に幽霊話になりかねない。もしくは僕らが嘘をついているか。なにせ今のところ、僕と日下さんが見たという証言以外、なにもないからな」

「ん。まあそう、だな。……えっと、それで?」

「それで? 以上だ」


 不思議そうな顔するんじゃない。


「オレを呼んだのは今の話を聞かせるためか?」

「ああ。一応、知らせておこうと思ったんだ」

「なんで?」


 あっ。思った瞬間言っちゃったけど、けっこう冷たく聞こえるな今の。食い気味だったし。けれど、圭人は気にならなかったようだ。


「うーん。一人で抱えてるにはモヤモヤするし、かといって他にこのことを話せる奴もいないしで、長屋に聞いてもらいたかったんだ」


 どこからか腐女子の低い笑い声が聞こえた気がした。──なんだか最近、自意識過剰、いや、腐女子意識、百合スキー意識過剰な気がする。これがノイローゼというやつか? いや、違うか。


「部活じゃなく今なのは、ひょっとして宮華と日下さんを怖がらせないためか?」

「そうだ」

「オレが怖がるって可能性は考えなかったのか」

「怖いのか?」

「正直、ちょっと。おまえだって」

「なにせ僕は女子の方とは会ってるんだ。まったく怖くないといえばウソになる」


 なるほど。つまりその恐怖をオレと分かち合おうってことか。オレのことをずいぶん親しく思ってくれてるってのは解ったけど、冷静に考えるとやっぱり少しゾッとさせられる。本当に、圭人と日下さんが会ったのは誰だったんだ。



 そんなこんなでフワッとしたままオレと圭人の友情回としてこの話は終わるんだろうと思っていたんだけど、後日譚があった。


 それは圭人に生徒会室へ呼び出されてから一週間くらい後のこと。6月も半ばを過ぎて、いつまでも雨が降り続いていた。

 家へ帰って靴を脱ぐと、玄関に乾いたタオルが置いてあった。


「あ、イチニィおかえり」


 ひょっこり裸足の宮璃が顔を出した。


「タオル、私が足拭いたヤツだけど、よかったら使って」


 オレは床のタオルを見た。


「そりゃ、そういうの喜ぶやつもいるんだろうけど」

「冗談だって、使ってないの出しておいてあげたんだから、感謝してよね」


 そう言って笑う宮璃。あいかわらずオレを翻弄してくるな。嫌いじゃない。むしろ好き。義妹に苦も無く振り回される兄ポジは最高だ。


 それからリビングでダラダラしていると、ふと宮璃が尋ねてきた。


「星高で幽霊が出たってホント?」


 オレの脳裏に、圭人や日下さんの件が浮かぶ。


「さあ。どうかしたのか?」

「それがさあ、同じ内容なのに男子が女子の幽霊に会ったって話と、女子が男子の幽霊に会ったって話と二つのパターンがあるんだって」

「ふうん」


 オレは軽く聞き流してるふうを装う。間違いなく圭人と日下さんの話だ。でもどこから流れたんだろう。圭人、は考えにくいし。兎和さんか?


「でその、話の内容ってのはどんななんだ?」

「それが、っていうかそれも不思議なんだけど、話の内容は解らないんだよ」

「え?」

「なんか怖すぎて、聞いちゃうと心を病むんだって」

「んー。つまり、“怖すぎて中身は伝わってないけど、とにかく同じ内容で男子が女子の幽霊に会うパターンと、性別逆のパターンの二つの話が星高で噂になってる”って話があるってことか?」

「そうそう。ややこしいけどそういうこと。なんか不思議な話だよね」

「そうだな」


 と言いつつ、オレは思い出すことがあった。なんだったか。あれ? 思い出せてねぇな。えーと。あ、“くだんのはは”だ。確か“くだんのはは”っていう怪談があるんだけど、それが怖すぎて誰も内容を知らなくて、ただそういう怖い話があるっていうことだけがハッキリしてるって短編小説だったはず。なんだかそれに似てる。


「じゃあ、イチニィは知らないんだね?」

「ああ。初耳だ」

「まだあんまり噂になってないのかな」

「オレは別に情報が早く入ってくるとか、そういうタイプじゃないからな。なんとも言えない」

「そっかぁ」


 呟いて何やら考える様子の宮璃に、オレは何となく違和感があった。それこそ物心つくかどうかのころから見慣れた相手の、なんだか見慣れない雰囲気。でも、初見じゃない。

 しばらく頭の中をまさぐって気が付く。そこまで親しくない人と過ごしてる時の宮璃っぽいんだ。けど、なんでだ?


「どうした?」

「え? たいしたことじゃないよ。ヒキコサンのときと今回、なんだか星高で怪談話が多いなって」


 そう言いながらも、やっぱり宮璃はいつもと違う雰囲気を崩さない。


「放火の後ぐらいからかなぁ」


 そう言ってオレに向けられる目を見て、なんとなく理解した。宮璃のこの感じ、確かにそこまで親しくない人といる時の感じなんだけど、それは遠慮とか距離感、よそ行きとかそういうことじゃなくて、相手を観察してるんだ。

 何で解ったかといえば、これはもう長年の付き合いで、としか言いようがない。


「宮璃、ひょっとして何かオレのこと疑ってないか?」


 直球を放ってみる。


「さすがイチニィ、お見通しだね。でも、ちょっと違うかな。疑ってるわけじゃなくって、不思議って思ってたの。新しい高校ができて、放火事件が起こって、お姉ちゃんとイチニィが部活を作って、日下さんとか圭人さんが入部して、都市伝説みたいなのが二つも。それぞれ関係はないのかもしれないけど、今まで起こらなかったようなことが一気にいっぱい起こってて、偶然なんだろうけど、運命っていうか、なにかそういう大きな不思議があるのかな、って。イチニィ見てそんなこと考えてた。あー。なんか変なポエム語ってるね。忘れて」

「あ、いや。言われてみるとそうだな。始まってまだ三カ月くらいなのに、いろいろ起こってる」


 言いながら、オレは内心で冷や汗をかいていた。確かにこの期間で怪談めいた噂話が二つは多すぎる。勘の鋭い宮璃のことだ。そこに何か不自然さを感じてるんだろう。今も長々と喋りながら、こっちの反応を探るような目をしてたし。

 もしかしたら他にも、宮璃と同じように感じてる生徒がいるかもしれない。兎和さんだってなぜか七不思議のこと知ってたし、これは今まで以上に用心深くやらないと。


 それにしても、初回から二つ連続でこうやって噂になるってのは、それこそすごい偶然だと思う。普通こういうのっていくつもいくつも仕込んで、ようやく一つか二つくらい上手くいくかどうかってところじゃないだろうか。こっちの方が不思議な運命めいたものを感じるけれど、そんなこと宮璃に言えるわけがない。


 こうして、不気味な男女の正体とともに闇へ消えそうだった“幽霊部員の幽霊”の話は、少しメタい形で噂になっていったのだった。


 それにしても結局、圭人と日下さんが見たのはどこの誰だったんだろう……。



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●星高七不思議の2

 星高には“幽霊部員の幽霊”という名前の怪談話が伝わっている。あまりに恐ろしい話なので、知ってしまうと恐怖のあまり発狂してしまう。


 この話には同じ内容で男子生徒が女子の幽霊に会う話と、女子生徒が男子の幽霊に会う話の2パターンがあって、その両方が本当にあった話だという。


 この話の存在を知ると1週間後に男子なら女子の幽霊が、女子なら男子の幽霊がやってきて本当の“幽霊部員の幽霊”の話を聞かせてくる。聞いた人は恐怖で気が狂って死ぬ。

 助かりたければ1週間以内に5人にこの情報を拡散すればいい。

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