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病的に人見知りな幼なじみと七不思議を創ります。  作者: ナカネグロ
第2の不思議:幽霊部員の幽霊
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第2の不思議︰幽霊部員の幽霊-03

「あー。ビックリした。焦った」


 教室から離れると、思わず声が出た。いつのまにか全身にイヤな汗をかいてる。ちっとも気づかなかった。


「なんだったんだ、今のは?」

「なんだろう。酷い緊張状態とか、そんな感じだな」


 さすがに教室戻ったら宮華があんな状態になってたから、かなり怖かった。

 目の前のコイツをふざけて脅してたのも、とっさに過呼吸の対処法とか調べられたのも、驚きすぎてかえって頭が麻痺してたからだ。


「だから、なんだってそんなことに? 僕はなにもしてないぞ。……そもそもあの娘、置いて出てきて良かったのか?」

「オマエをこうして引き離した方がいいんだよ。何もしてないって言うけどな、アイツは重度の人見知りなんだ。だからオマエの存在自体が原因なんだよ」

「人見知り?」


 怪訝そうな顔をされる。


「人見知りなんかで、あそこまでなるものか?」

「知らん。ただ、現にそうなんだから──本当に何もしてないのか? そもそもオマエ誰だ?」

「僕は鶴乃谷圭人ツルノダニケイト。生徒会長だ」


 その独特な名字にピンとくる。あ、これひょっとして権力ある方の生徒会かもしれん。


 圭人の話によると、部室へ来たら宮華がいた。けれどいくら話しかけてもガン無視されて、つい大声を出してしまったらしい。それであんなことになったんだろう。


「さすがに女子からあそこまで堂々と無視されると辛いやら腹が立つやら。そうしたらアレだろ? 馬鹿にされてるのかなんなのか、わけが解らなかった」

「なるほど」


 どれだけ話しかけても目を合わせず、顔をそらし、身をこわばらせる宮華。うつむいて、圭人を自分の世界から締め出そうとする。そんな光景が目に浮かぶようだ。


「それは……おまえ悪くないな。ごめん」

「ああ、誤解が解けてよかった。いや、僕も腹を立てたのは悪かった。それにしても困ったな」

「何がだ?」

「いや、郷土史研究会は入部希望の第一候補なんだ」

「は? 視察に来たんじゃないのか?」

「ん? 視察? 部活見学だ」


 なんあの先生なんなん? 情報間違ってるじゃねーか。入部はマズい。


 今日のあの惨状見たらオレ以外にもう一人くらい部員という名の世話係が必要な気はするけれど、コイツが入部したら七不思議活動に支障が出る。

 にしても、なんでウチに? 宮華がわざわざ郷土史研究会にしたのは、余計な入部希望者を避けるためでもあるんだが。しかしこれはチャンスだ。さっきの宮華の怯えっぷりを口実に断ってしまおう。


「鶴乃谷もさっきの見たろ? あの様子じゃ、悪いけど難しいと思うぞ」

「……いや、見学してからにしたかったんだけど、まあ、変な部活じゃなさそうではあるか……。よし、郷土史研究会に入部しよう」


 は? コイツ人語を話す獣かなにかか? 全然理屈が追えない。


「いやおかしいだろ。なんでだよ。アイツをストレスで殺したいのか?」

「心配しなくてもいい。あくまで在籍するだけ。幽霊部員だよ」

「?」

「とにかく、入部はするけど参加はしない。だから彼女を苦しめることもない。キミたちだって部員が増えれば来年度予算が増えるし、いいだろ」

「んー。なら。まあい──」


 オレは納得しそうになって、思いとどまる。


「いやいやいや。おかしいだろ。何目的だよ。怖いわ。っていうかオマエすでに生徒会長じゃん。これ以上内申稼いでどうすんだよ」

「部活に入ったくらいで内申なんて影響しない。……別にいいだろ、理由なんて。そもそも部活は入部届けを出したら入れるんだから、長屋を納得させる必要なんてない。参加する気がないからなおさらだ」


 なんでちょっとキレられてんのオレ。


「先生にさっきの件を話せば、さすがに入部はできないぞ。それとも、参加しないから大丈夫って先生にも言うか?」

「それは……」

「ゆるい部活がいいんなら、他にもそういうのあるだろ」

「できれば郷土史研究会がいいんだ」

「なん──」


 危ない。理由を尋ねるところだった。そんなことしてもコイツに粘るきっかけを与えるだけで、オレにとっては何の得もない。

 そしてオレのことだから、話を聞けばなんとなく流されて協力する気になりかねない。しかし流されやすいといっても、流れに近づかなければどうということはないのだ。


「期待に応えられなくて悪いな。じゃ」


 オレはスッと手をあげると別れを告げ、帰ろうとした。またしてもその手首を圭人が掴む。

 こいつ、ボディタッチ多いな。心理学を応用してオレとの距離を縮めようとしてんのか? それとも、ホモ営業で女子にもてはやされようとでもしてんのか?


「理由を話すから、聞いてくれないか?」

「断る」

「いいじゃないか。だいたい、なんでそんなに嫌がるんだ? 実質無害じゃないか。理由だって不審じゃなければ、入部を拒む他の事情があるとしか思えない。例えば……そう。彼女との擬似恋愛めいた関係に他の男を加えたくない、とか」

「バッ、馬鹿なこと言うなよ。扱いにくさで世界を狙えそうなヤツなんだぞ。さっきだってむしろ、オレ以外にもう一人くらい世話する奴がいればって思ったくらいだ」

「じゃあ、いいじゃないか。何をそんなに渋ってるんだ? やっぱりあれこれ言っても、男は自分一人な現状をキープしたいんだろ。うつむかれてたからよく見えなかったけど、彼女けっこう可愛いようだったしな。どうせ僕が女子だったら、今ごろもう入部届を受け取ってるんだろ」


 圭人はオレに冷ややかな視線をぶつけてくる。まだオレの手首を握ったままなので、なんだかBLのワンシーンのようだ……。まあ待て。落ち着け。さっきの件といい、オレの心には軽い腐女子でも潜んでるのか?


 それにしても、これは返答が難しい。圭人に入部されて困る本当の理由は話せない。かといって、急に説得力のある理由をでっちあげられるとも思えない。しかし、返答できなければオレは擬似恋愛固執野郎ってことになってしまう。にしても、擬似恋愛ってなんだろうか。

 とにかく圭人からそう思われるだけならまだしも、周りに広められたりでもしたら最悪だ。コイツ生徒会長ってことは割と影響力ある方の生徒なんだろうし、リアルで炎上させられたら大変なことになる。


 いったいどうすればいいのか。答えはすぐに見つかった。


「よし解った。そんなに言うなら話を聞こう……宮華と一緒に」


 オレは宮華に解決してもらうことにしたのだ。


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