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病的に人見知りな幼なじみと七不思議を創ります。  作者: ナカネグロ
第6の不思議︰呪われネットワーク
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第7の不思議︰サメジマ先輩-02

 放課後、みんなが帰ったあとでオレと日下さんは宮華からの説明を受ける。


「いよいよ七つ目の不思議に取り掛かるわけだけど──」


 そして宮華はこれまでを振り返りながら、オレたちの協力がなければ不可能だったこと、そしてそれにどれだけ感謝してるかを語った……りはせず、あっさり本題に入った。


「今回は最後にふさわしく、参加型にしようと思ってる」


 逆ラブ地蔵のときの失敗を思い出す。それが顔に出てたのか、宮華が付け加える。


「といっても逆ラブ地蔵のときとは違って、話を考えてもらう形。私たちはそのための素材を仕込む」


 続けられた宮華の説明によると、これまでも最終的に七不思議がどんな内容になるかは生徒たちしだいだったけれど、あらかじめこちらで考えておいた話があって、おおむねそれに近い形になるよう誘導していた。

 ところが今回こちらはそういうものを用意せず、ただ七不思議の種になるような素材を提供するのだという。


「つまり私たちは生徒という共同体が不可思議に直面したとき、説明装置として怪談を適用するようにさせられているかが問われるわけ」


 宮華がガラにもなく小難しいことを言いだした。たぶん最後だからってそれらしいことを言おうと、あらかじめ考えておいたんだろう。

 日下さんはふんふんと相づちを打っていたけど、たぶん絶対わかってない。オレも普通の感覚で聴いていたので、いきなり口頭で言われてもいまいち理解できなかった。


「つまり、どういうことだ?」


 宮華はオレに冷たい視線を向け、小さく舌打ちした。え? そんなに?


「あのね。何か不思議なことを体験したり見たりしたとき、いたずらや錯覚じゃなくそこから怪談を思い浮かべるようにさせられてるかどうか、試されるってこと。私たちが」

「なるほど。最後っぽいな」


 これまでの話もけっこうオレたちが用意してたのと違う形になってたような気がするんだが、そこは言わないことにした。


「要はオレたちがお題を出して、他のみんなが怪談を創るって企画だろ」

「ちょっと違う気もするけど、まあ、そういうこと」

「じゃあ、どんなお題にするか考えないとな。やっぱ三つくらいか」

「ああ、えっと、考えてくれてもいいんだけど、私の方でもう用意はしてある。どんなのを出すか考えるために、いちおう私の中では基準になる話が一つあって、それを参考にしてる」


 それってますます今までと変わらないのでは?


「それって……ああ、うん」


 オレと同じことを考えたのか、何かを途中まで言いかけてやめる日下さん。けれとまそれだけでも宮華には伝わったらしい。


「元々はそれぞれの素材をバラバラに考えてたんだけど、それだと素材ごとに別の怪談ができちゃうかもしれないでしょ。七不思議的にそれはダメだと思って、ある程度結びつけられるようなものを考えることにしたの。そうなると、一応なにかベースになる話がないと用意しづらくて……」


 結果、いつもとあんまり変わらないものになった、と。


「で、何をするんだ?」

「まずはこれ」


 宮華は制服のポケットからニ枚の折り畳まれた紙切れを取り出すと、オレたちに差し出した。受け取って開いてみると、そこには読みにくい字でこう書かれている。


“昨日から見てる”


 そして裏にはサメジマと書いてあった。


「そういうのをたくさん用意して、あちこちに撒く。これはイチロと日下さんも手伝ってちょうだい」

「こういうって?」


 オレは手にした紙を振ってみせる。


「片方に思わせぶりな文章、反対側にサメジマ」

「サメジマってのは──」

「人名かもしれないし、地名かもしれない。特にこちらで決めたりはしない」


 続けて宮華は、紙のサイズや種類、文章量は統一しない。字は利き手と反対で書く。撒く場所は人目に触れやすい所から滅多に誰も見ない所まで。一度に全部というよりは、何日もかけて少しずつやる、などなど細かい方針を説明した。


「もう一つが、これ」


 宮華は傍らのバッグから金属の箱を取り出した。蓋のシールから、おかきの箱だと判る。中には口にチャックのついたポリ袋がいくつも入っていた。その中にあるのは……灰、か?


「袋ごとに1枚の紙を燃やした灰や燃えガラ、それに燃え尽きたマッチが1本。これもさっきと同じ感じで仕掛ける。あ、1ヶ所につき1袋ね」


 こちらもどういう場所に置くか、など細かい指定が入る。


「ちなみに、さっきのメモにはこれの置き場所を暗示するようなものも混ぜる。後から追加で書けばいいから」


 宮華は蓋を閉じると、箱をバッグに戻した。


「メモと灰。他には?」

「これで全部。あんまりあれこれ増やすとこっちも運用しきれないし、創られる話も散漫になりそうでしょ?」

「そうか……」


 オレはいま見たもの、そして宮華の話したことに考えを巡らせる。


「日下さんはどう?」


 さっきから無言の日下さんに宮華が意見を求める。日下さんは積極的に発言するほうじゃないから、無言だからって否定的だとか無関心とは限らない。


「面白いんじゃない? でも、上手く怪談になる? 誰かのイタズラとかで済まされない? さっき説明してくれてたけど、私はやっぱりこれだけじゃ心配」

「たとえば、どんなことがあれば安心?」


 ちょっと考えて、答える日下さん。


「どう実現するかはともかく、うーん。イメージとしては例えば妙な雰囲気の人が教室に入ってくの見て、自分も入ったら誰もいなくて燃えカスが落ちてる、とか?」


 まあ、それなら確実に怪談ぽくなるだろう。ただ、日下さんも言ってるように実現可能かというと難しそうだ。


「宮華の考えは解るけど、ダメだった場合にどうするかは要るんじゃないか? それか、今の話はともかく、もっと怪談になりそうなネタを仕込むか」


 たとえ紙切れや灰から怪談派がそれなり出てくるにしても、今のままだとイタズラ派が勝ちそうな気はする。


 オレたちの指摘に、宮華は真剣な顔で考え込む。そうしていると、やっぱり人目を引くくらいには知的な美人に見える。普段話してるときは不思議とそんなこと思わないんだけど。慣れ、なんだろうか。


「いや、あのね。これまでも誰かのイタズラで済まされそうなことって、あったでしょ? ひきこさんとか、開かずの首、スニークさん、呪われネットワークも。けど、そうはならなかった。だから今回も大丈夫だと思ったんだけど……」

「こないだのは原口さんが大きいだろ。他も……“誰か”や“何か”を見た、聞いた、それがポイントなのかもな。今回のは物だけだろ」

「うーん」


 宮華は悩ましげに額へ手をやる。


「メモや灰はいいアイデアだし、それはやりながら、プラスの案を考えたら? 残り時間少ないし、もしかしたら今のだけで上手く行くかもしれない。長屋くんは?」

「そうだな。それでいいと思うぞ」


 日下さんの言葉に同意する。残り時間は少ないし、実際、メモと灰はいいアイデアじゃないだろうか。

 ひきこさんやあかずの首みたいに、リアルタイムで何かを目撃させる場合こちらが見付かるリスクは高い。そのぶんインパクトがあるけれど、動画や写真を撮られない限り、それは言葉でしか拡がらない。

 物を見つけさせる場合、見つけた人間がその現物を他人に見せられる。体験ほどのインパクトはなくても、他人に伝えるときの説得力はある。つまり、拡がりやすい。


 ああ、でも……。


「他に、もっと気持ち悪いものを見つけさせるのはどうだ? 今の二つだけだとインパクト弱いっていうか……」

「髪の毛で編んだわけの解らないものとか、動物の歯や毛、羽やなんかを血で固めたようなものとか、そういうこと?」


 さすがに宮華。すぐに例が出てくる。


「そう。そういうやつ」

「もし本物の素材で作ったとしても、わざとらし過ぎて逆に冷めない? 作ってる感がありすぎるっていうか……」

「でも、本当に怪奇現象? みたいなの信じさせたいわけじゃないなら、インパクトある方がいいかも。話題にしたり見せたくなって、怪談にしかできないようなの」


 今日は珍しく日下さんがオレを支持してくれてる。なんだろうか。新手の死亡フラグ? これからオレは今日という日を何度も繰り返して、死すべき運命を変えようとすることになるんだろうか。


「二人が言うなら……。じゃあ、一つか一種類か、何か考えてみる」

「そうだな。まあ、これもいい案があれば」

「他の二つから独立しても困るし」


 オレたちの言葉に宮華はうなずく。


「それで、誰が配るの?」

「え? オレだろ」「え?私でしょ」


 オレと宮華が同時に言う。


「だって、見付かるリスクあるんだから言いだした私がやらないと」


 少し前までならこういうときナチュラルにオレを犠牲にしてたのに。宮華も人並みの思いやりが身についたのか……。なんて感慨にふけってる場合じゃない。


「いやいや。宮華や日下さんじゃ目立ちすぎて、それこそ見付かるリスクが高くなるだけだ。特に日下さんはともかく宮華。おまえは自分で思ってる以上に顔と名前が知られてるんだぞ」

「イチロだって──」


 反論しかける宮華を遮る。


「オレの場合、顔と名前はそこまで一致してない。それに歩いてるとこを見られても、二人ほどは意識されない」


 自分で言うのも何だが、なかなかモブ向きだと思う。


「そもそも宮華や日下さんに任せたら、見つかってバレるんじゃないか不安になりながら過ごすことになる。オレとしてはそっちのほうが辛い」


 これは本当だ。どのみち誰であれ、バレたら他のメンバーも無事かどうかはかなり怪しい。となると、他人に任せるより自分でやった方がいい。


 反対意見は出ない。ただ、宮華の顔は不服そうだ。


「そもそも、オレは校内のことなら隅々までよく知ってる。どこが目立つか、目立たないか。一見人目を引かなそうで、そうでもない場所はどこか。なんせスニークさんのときに何度もそういうの見てるからな。細かいバランス調整まで完璧にやれる自信がある。自分はそれ以上の適任だと思うか?」

「それは……」


 もうひと押し。


「さっきの兎和さんの話もあるしな。もし巡回中の生徒委員に見つかって職質されたら、宮華キョドらずに上手くかわせるか?」


 その場面を想像したのか、宮華は額に汗をにじませる。やがて、ふうっと大きく息を吐いた。


「解った。最後くらいは自分で危ない橋を渡らないとと思ってたけど、今回もイチロにやってもらう」


 隣で日下さんもうなずいている。というか、あれだな。痛みを伴う決断したみたいな雰囲気出してサラッと告白してたけど、宮華、オレにリスキーな役割押し付けてる自覚あったのか。これまであまりにもスルーしてるから、てっきり無自覚なのかと思ってた……。やっぱこいつヤバイな。前言撤回。コイツに人間的な思いやりなんてない。


 ちなみに、兎和の話ってのは1時間くらい前のことだ。

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