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病的に人見知りな幼なじみと七不思議を創ります。  作者: ナカネグロ
第6の不思議︰呪われネットワーク
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第6の不思議︰呪われネットワーク-22

 翌日の放課後、他のみんなが帰るとオレは宮華に言った。


「なあ、もう2学期終わるぞ。どうするんだ、それ?」

「それ?」

「だから、それだよ」


 オレは宮華の開いたノートを指した。見開きのページは真っ白で、もう何日もその状態だ。


「そろそろ諦めて新しい話を考えないと、それでも3学期に二つ収まるかどうか」

「でも……」

「なんでその話にそんなこだわるんだ? そりゃ見たことない話だけど、世紀の傑作ってほどじゃないし、これまでだって実践して失敗したり、検討段階でボツにした話なんてあっただろ。何か思い入れでもあるのか?」

「そうじゃない、けど」


 珍しく弱気な表情を見せる宮華。


「この話には一応、短期間で成功できるシナリオが見えてるから。運任せな部分もあるけど」


 そういや前にもそんなこと言ってなかったっけ。いや、気のせいか? ともあれ。


「じゃ、それやればいいだろ」

「それには色々と私の覚悟が必要で……」

「そもそも七不思議創りするって決めたときにどんな覚悟もできてる、そんなこと言ってなかったか?」

「そう、だよね。うん。でも、あのときはまだ……」


 煮えきらない態度だ。けど、ここで無理強いすることもできない。


「ごめん。明日まで待って。明日までにはどうするか、決めるから」


 重く、沈んだ声。宮華にとってはそれだけ苦く、難しい決断らしい。もしかしたら宮華は何日も真っ白いページを見つめながら、その成功するシナリオとやらをやるかどうかで悩んでたのかもしれない。そんなことしても、煮詰まって視野が狭くなるだけだろう。


「そういえば、宮華はイブはどうするんだ?」

「えっ?」

「宮璃はウチに来るみたいなんだけど」


 神野家も長屋家とおなじく、基本は直前の週末にクリスマスケーキ食べたりとかする。毎年宮璃からクリスマスの話を聞かされているおかげでそれは把握済みだ。


「私は……まあ、別に。家で普通に過ごすけど」


 なんか間があったな。気のせいか?


「せっかくだし、女子で集まったりすればいいのに。まあ、そういうの言い出すやついないんだろうけど」


 宮華の眉がピクリと跳ねる。


「私たちが集まって騒いだりしたがるとでも?」


 なんだ? 怒ってんのか?


「いや、まったり過ごすでもいいし」

「そんなの、部活でやってるじゃない」

「まあな。イブだからってなにかしなきゃいけないワケじゃないしな」


 何かこっちを怪しむような目で見てくる宮華。なんなんだ。


 そのとき、スマホの通知が鳴った。何気なく見ると、日下さんからだ。


“24日なんだけど”


 …………え?


 顔を上げると宮華が慌てふためいた様子でスマホいじってた。オレはとっさにスクショしてから再読込する。日下さんからのメッセージは消えていた。


「なるほど!」

「え? なに」


  驚いてスマホから顔を上げる宮華。


「いや。最初はどうしようもないコミュ障陰キャの集まりだったのが、いつの間にかオレをハブってイブの予定立てるまでになったのかと思ってな。カラオケにでも行くんか? こりゃもう、オレの役目も終わったな」

「は? いや、なにが──」

「スクショ残してある」

「いや、それ違うんだって」


 宮華は開きっぱなしだったノートを閉じると、ため息を一つ。


「イブに女子で集まる。兎和さんの家に。どこでどう知ったのか知らないけど、兎和さんのお母さんが兎和さんに同性の友達ができたって知って、ぜひイブは家に、って」


 なるほど。兎和に同性の友達なんて初めてだろう。異性含めても初かもしれない。それは確かにオレとか声掛からないよな。にしても。


「楽しみ……って感じでもなさそうだな」

「あっ。嫌とかそういうわけじゃないんだけど……。みんなほら、集まって騒ぐのとか好きじゃないし、まったり過ごすんだといつもどおりだし」

「あんまりテンション上がらない?」

「まあ、そう。ケーキとかすごいご馳走用意してくれるらしいんだけど……。それに、ずっと一緒にいるわけじゃないだろうけど、ご家族に挨拶くらいはするだろうから」


 それは宮華からしたら気が重い話だろう。


「一応、せめてプレゼント交換くらいはしようってなったんだけど、私もみんなもプレゼント選ぶの苦手で」

「じゃあ、なんでやろうってことに」

「何かクリスマスらしいことして見せた方が兎和さんのお母さんも喜ぶだろうから」


 接待プレゼント交換。しかも交換しない人のために。そんなの初めて聞いた。


「なんか兎和さんのお母さんて、ほんわかした感じの優しい人らしくて、やるって決まってからものすごく楽しみにしてるみたいで。あ、私たちも楽しみじゃないわけじゃないんだけど」


 言いながら、どんどん気まずそうな感じになる宮華。心の底から楽しみにしたり、はしゃいだりできないことを申し訳なく思ってるんだろう。


「まあ、ある意味気の合うメンバーなんだから、集まればそれなりに楽しくはなるだろ」

「ああ、うん。そう、だよね」


 宮華の表情が一瞬明るくなりかけ、すぐまた陰る。


「ああ、でも、そっか……」

「ん? どうした?」

「いや、なんでもない」


 なんだその思わせぶりな態度は? けど、宮華は性格的に無理に聞き出そうとしても上手くは行かないだろう。気になるけど、今はどうにもならない。


「じゃあ、明日な」

「うん。明日」


 そう答える宮華は何かに気を取られてるようだった。

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