第6の不思議︰呪われネットワーク-17
オレの問いかけに、みんな戸惑いながら了解してくれる。おかげでますますやるしかなくなったことを我ながら少し残念に思いつつ、オレはスマホで相手に通話をする。
「あ、もしもし。オレ。一路。あのさ。この前オレを探してるっていう──」
その相手とは峰山さん。そう。オレは峰山さん経由で泰成くんの中学時代のツレを呼び出し、その二人に泰成くんの居場所探しを手伝ってもらうつもりなのだ。いやまあ、“なのだ”とか軽く言うようなものじゃないけど……。
話が終わるとオレは自分の写真を撮って峰山さんに送る。これも回してもらえば無関係な生徒が“道を歩いていたら突然絡んできた見知らぬヤンキーはなんとクール系イケメン! 衝撃の展開に!?”とかいうスマホコミックでありがちな事故は防げるだろう。
峰山さんにもろもろ送り終えると、当然のようにみんなは説明を求めてオレのことを待っていた。そこでオレはそもそも泰成くんの中学時代の友達がオレを探してることから始めて、ひととおりの説明をした。話が進むうち、みんなの顔がみるみる渋くなる。
「てわけで、泰成くん探すの手伝ってもらうか、少なくともよく行く場所くらい教えてもらえたらどうにかなるかと思って」
他人に喋ることで考えが整理されるって本当なんだな。オレも整理された結果、途中から“あ、これダメだ”って思ったもん。
「じゃイチロが話を聞いて私たちに連絡する。それで私たちがその場所に行ってみる。まあ、手分けすればどれか当たりかもしれない」
額を揉みながら宮華が言う。
「ああ、そう……あぁ?」
同意しようとして、なんか思ってたのと違うことに気づく。
「それだと二人組に会うのはオレだけってことにならないか?」
「なるけど? そりゃ、私たちが会っていいことなんてないじゃない。顔も憶えられたくないし」
峰山さんに送った写真、全員の集合にしておくんだった。
「いやでも、もし向こうがオレに何かする気でいるにしても、一人じゃなきゃ諦めるかもしれないだろ」
「そんな敵対的ならそもそも泰成くん探すの手伝ってくれたりしないでしょ」
「数が多けりゃ話を聞く気になるかもしれない。で、話ができれば説得の余地もある。話できずにボコられるよりは成功率上がるだろ」
宮華は不信に満ちた目でオレを見る。
「なんでそんな出たとこ勝負なアイデア実行しようと思えるの?」
「成功すれば一番うまく行きそうだからだよ。宮華だって明日以降に持ち越すとマズそうな気がするだろ? 泰成くんからしたら、時間が経てば経つだけオレたちと会いづらくなる」
宮華は諦め顔で頭を掻いた。
「それで、みんなはどう?」
顔を見合わせる一同。
「私はみんなが行っても、イチロ一人でも、すぐに暴力沙汰みたいなことにはならないと思うわ」
兎和が言った。メガネの縁が沈みゆく夕陽にキラリと輝いた気がした。さすが兎和。異様に頼もしい。兎和が言うとそれだけで本当なんじゃないかって思えてくる。
「そもそもその二人が、泰成くんの入った部の部長を絞め上げる動機がない。だから、いきなり暴力を振るわれることはない。たぶん泰成くんには知られずに何かしたいことがあるんでしょうね。それが何であれ、泰成くんが部活に来ないとできないことなら、協力してもらえるはず。そうじゃないなら……まあ、そのときも交渉次第でとりあえずその場は穏便に済ませることができるはず。しくじらなければ」
そのとき、スマホが震えた。見ると峰山さんからだ。連絡が取れたらしく、18時半に駅前で待ってるとのこと。あと30分くらいだ。
オレがそれをみんなに伝えると、兎和が話を再開する。
「急ぎましょう。とにかく長屋くん一人でもそんなに危なくはないと思う。ただね? 長屋くん一人に任せて結果を待ってるのは不安でしょう? だから私としては最低限、自分と圭人あと長屋くんの三人がいればいいと思ってるんだけど、みんなは──」
急に言葉を切った兎和は、そこで珍しいことをした。忌々しそうに大きく舌打ちをしたのだ。そして苛ついたように目を閉じ、溜息をひとつ。どうしたんだ?
するとすかさず、圭人が喋りはじめた。
「じゃあ、これでどうだろう。僕とイチロでその二人と会う。兎和と、あと他に来たい人は離れたところで待機。大丈夫そうなら僕がこんなふうに首の後ろを掻くから、5分くらいしたら合流する。遠くから見ててダメそうなら……確かあそこ、少し離れたところに交番あったよね」
圭人は軽く腕を広げると、意見を求めるように女子たちを見回した。
「まあ……うん。さっき日下さんに最後までやり遂げるって約束したし」
宮華が言う。
「じゃあ僕らは出るから、来られる人はあとから兎和と駅前に」
というわけで、オレは圭人と連れ立って駅前に向かうことになった。




