第7話:音楽発表会
今治小学校の五年生は、ゴールデンウィークの少し後に音楽発表会をすることになっている。
合奏や合唱などを、保護者に披露するのだ。
本番は、一回きりだが、練習は、とても辛いものだった。
四月二十四日。今日の時間割は、一時間目から四時間目まで音楽だった。
「四時間も音楽かよ。なんのために学校にきてるのやら。」
「保護者のにはいい発表をみせたいけれど、四時間も練習したら、喉がカラカラになっちゃうなあ。」
「うーん、ぼく、音痴だから嫌だな。」
六年生の誰もが、こうして愚痴をもらしていた。
読書タイムが終わったあと、五年生は体育館へとつれていかれた。
そして、あらかじめ用意されていたたくさんの台にのって、合唱をしたり、合奏をしたりするのだ。
背の順とにたような並び方で、みんなが台にのっていく。
身長の高いぶーちゃんは、とんでもなく高い台にのせられた。
「ぼく、怖いよ。高所恐怖症なのに、どうして高いところなの。合唱や、合奏なんて、できるわけないよ。」
「仕方ないよ。ぼくだって、怖いさ。」
となりに居た、鈴木章が言う。
「まず、合唱をするわよー。みんな、用意して。」
音楽の先生がどなった。
みんなが用意をしおわったあと、音楽の先生は指揮を始めた。
みんなが歌うより一足先に、伴奏のピアノがはじまる。
ピアノのメロディーがしばらく続いたあと、歌のゾーンがやってきた。
五年生の全児童は、力強く歌う。
みんなが一生懸命歌っているにもかかわらず、音楽の先生はヤジをとばす。
「もっとしっかり!お腹に力を入れて!」
「そこ!ふざけて歌うんじゃない!」
「もっと声を大きく!」
合唱が終わったら、合奏が始まる。
五年生の全児童は、それぞれの位置につく。
ピロリロリ〜というリコーダーのメロディーにあわせて、大太鼓や小太鼓、木琴、鉄琴、ピアノが伴奏をする。
合奏については、先生は何も言わなかった。
このような練習が、ゴールデンウィークまで、毎日くりかえされた。
三日もすると、生徒たちの声はガラガラになった。
「こらー!声をちゃんとしろ!」と音楽の先生は言うが、毎日四時間歌わされている生徒は、なおしようがなかった。
そして、音楽発表会当日。合唱をするとき、ゴールデンウィークまでは生徒の声がガラガラだったのだが、三日ほど休んだからなのか、生徒たちの声は回復していた。
合奏と合唱が終わったとき、保護者たちは盛大な拍手をしていた。
音楽発表会が終わると、生徒たちはそれぞれの感想をのべていた。
「辛かったけど、よかったね。」
「喉痛いよー。」
「拍手されたから、最後はうれしかった。」
そういったぶーちゃんに、シンベエがつっこみを入れる。
「へっ。拍手がなんだってえんだ。こんなに歌わされたら、歌嫌いがふえるだろうな。」
今の学校の音楽の授業では、生徒たちは音楽に親しみにくいかもしれない。