第15話:謎の隕石
八王山市のひとたちがもう寝静まっているころ、ものすごい音とともに地面が揺れた。
これで、ほとんどのひとが起きた。
「地震か?」
「地震にしてはえらく短くないか?」
「なにやらすごい音がしたぞ。」
次の日、今治小学校に一番のりしたシンベエが、ものすごい声を出した。
「なんじゃこりゃー!」
この声を聞いた他の生徒たちが、よってくる。
「うわ。すげえ穴あいてんじゃん。」
「誰かが作った落とし穴かな。」
「学校がぼろいから、昨日の地震でこわれたんじゃないの。」
「地震なんておきたっけ?」
「おきたじゃん。昨日の夜。」
「あれは、地震じゃないと思うよ。一瞬だけしか揺れなかったし。」
「こらこら。何をしておるのかね。」
校長先生が、生徒たちをよけた。
「ん?なんだこの穴は!誰がやったんだ!」
校長先生がものすごい形相で、まわりの生徒たちを睨みつける。
「あ、校長先生。ちがいます、ぼくたちがやったんじゃないです。」
「嘘をつくんじゃない!誰がやったんだ!」
「いや、本当です。朝、学校に来てみると、穴があいていたんです。」
「そんなこと、あるわけないだろう!」
「いや、だからぼくたちもふしぎだなあと思っているんです。」
「とにかく、管理職員さんにみてもらうから。どきなさい!」
校長先生は、かなり不機嫌なようだ。
シンベエは、穴の下をのぞいてみた。
のぞいた瞬間、目を光が貫く。
「まぶしいー!なんだこれー?!」
シンベエは、もう一度のぞいてみるが、まぶしくて、やはり見れない。
ここで、管理職員さんがやってきた。管理職員さんは、穴をのぞこうとする。
「いたっ。なんだこれは?」
管理職員さんも、やはり中が見えないようだ。管理職員さんは、穴から床をひっぺがした。
「うわー。」
「何だこれ?」
床がひっぺがえされると、まわりにいる生徒たちの歓声があがる。
中には、金色の石のようなものが入っていた。
石は、キラキラとかがやいている。
管理職員さんは、石をとろうとした。だが、持った瞬間に落としてしまった。
落ちた石は、粉々にくだけた。
「あっ、穴があいてる。」
「うん、さっきからあいてるよ。」
「違う違う、天井にだよ。」
管理職員さんと生徒たちは、ほぼ同時に天井を見上げた。
「空が見えるよ。」
「じゃあ、この石が上からふってきたってこと?」
「隕石?」
生徒たちの歓声があがった。
管理職員さんは、だまって隕石のかけらをちりとりにのせると、その辺にあったゴミ箱に捨ててしまった。そして、ひっぺがした床を修理した。
そのあとから、隕石を見たひとたちがおかしくなっていた。
「ねえ、昨日隕石みたんでしょ?」
「わたしはねこだよ。」
「何いってるの?それより、どんな隕石か教えてよ。」
「あなたはガムテープ!」
どちらが隕石を見たひとなのかは言わずしともわかっていると思うが、このように隕石を見たひとは、言っていることがとんちんかんなのだ。
「シンベエちゃん、隕石、見たんでしょ。そのあと、どうなったの。」
「だってぼくは八百屋だよ。」
シンベエのくせに、「ぼく」などという一人称を使っているところから、ただごとじゃないとわかる。
「もう、何を言ってるんだよ、シンベエちゃん。」
「本。本本本。」
隕石には、見た者をおかしくする力があったのだろうか。
三人が休み時間に廊下に出ると、シンベエがゴミ箱にひきつけられるかのようにゴミ箱を見た。
その瞬間、シンベエが言った。
「あれ?おれ何してたんだっけ?」
「何いってるんだよ、シンベエちゃん。今日の朝から、なんかおかしいよ。遊びにいこうよ。」
「お、おう・・・。」
シンベエとそのほかの生徒たちは、こうしておかしな言動をしなくなったが、一部の生徒はずっとおかしいままであった。おかしいままの生徒は、ゴミ箱にひきよせられもしなかったのだ。
あの隕石は、何だったのだろうか。そして、ゴミ箱にひきつけられたひととそうでないひとがいたのは、なぜなのだろうか。
おかしなままの生徒は、念のため精神病院へ行かされた。精神科医に診せると、精神病と同じような状態になっていたというのだ。
おかしいひとたちは、精神科医にもらった薬をのんだおかげで、おかしくなくなった。だが、あの隕石に関しては、いつまでたっても謎のままであった。