第10話:創作料理選手権?!
六月十三日、家庭科の時間に、家庭科の先生からとんでもないことを知らされた。
「これから六月二十日までに、好きな人どうしで集まって創作料理を作ってもらいます。ただし、一つのグループは三人までです。みんなが、それぞれの創作料理を食べ終えたら、どの料理が一番おいしかったか、投票します。」
「創作料理だって?」
「なんか、おもしろそうだねえ。ぼく、料理大好き。」
「お前は、作るのじゃなくて食べるのだろ。グループは、おれたち三人で決まりだな。」
「ぼくはそれでいいけど、料理は誰が考えるんだい?」
「うーん、それはあとでおいといて・・・」
六月十四日、さっそく創作料理を考える時間があたえられた。
材料は、家から持ってこなければいけないらしいが、今もってきても仕方がないので、考えたグループから材料をもってくることになっていた。
「どんな料理にする?」
「バナナにケチャップをかけて、クレープにしてみようぜ。」
「えー、そんなのまずそうだよ。」
「スパゲッティに、ステーキをのせたら、うまいかもしれないぜ。」
「うーん、単純すぎるなあ、それは。」
「あ、そうだ、クレープって、何入れてもあうよね。クレープに、いろいろいれてみると、面白いかもね。」
「飴玉とか、モチとか入れてみてえなあ。」
「モチはいいかもしれないけれど、飴玉は駄目だと思うよ。歯が欠けちゃうかもしれない。」
「力うどんって、あるよね。力そばや、力ラーメンってのはどう?」
三人から、次々とアイデアが飛び出す。
「ハンバーガーの中に、カレーライス入れてみるってのは、どうだ?」
「ハンバーグのかわりに、ステーキをはさんだハンバーガーは?」
他のグループからも、アイデアがとびでている。
ホーリーが言った。
「うん、ぼくたちのグループは、『モチクレープ』を作ろう!」
六月十八日、家庭科の時間。五年一組のクラスメイトは、一部のグループをのぞいて、考えた創作料理の材料を持ってきていた。
ホーリーはモチ、シンベエは小麦粉と卵、ぶーちゃんはチョコソースやイチゴ、アイスクリームなどを持ってきた。
「ではみなさん、思い思いの料理を作っていきましょう!」
シンベエは、持ってきた小麦粉と卵をボウルに入れかきまぜる。
かきまぜたものを、ぶーちゃんがホットプレートに、うすく広げる。
そして、できた生地にホーリーが色々なものを入れていく。
こうして、モチアイスクリームクレープ、モチイチゴクレープ、モチチョコソースクレープ、モチクリームチョコソースクレープ、モチクリームイチゴクレープが一つずつできあがった。
三人は、それぞれ好みの味のクレープを食べた。
「うん、おいしい。」
「意外とうまいな。」
「これなら、投票で一位をとれるかもねえ。」
三人が創作料理を作り終えたのに気づいたクラスメイトたちが、三人のテーブルへと近づいてきた。
「おお、うまそうじゃん。クレープか。」
「キャーッ、あたし、クレープ大好きー!」
「でも、これただのクレープじゃないの。創作料理じゃないじゃないか。」
この発言に、シンベエがつっこみを入れる。
「ふふっ、中身が違うのさ、中身が。」
六月二十日、本番がやってきた。この日の家庭科は、なんと四時間。
「みなさん、頑張ってつくってくださいねー。それでは、スタート。」
三人は、おととい作ったのと同じように、クレープをつくる。
だが、今回はたくさんの人数が食べるので、これまたクレープもたくさん作らねばならない。
二時間ほどして、ようやくクレープを作り終えた。
「うん、うまくできたね。」
「へへっ、うまそうだぜ。」
シンベエが、クレープに手をのばす。
「ああ、駄目だよシンベエちゃん。これはみんなが食べるんだから。」
「あ、そうだ。おれな、こっそり一つだけハズレのクレープを入れておいたぜ。」
「ハズレ・・・?」
「誰が当たるか、楽しみだな。」
それから一時間ほどして、全員分の料理ができあがったようだ。
ここで、審査員である生徒たちが、他のテーブルへと食べてまわる。
「ううん、このキャベツでハンバーグをつつんだハンバーガー、おいしいねえ。」
「手羽先ラーメンって、おいしいけれどあまり創作料理って感じがしないな。」
「うおー!このグループ、やりすぎだろー!いくらなんでも、とんかつにチョコソースはないぜ。」
みんなが料理を食べ終わり、投票が開始された。
(一位になりますように、一位になりますように・・・)
(どれが一番人気があったのか、見ものだな。)
(うーん、どれもこれもおいしかった。)
投票が終わり、結果を家庭科の先生が開示した。
「一位、四班のキャベツハンバーガー、二位、五班のモチクレープ、三位、九班のとんかつのカレーソースがけです。これ以下の順位のものは、この表を見てね。」
先生が、表をビラビラとみんなに見せる。
「やったー!二位だぜー!」
「ああ、惜しかったなあ。でも、二位でもいいや。」
「キャベツハンバーガーは、人気があったね。」
とここで、後ろから声がした。
「おい、シンベエの班。お前んとこのクレープ、変なもの入れてただろ。他のはうまかったけど、変なやつだけものすげーまずかったぞ。」
「ああ、納豆コーヒークリームクレープか。サンドなら、おいしいはずなんだけな・・・。」
シンベエが、照れた表情で言う。
「納豆・・・もしかして、それが原因で一位になれなかったんじゃないの?」
「でへへ・・・。」
「ううん、納豆コーヒークリームクレープ、なんかおいしそうだなあ。ぼく、食べてみたいや。」
ぶーちゃんが、笑顔で言った。