不可解な噂
短め。
「自分で言いますか、ソレ。…それで話って?」
レリックさんの話を聞き逃すのはデメリットが多すぎるのでとりあえず聞いてみる。
「えー。ケインってば酷いな?ま、いいけどー。」
「って、いいんですか…。」
「だって普段の態度が態度だし?ケインの対応がふつー、ふつー。あ、でな。最近聞いた噂で、面白そうだから俺個人が調べだのがあるんだよ。」
「自覚はあるんですね。…へー。噂ですか。」
「そ、噂。その内容が不可解なんだよ。聞いただけだと嘘みたいだけど、言ってるやつが嘘ついてる様子でもないしさ。…ここまで聞いたら続きが聞きたいよなー?どーしても聞きたいなら教えてあげようじゃないか。」
「そっちが言い出したんでしょう…。そもそも噂とか僕はどうでもいいので」
「まーまてまて。悪かったって。そんで、こっからが面白いんだけどな?」
「……。結局続けるんですか。ハイハイ。それで?」
「うん、それで、この国の東方面の村から不気味な黒い影がどんどん王都方面に向かってるらしい。その影を見たやつは皆口を揃えて『飲み込まれる』とか『むこうから呼ばれた』とかって言ってるらしい。」
…は?いやいや。まさかそれって『時空の歪み』!?
しかも東って竜人国のある方面…。
団長が確認してないだけでこの国にも出てたんだ…!
「黒い影に、『飲み込まれる』…?その話、詳しくお願いします!!」
「え…?あ、あぁ。いいけど…。ケインってば、どした?」
「ちょっと最近気になる事がありまして!それで!?」
「話すから、落ち着けって。あー…それで、その影は物を飲み込んで消えるらしいんだが、最後の目撃情報が4日前にダブルの街で終わってるんだよ。もし噂が本当なら距離的にそろそろシングルの街にも来そうだから、暇な時でも探せばって言いたかったんだ。明日ケインは休みだろ?異邦人はこういう話好きだからなー。」
本当にこの人は仕事してるくせに、どこで調べてくるんだ!
それに出没を予測できるとか無駄に有能だ…。
「その話、他の人にしましたか?」
「あぁ。っていうか、元々の情報源がその影を追ってるらしいヤツでな?趣味程度だけどせっかく調べたからそいつに。」
「その人はどこに?名前は?」
「『精霊の止まり木』って宿にいるばず。名前は知らね。ただ金髪碧眼で王子様みたいな容姿だからすぐわかるな。…ちょっ!どこ行くんだよ!?」
確か精霊の止まり木って猫の安らぎ亭の近くだったはず。
それで、名前は知らない、と……。
名前ぐらいその好奇心で調べておいてぐたさいよー…!
「その人のところへ!レリックさん、この話を団長にしてください。まだいるはずです。それと僕について聞かれたら、『ケインは話を聞きに行った』と!」
「ケイン!?あ。おいってー!!」
レリックさんに言葉を浴びせて、慌てて僕は宿に向かう。
もしその人がシングルの街で既に影が出たと知ったら次の街へ向かう可能性がある。
そもそも追うにしたって、危険だってその人は分からなかったのかな…。
機密事項だって団長が言ってたし、一般人が政府に巻き込まれたら大変なこともなるし。
あと、有力な情報提供者になるかもしれないのにみすみす見逃してはおけない。
「居てくれるといいんだけど……!」
見切り発車すぎて、話のストックが既に切れているぅ(|||´Д`)