疲れた時のご褒美
「さて、やりますかー!」
団長に渡すイベントの資料作りを始めた。
まずはイベントの概要。それから対象の魔物一覧。
そのドロップ一覧。対象の魔物の生息地。
それから……
「お、終わったー…!」
粗方確認し、加筆修正してから固まった肩をほぐす。
時間は………うん。そんなに経ってない。
団長が騎士団に向かう時間までまだある。
この短時間でこの完成度はよくやった、自分!!
資料は早めに渡しておいて損は無いし、団長に渡しておこう。
__コンコンコンッ__
「団長!ケインです。」
「…入れ。」
なんか数時間前にしたなこのやり取り……?
今日はよく団長室に行く日だなぁ…。
「失礼します。イベント資料の件、出来上がりましたのでお持ちしました。」
て、おおぉぉ!!!カインさんが!カインさんが正装してる…!
やばい。語彙力なくなるぐらいやばい。
ここの自警団の正装は黒を基調とし銀の刺繍が入った襟詰の軍服だ。
因みに騎士団の正装は紺の基調で、金の刺繍、騎士団のマークが入ったジャケットである。
紺の髪と金の瞳に軍服とかイケメン過ぎ…!
疲れが吹き飛びました!ありがとうございます…!!
そういえば騎士団と会議するから正装なのか。
そんな事を考えつつなけなしのポーカーフェイスで資料を渡す。
「もうか。仕事が早いな。……。…不備もないし見やすい資料だ。流石はケインだ。」
「いえ。そんな…。」
「謙遜はしなくていい。実際、ケインの能力は上から数えた方が早い。ここは武道派ばかりだから机仕事が得意な者は少ないんだ。ケインが入団してくれてこちらも助かっている。ありがとう。」
「は、はいっ!お役に立ててるなら嬉しいです!!!」
褒められた上に頭撫でられたんですがー!?
最高。この数分で、問題山積みな最悪の日から最高の日に変わったよー…!
しといて良かった、事務の仕事!辞めたけど。
「元気があってなによりだ。この数時間で色々あったから疲れが出てないか心配したが、杞憂のようだな。だが無理はしないように。」
いえ。さっきまで疲れきってました。
カインさんがイケメン過ぎて元気になっただけです。
「そうみたいです!ご心配ありがとうございます!!…団長こそお疲れではないですか?」
「いや。この程度何の問題もない。…それと騎士団の会議が少し長くなるかもしれないが、日付は変わらないはずだ。『向こう』の用があるなら俺が会議に行ってる間に済ませておくといい。どうせお前は休めと言っても『こちら』の世界にいるのだろう?」
「はい…。あはは……。あ、でも団長は明日に響きますし、お付き合い頂かなくても…。」
「ん?言ってなかったか…?俺も明日は休みだ。元々飲むつもりだったから気にしなくていい。」
「え。そうだったんですか!?それで誘ってくれたんですね。」
「あぁ。流石に翌日仕事のやつは誘わない。」
というか、カインさんは僕の休み把握してたのか…!
団長だから知っててもおかしくないけど。
なんか嬉しい…。
「そうですよね…!とりあえず、会議が終わるまでに用事終わらせときます。」
「あぁ。そうしてくれ。」
会話が途切れ、ふと目にした時計は思ったより時間が経っていた。
「あ、長々と話してしまってすみません。そろそろ僕おいとましますね。」
「もうこんな時間か。こちらこそ話し込んでしまったな。それじゃあはまた後で。」
「はい。また後で。…それでは失礼します。」
__パタン__
「はぁぁ…。」
やっぱりカインさんはかっこいいなー。
部下への気遣いが出来るってほんと良い上司だよ…。
……ここって少ないけど女性の自警団もいるんだよね。
その人達にも頭撫でたりしてるのかと思うと、そんな権利無いけど嫉妬してしまう…。
友人の件でこの世界の住人と恋人になれることが証明された訳だけど、僕の身体は男だしな…。
何故男にした『私』っ!
まぁ、女でもカインさんレベルのイケメンには相手にされないだろうけど…。
…………何か考えてて悲しくなってきた。
ええい、やめだ。やめ。一人でいるからネガティブ思考になるんだ!!
休憩ついでにたまには談話室に行って気でも晴らそう。
「お疲れ様です。」
談話室と言っても扉がないため声をかけてから入る。
隣に給湯室があるのでコーヒーが共だ。
室内は椅子とテーブル。あと本棚やビリヤード台なんかもある。
「お、ケイーン。こっち、こっち。さっきぶりじゃんか。どうした?お前が談話室なんて珍しい。」
「レリックさん。少し休憩に寄っただけですよ?コーヒー飲んだら仕事です。」
「なる。なら情報通のレリックさんが1つ、面白い話を教えてしんぜよう。」
確かにレリックさんは自警団の諜報班に所属するだけあって情報通だ。でも…
「自分で言いますか、ソレ。…それで話って?」
そういえば時間と場所表記を面倒なので止めてますー。ただ、時間があるときに後日付け足す予定。