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あの頃から

作者: 臍田無氏男

上手く話せない日が続くと、どうにも焦って、くだらないことばかり考える。


彼はそういうと、普段着慣れないスーツの肩をせぼめて、私をコーヒーに誘った。


寒い冬の始まりは、世紀末最期のクリスマスを盛り上げるようで、私は何を飲もうかまよってるうちに、39才になっていた。


青春が終わりを告げると、列車のように、たくさんのことが起きて、たくさんの人が死んだ。

ついでにいっておくと、たくさんの子供も生まれた。


町には大きなショッピングモールがそびえ立ち商店街を威嚇しては、二度と開かないシャッターを、真冬の様に増やしてった。


私にはやりたいことがある。そう、思っていたはずだったけど。何もコップを満たすことなく、それを飲み干す快楽も知ることはなかった。ただ、リクルートスーツで武装もしたあの頃の私は、何が好きで、何をコンビニでヘビロテして買って、どんなアプリを使って、誰と話していたんだろう。


ふと、お一人様で入った純喫茶でそんな朧げな記憶の海に浸りながら、センチメンタルに酔っていた。


純喫茶の店内から装飾の綺麗な窓から外を眺めると、そこだけ切り抜いたように、私の生まれた町、私の育った町、私の友達がいた町が、コンクリートの塗料で描かれて、また、あの頃みたいに寒くなった町は寒色の色彩を帯びていて、私は少し肩をせぼめたくなった。


色んな事に疑問を持って、憤って、納得して、上手く流して、PDCA。何にもなれていないオバさんの私には、生きている理由さえも見失いそうになる。あれだけ大人はいろんなことができて当たり前だと思っていたのに、本当に純喫茶で肩をすぼめる冒険心もない、退屈な人間になった。大人なのかな?


これって、本当に大人で、オバさん、なのかな?


もしかしたら、まだ、コーヒーを選んでいる途中かも知れない。

何も、あの頃から進んでないんじゃないか。そう私は思い込む事にした。


店員さんを呼び止めると、注文のキャンセルをした。私は店員さんと言葉を交わすと、少し上手く話せた気分になれた。


真冬の町は、クリスマスへと進軍していき、あっという間の大晦日の模様替えだ。

寒色がだんだん強まっていき、くだらない色恋沙汰やくだらなくない色恋沙汰で世間は大賑わいになる。純喫茶のBGMがピアノの音色に彩られながら、私の前に店員さんが現れた。


東京タワーみたいな、自分でも、笑ってしまう程、大きなパフェを持って。




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