ポリゴンに消える経験値
書き始めて最初の場面がいきなり最終局面から始まる物語なんて今まであっただろうか。
俺は今、魔王の城の前でいよいよ最終決戦を挑もうとしている。
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この世界が平穏を失ったのははるか昔、150年前のこと。平穏に暮らしていた人々の村に突如魔物が現れたのだ。それからは争いごとになれていない人間達は魔物にやられていき、畑や家畜などの食料も激減した。
人々は対策を重ね、人間にはレベルという概念があること、今まで目に見えなかっただけでそれは戦闘を行ったり農作物を借り入れたりすることで上がっていくことを突き止めた。
研究者がこのレベルが上がることによって得られるパワーアップを解明し、そのパワーアップの数値をスキルポイントと名付け自分の能力に割り振ることができる技術を開発した。
そこで誕生したのが冒険者という職業である。勇者はスキルポイントの割り振りをを戦闘に特化することで魔物を倒し整形を立てていく職業である。冒険者は時代とともにプリーストやガンナーなど実に多彩のものとなっていった。
冒険者の最終目標は魔王討伐。
それが成し遂げられた暁には勇者として歴史に名を刻まれよう。
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魔王の城を前にしてなにを考えているのだろう。
地道にレベルを上げ、仲間を作りやっとの思いでここまで来たのだ。この決戦にさえ勝利すれば世界に平和が訪れ、魔物による被害や貧困からなる略奪や犯罪も少なくなることだろう。
そのためにもこの戦い絶対に勝たなくてはならない。ここまで来るのに力を貸してくれた人たちの分まで・・・
「よし、行くぞ」
そう仲間たちと決意して魔王の城へ一歩踏み出そうとした時、目の前の道が消えた。
崩れたというよりも消滅した。そうまるでポリゴンのようなものとよくわからない文字が消えた道の代わりに存在した。
周りを見渡すと仲間もいない。そこで俺の視界は暗闇に飲まれた。
目の前にあるのは黒の背景に白の文字で書かれた一文のみ
そこには書かれていたのは・・・
「セーブデータが消滅しました」
俺はとりあえず考えるのを放棄して目を閉じた。