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いや、いやいや、いやいやいや、嫌ですけど！？
そんな話全く聞いてないし、なんで俺自分の罪知るために新しい罪重ねなきゃならないわけ！？
そんなに酷いことしたの、俺！？
「いえいえ、違いますって。貴方が誰かを殺すんじゃなくて、既に死ぬことが決まっている人を貴方が順番付けするだけですから。死ぬ人の順番を決めるだけの簡単なお仕事ですから」
いやいや、簡単に言うなよ。
お前らは慣れてるかもしれないけど、俺はそうじゃないからな。
いたって死に敏感な、善良……かどうかは疑わしい一般人だからな？
「……もう、面倒ですね。じゃあ即刻地獄行きで良いんですね？ 自分の罪も知らずにサヨナラでいいですね？」
そ、それは……、だな。
「別にこちらは貴方じゃなくてもいいんですよ？ 候補はまだまだいらっしゃいますし？ ええ、別に貴方みたいな冴えない奴じゃなくても、ね」
うう……お前、俺の事冴えないって、そんな風に思ってたのかよ。
「ほら！ そういうところですよ！ で！ どうするんですか！ やりませんか、やりますか！ はい、どっち！」
くそ、ここぞとばかりに強気に出やがって。ドンドン腹が立ってきたが、でもアイツの言い分も一理あるし……。
――本当……なんだな？
「報酬のことですか？ もちろんです、私は嘘は吐きませんので」
なら、やるよ。
ここまでお膳立てされてんのに今更引き下がれるかよ。
「全く、ようやく決心しましたか。と言うか、あの契約書にサインした時点で拒否は認められなかったんですけどね。強制労働か報酬をもらえるかって話で。まあ、懸命な判断だと思いますよ」
マジかよ、それを早く言えっての。
と言うか、お前俺に対する態度変わってない？
冴えないだのなんだの言い出したあたりから雑に扱ってない？
「あー、はいはい。そういうの、良いんで。これ以上長々と話をするのもなんですから、さっさと仕事の詳細について話しますね。あ、あと、私の事は敬意をこめて死神様と呼んでください。呼ばなきゃ貴方の来世をミミズにします」
わ、分かりました、死神様。
「よろしい。では仕事についてですが、今から貴方に人間の肉体を与えて、地上に下ろします。その先で貴方は田舎の学校に教育実習生として潜入します。そして、その学校に居る六人の生徒の――死期を決めていただきます」
えっと、地上に下ろされて、教育実習生として潜入、んで、六人の生徒の死期を決めて……と。
はい、死神様。質問いいですか？
教育実習生として潜入って言いますけど、死神って普通の人からも見えるんですか？
正直、幽霊みたいに霊感のある人だけにしか見えないイメージだったんですけど。
「死神は目に見えないものと思われがちですが、別にそんなことはありません。それこそ、黒猫なんかに化けて働く方も居ますし、その辺はわりとフワッとしてます。今回人間として潜入するのは、会話を通じて人柄を確かめた方が順番を決めやすいのでは？ という私のナイスな発想です」
なるほど、色んなやり方で人間を観察してるわけか。
黒猫が不吉って呼ばれてるのは、案外的外れでも無かったりして。
あとは……ああ、そうだ。
死ぬ順番を決めるって言いますけど、どうやって決めればいいですか？
もしかして、俺が直接下さないといけませんか？
「そちらの方は心配ありません。某新世界の王的な、名前を書けばその日に息絶えるメモ帳がありますので、そちらを使ってください」
お、おう。なるほど。それはそれは恐ろしいものを渡されるな。
使ったら最後、地獄にも天国にも行けないとかいうデメリット無いよな、まさか。
まあいいや、とりあえず話は分かりました。
最後に一つだけ、その仕事って期日はあるんですか？
「一応、今日から七日後が期日となっていますが、シニメモの使用可能時間帯が午後十一時から十二時に限られていて、更に次に使うまで十二時間空けなければいけませんので、実質一日に一人がノルマとなりますね」
シニメモって、まあさっき言ってたメモ帳の事だよな。
しっかし、どうしてわざわざ使用制限なんかかけるかね。そんなことしてるから作業効率悪いんじゃないか？
「作業効率が悪いのは私たち死神じゃなくて閻魔様の方なんですよ。だから私たちがいくらテキパキ仕事を片付けても、死者の転生効率が悪いんです。あげく、お前ら仕事早すぎだから！ だとか言い出してシニメモに制限かけるんですから。困ってるのはこっちなんですよ」
は、はい。ごめんなさい。
色々愚痴たまってるんですね、天界も。
俺で良かったら聞きますよ。
「いえ、結構です。それよりもさっさと仕事を片付けましょう。私は貴方に付くように指示を受けていますので、この仕事が終わらないことには次の仕事に取り掛かれないので。さっさと終わらせて閻魔の首を絞めましょう」
おいおい、遂に敬称さえ付けなくなったぞ。
結構闇深いな、天界。
でもまあ、確かに死神様の言う通りか。
俺もさっさと終わらせてスッキリして転生したいしな。
「そういうことですので、早速移動しましょう。五秒、目をつむってください。そうすれば直に眠くなると思います。その間に貴方を人間の器に入れて疑似的な人間にしてから、目的地に送ります。私も黒猫の姿になって同伴しますので、その後の事はあちらで話しましょう」
分かりました。色々無礼なこと言いましたけど、よろしくお願いします。
「それでは、おやすみなさい」
死神様の言葉を聞き終えると同時に、目をつむっていた俺の意識が遠のいていく。
ああ、本当だ。眠るみたいで、心地いい。
――こんなにも安らかに眠れたのは、いつ振りだっただろうか……。
読んでいただきありがとうございます。
七月中に全十話(未定)投稿しようと思いますので、よろしければブクマお願いします。
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よろしくお願いします。
