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四話続 『あれだろ? ドカーンってやつ』

 パーティー当日。馬車に揺られて数十分程度の近場にあるヴァンデルシア邸にへと向かう。

 屋敷に着き、ヴァンデルシア家の使用人にパーティーが行われているホールへと案内される。


「これはこれは、ライトロード家の御当主様自らおいでになさってくださるとは、誠に光栄でございます」


 会場内に入ると、一人の男性がリュカにそう話しかける。台詞からしてこの屋敷の当主であることは間違いないだろう。


「本日はお招き頂きありがとう」

「おや、そちらのお子様はもしや?」


 リュカの後ろに隠れる俺に気付いたのか、俺の目を見てそう言う男。


「ええ、息子のユウリです」

「始めましてユウリ・ライトロードです」


 礼儀作法については大分叩き込まれている。貴族胸に手を当てて軽く頭を下げる、貴族流の挨拶で自己紹介をする。


「ヴァンデルシア家当主、ルーランド・ヴァンデルシア……しかし、まだ幼いというのに、しっかりと礼儀作法を身に付けておられるとは、いやはや羨ましい、うちの子らにも見習わせたいものです」


 ルーランドと名乗った男性も、同じように挨拶を返すと感心したように言った。


「双子は今どちらに?」

「今は部屋に居るはずです」

「よろしければ、この子とそちらの双子を会わせてやりたいのですが」

「ええ、構いませんよ……君、案内してあげなさい」

「かしこまりました……どうぞこちらへ」


 執事に双子の居る部屋へと案内される。


「誰だ?」

「誰?」


 ドアを開けて部屋に入ると、暗がりの中に二人の子供が居た。片方は赤みがかった茶色の短髪で瞳も茶色の少年、もう一人は金髪のロングヘアーに碧瞳の少女。

 俺の姿を見て不審な眼差しを向けている。

 しばし無言で向き合う。

 お互いにどうすればいいかよくわからないのだ。方や突然現れた来訪者に驚き、方やどのように接すればいいのか考えあぐねている。

 んー、多少は警戒されるかなとは思ってたけど、ここまで露骨だとどう接してよいやら。かといって、お互いに無言ではつまらないし、ひとまず自己紹介でもしておくか。


「始めまして、ユウリ・ライトロードです」

「……」

「……」

「……えっと」


 参ったな、無反応だとどう対応すれば良いかわからない。


「お人形さんみたい!」

「お人形さん?」

「可愛い!」


 突然出てきた言葉に驚いていると、少女が抱きついてくる。


「はは、ありがとうございます」


 あまり嬉しくはない言葉に、複雑な心持ちで苦笑みを浮かべ、少女に離れてもらいながらそう言う。


「俺はルーク・ヴァンデルシアです」

「私、ルナ・ヴァンデルシア……です」


 少年の方がルーク、少女の方がルナという名前か。

 しかし、自己紹介をする二人の表情は少し堅い。まだ警戒されているのか。


「ルークにルナですね、早速ですけど僕と友達になってくれませんか?」


 単刀直入に言ったほうが警戒も解けるだろうと、俺は思い切って二人にそう言った。


「おう、いいぜ……あ、いいですよ」

「はは、無理して硬い言葉を使わなくていいですよ」

「わかり……いや、わかった。よろしくなユウリ」

「ユウリ遊ぼー!」


 あまり、敬語には慣れていない様子だったので、楽にしてもらっていいと言うと、二人とも表情から硬さが取れて笑顔になる。どうやら俺へ対する警戒も解けたらしい。


「何して遊びましょうか」

「えっとねー……あ、そうだ、いいもの見せてあげる」


 唐突にルナがそう言うと、俺の手を引いて部屋の外へと向かう。


「良いもの?」

「こっちだよ」


 そのまま手を引き、屋敷の外へと向かうルナ。


「外にあるんですか?」

「うん、そうだよ」


 屋敷の裏手まで来ると、ルナは大きな岩を指差した。


「あれ、山から持ってきたの」

「凄いですね、誰が持ってきたんですか?」

「ルナだ」

「私!」

「はは、ルナは力持ちなんですね」


 流石に子供があれを持ち上げるなんて無理だろう、きっと誰かにお願いして運んで貰ったんだろうなと思いながら、ルナを褒める。


「そうだよー、見ててねー……それ!」


 ルナは嬉しそうに笑い、岩の側まで歩いていくと、それを両手で掴んで軽々と持ち上げた。


「……えっ?」


 ビックリした。本当にビックリした。


「ルナ凄いだろ、とくいたいしつ? らしいぜ」

「えへん! ルナは凄いのだ!」

「え、いや……えぇ……」


 直径一メートル以上はある岩だ。大人でも数人がかりでなんとか持ち上げる事ができるであろうそれを、目の前の幼女はいとも簡単に持ち上げて見せた。

 発泡スチロールとか、中身は空洞のハリボテとかではない。正真正銘本物の岩だ。

 魔法を使った用には見えない。となると、今のを自力で持ち上げたという事になる。

 おそらく、ルーク言った『特異体質』というのに答えがあるのだろう。


「魔法以外にも、ファンタジーみたいなものがあったとは」

「魔法?」

「俺、知ってるぜ、あれだろ? ドカーンってやつだろ?」


 ポツリと呟いた言葉に反応する二人。


「はい、ドカーンってやつです」

「やってやって!」


 俺が答えると、興味深々でそうせがむルナ。


「すいません、魔法は簡単に使わない約束なので」


 見せてあげたいのは山々ではあるが、もし何かあれば大事になる。魔法の扱いには大分慣れたとはいえ、万一ということもあるし、なによりリュカとの約束があるので悪いが今は諦めてもらう。


「えー、見たかったー」

「俺も」

「ごめんなさい……あ、そうだ、魔法は無理ですがこういうのはどうでしょう?」


 ぶっつけ本番だから失敗するかもしれないけれど、魔法の実演よりはよほど安全だろう。


「なになに?」

「良いですか、今両手には何もないですよね?」


 俺は両手を二人に見せながらそう尋ねる。


「ない」

「ないね」


 じーっと俺の両手を見て、そう答える二人。


「ではよーく見ててくださいね……はいっ!」


 合図と共に、突然一輪の花が両方の手に現れる。


「わぁ! 凄い!」

「これ魔法か?」


 何もないところから、いきなり現れた花を見て目を丸くする二人。


「魔法とは少し違います」


 手品も魔法みたいなものだが、タネは簡単。頭の中で想像して、そのまま創造するだけ。

 あまり練習をする時間が取れなかったので、殆ど進歩はしていない。

 まぁ、慣れてないにしては綺麗な花が作れた気がする。といっても、花びらの大きさが不揃いだったりとやや不恰好ではあるが、今重要なのはそこではないのでいいだろう。


「次はこの花を消しますね、よーく見ててくださいね……はいっ!」


 合図と共に俺の両手にあった花が光の粒子となり消える。


「スゲー」

「きれー」

「とまあ、今はコレが精一杯なのですが満足してもらえましたか?」

「ユウリ凄い!」

「喜んでもらえてなによりです」

「でも、魔法も見たいな」

「そうだね」


 魔法への興味は捨てきれないのか、名残惜しそうなルナとルーク。


「んー、屋敷内なら使うのは問題ないですが、遊びに来るといっても中々難しいでしょうし」


 手がない訳ではないが、立場上そう簡単に遊びに来るのは難しいかもしれない。


「ユウリの家行けば魔法見れるのか!?」

「行く行く! 絶対遊びに行くから、魔法見せてね」


「あら、ユウリちゃん、そんな所でなにをしてるの?」

「あ、母様」

「ユウリのお母さん? 綺麗な人……」

「そうだなー」

「嬉しい事言ってくれるのね、あなたはルナちゃんで、君がルーク君ね」


 綺麗と言われ、気に入ったらしくにこやかな笑みでルナとルークに話しかけるリュカ。


「うん、そうだよ!」

「おう!」

「二人とも元気があるわね、ユウリちゃんとは仲良くしてあげてね」

「うん! ところでお姉さん、お家遊びいってもいい?」


 ルナが唐突にそう尋ねる。よほど魔法に興味があるらしい。


「いいわよ、何時でもいらっしゃい」

「やったー! これでユウリの魔法見せてもらえるね!」

「だな!」


 両手を上げて大はしゃぎする二人。どうやらよほど魔法に以下略。


「あら、二人とも魔法に興味があるのね……今いくつなの?」

「もうすぐ五歳」

「俺も」

「あら、それじゃあユウリちゃんと同年代ね……魔法に興味があるのなら、お姉さんが教えてあげましょうか?」


 少し考えた後、リュカは二人にそう言った。少し時期尚早ではあるが、五歳間近というのであれば魔力量は十分だ、魔法を教える分には問題ない。


「いいの!?」

「マジで!?」

「いいわよ。ユウリちゃんに教えるついでだもの、話は通しておいてあげるからいつでもいらっしゃい」

「「やったー!」」


 先程よりも更に嬉しそうにはしゃぐ二人。どうやらよほど魔法に以下略。


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