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二話『良い質問ですね、加点してあげます』

 というわけで、翌日から俺は母であるリュカに魔法を教わる事となった。


 俺が空けた穴は、何故か母リュカがやった事になっていた。

 子供である俺がやったとなれば、使用人が俺に対して恐怖し、畏怖の目をむけるだろう。それを避ける為にもリュカがやったという事にしたようだ。

 知っているのは母と仕事で家を空けていたため、後から話を聞いた父、そして極一部の使用人だけだ。


 だだ、寝ぼけて魔法を使っちゃったっていうのは、どうにかならなかったのだろうか。

 というのも、使用人の間で『奥様が寝ている時に近付くのは危険』という噂が広まっているのだ。本人は気付いてないようだし、噂も使用人の間では世間話みたいなものなので問題ないと言えば問題ないけれど。


「ユウリちゃん、これからユウリちゃんには魔法を教えます。でもその前にやることがあります」


 そう言ってリュカは台の上に一つの水晶玉を置いた。


「やる事って、なんですか?」


 占い師なんかが使ってそうな、如何にもといった感じの水晶玉を見て未来でも占うのかなと思いながら、俺はそう尋ねる。


「良い質問ですね、加点してあげましょう」

「ありがとうございます」


 その加点に何の意味があるかはわからないが。


「先ずは、これでユウリちゃんの属性を調べます」

「おおー!」


 光属性がある事は既にわかっているが、他にも属性があるかどうかは重要だ。雷とか火とか、火力が高そうな属性が欲しいところ。


「じゃあ、水晶の上に手を置いてみて」


 俺が水晶の上に手を置くと、淡い二色の光を灯す。白光と黒い光だ。

 見た目から言うと、光と闇属性だろうか。


「え? あら? 故障かしら?」


 それを見たリュカは何故か首を傾げる。


「?」


 一体どうしたのだろうかと、首を傾げるリュカを見て俺もまた首を傾げる。


「おかしいわね……ユウリちゃん、ちょっと一回手を離してもらえる?」


 そう言われ俺は水晶から手を離す。すると水晶に灯っていた光はフッと消失した。

 今度はリュカが水晶に手を置いた。水晶は淡い白い光を放つ。


「故障……じゃないわね……ユウリちゃん、もう一度手を置いてみて?」


 言われるがままに、もう一度水晶の上に手を置く。

 先程と同様に水晶は白と黒の淡い光を放つ。


「んー、おかしいわね」


 そこで何故か再び首を傾げるリュカ。


「母様、なにがおかしいんですか?」


 一体なにが変だというのか、気になった俺は直接そう聞く。


「んー、少し難しい話になっちゃうけど……」


 子供が理解できるだろうかと、微妙な顔をしながらも説明してくれるリュカ。

 内容を纏めるとこうだ。

 属性は一人一つ主属性があり、二つ目以降は副属性とされる。副属性は主属性と親和性の高い属性である。

 もっとも、副属性だから主属性だからといって、魔法の威力、効力に影響することはない。


     ↙風↖

    雷   土    光

    ↓ 無 ↑    ↕

    水 → 火    闇


 火、土、風、雷、水で五角形を描き、その中心に無を置く。

 図で描いたとき主属性の副属性は隣にある属性になる。

 例えば、主属性が風であった場合は、副属性は土か雷となる。

 無属性は、主属性がなにであるにもかかわらず誰もが持っている属性だ。

 極希だが、属性を四つ五つ持つ者もいるらしいが、そういう者は主属性が風だとしても火や水の属性を持っている。

 光と闇の属性だが、これは互いに対立した属性であり、同時に持つことはまずないとされている。

 重要なのは最後の部分。光と闇は同時に持つことはないという点だ。


「ですが母様、現にボクはこうして両方の属性を持っていますよ?」

「そうね、水晶が壊れているわけでもないし」


 そう言いながら首を傾げるリュカ。

 確かに、そのルールに乗っ取って言えばこうして俺が光と闇属性を持つのはおかしい。

 今までに前例がなかっただけで、実はそんなルールはありませんでしたーなんてオチもありえないわけではないが、可能性はゼロに近いだろう。

 となると、他に考えられる要因としては転生だが……なぜこうなったのか、神本人に聞けない以上はそれ以上の事はわからないので、どうしようもない。


「まぁいいわ、どこも身体が痛くないのならそれで」


 リュカは少し考えるように目を閉じて腕を組んでいたが、やがて能天気に笑いながらそう言う。

 ただ前例がないだけの話で、現にこうして俺が二つの属性を持ち、特に体に異常もないのであれば何ら問題はない。ほんの少し。たった一文、魔法の常識が変わるだけだ。


「属性もわかった事だし、早速授業をはじめまーす」


 属性だけで魔力量は測らなくても良いのだろうかと疑問に思ったが、知られて大騒ぎになるのも困る。それに、測らなかったという事は魔力量を測る道具自体が存在しない、もしくは非常に珍しいものなのだろう。

 公爵の家にも無いとなれば、それこそ王家の人間でなければ所有していないだろう。

 俺が隠していれば、莫大な魔力量を知られる心配はなさそうだ。


「では出席を取ります。ユウリちゃん」


 教師というものをやってみたかったのか、些か楽しそうに見える。


「はい」


 折角なので乗ってやろうと思い、俺は椅子に腰掛け、勉強机に手を置いて返事する。

 童心に帰るというのだろうか、俺も小学一年生の初々しかった頃を思いだし、少し懐かしい気分になる。


「はい、よくお返事できました」


 そう言いながら、満足そうに俺の頭を撫でるリュカ。


「じゃあまず、魔法を使う前に魔力について知っていこうかな」


 リュカはそう言うと、教科書代わりに用意した大量の本を一冊手に取り、最初のページを俺に見せるようにして机の上に置く。

 ざっと内容を目に通した感じでは、どうやら魔力について記載されているようだ。


「魔力は魔孔っていう見えない小っちゃい穴から、体の外に出てくるの。魔孔は手のひら、肩、背中にいっぱい集まってて、魔力を使う時以外は基本的に閉じてるのね。つまり、魔孔っていうのは魔力の通り道で魔孔を少しだけ開いてあげれば少しの魔力が、たくさん開いてあげればたくさんの魔力が外に出てくるって事」


「では母様、魔法の威力を下げる為には、魔孔をあまり開けずに魔法を使えばいいという事ですか?」


「そう言うことよ! もー、ユウリちゃんってば天才ね、後でご褒美にお菓子をあげちゃいましょうね」

「それで、魔孔の開閉はどうすれば良いのでしょう?」

「んー……感覚、かしら?」


 少し考え、困ったように疑問符をつけて答えるリュカ。

 随分と歯切れがわるい。まさか、なんとなくで出来ちゃったから、やり方とかよくわかんなーいとか言い出したりはしないよな。それ言われると流石に詰んじゃう。


「感覚ですか」

「魔孔は堅く閉じていてね……だから、最初は皆、魔法を使う前に魔孔を開く所から始めるものなの、そうすれば自然と魔孔の開閉は感覚で出来るようになるからね」


 なるほど、この世界の人にとっては魔孔の開閉は歩くのと同じなんだ。

 街中を散歩するのに、歩く事に意識を集中させる人はいない。

 特に意識せずとも、自然と出来る。だから、特にやり方とかは考えた事がないのかもしれない。


「けど、ユウリちゃんはそれを飛ばしていきなり魔法を使えたという事は、魔孔は既に開いているということなの、だから初めて魔法を使った時の感覚を思い出して、それを弱めるように意識してみれば……って、こんな説明じゃわからないわよね」


 三歳時相手には少し説明が難しいと思ったリュカは、どういう風に伝えたらいいかと少し困ったように指を顎に当てて考える。


「いえ、よくわかりました。早速試してみたいです」


 そんなリュカに、俺は挙手してそう言う。

 確かに、三歳児では理解できない内容かもしれないけれど、俺の場合見た目は子供で頭脳は大人なのだから、寧ろリュカの教えはよく分かりやすかった。


「あら、そう? ユウリちゃんは本当に賢いのね、いいわ、それじゃあちょっとお外に出ましょうか」


 本当に解ったのだろかと半信半疑なリュカだったが、やがて信じたのか、笑顔でそう言って俺を外に連れ出す。


「とりあえず、魔法で的を作らせたから、ちょっとコレに向かって撃ってみて」


 漫画の世界でしか見たことないようなだだっ広い庭で、使用人に魔法で用意させた大岩を叩きながらそう言うリュカ。


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