βテスト 1-4
食事を終えたあと少し戦闘向けのスキルやベースレベルを上げるためモンスター狩をすることにしました。装備がそろったおかげでもうウルフやゴブリン程度じゃ相手にもなりません。
なので今日はオークを相手にするためヘルガさんと出会った森の奥へ向かうことにしたのです。
「へぇ~アレがオークなんだ~。見た感じ棍棒や槍を持った二足歩行の豚……それとも猪?かしら」
ちなみにまだオークは私の存在を認識していない為、私はゆっくりと背後から近寄っていく。しかし5mくらいまで近づくと急にオークが振り返り私に向けて突進してきたのです!
「え?なんで!?」
近寄ってきたオークは手に持った木の棍棒を振りかぶり、私に向けて振り降ろす!
ドガッ!
軽い衝撃を受けたので慌てて確認をすると体力が148/200となっていたので追撃を受ける前にオークから離れる。
「ブッヒィン!」
オークは逃げた私に対してニヤニヤしながら距離をつめ、再度棍棒を振り下ろしてくるが既に最初の見つかった事に対する驚きはないので、新調した鉄銅の剣で受けに回ると体力がさらに5ほど減ったが防御することができました。
「何で見つかったのかわかんないけどっ、もともと戦うつもりだったから気にしない!」
私は剣を構え基本の特技で盾に斬りかかる。剣は綺麗にオークの体に吸い込まれダメージを与えることができた。
「ぶっひぃ?」
オークは反撃されたのが意外なのか首をかしげていたのでその隙を突き、剣術スキルレベル3で覚えた特技を使い真横に切り払う。
「特技【一文字】!!」
この一文字という特技は範囲は凄く狭いが密集している場合複数攻撃ができる特技だ。範囲攻撃と言えば範囲攻撃なのだろうけど、私的には範囲攻撃とは認めていない。複数の敵が密集していることなどほとんどないのだから。
切り裂かれたオークはというと傷口からダメージエフェクトを撒き散らしながらも私に向かってシッチャカメッチャカに棍棒を振り回してくる。
私はそれを距離を取ることで回避し、オークの攻撃が治まった所に止めと成り得る切り落としを食らわせた。
「ブッヒィィン……」
断末魔の叫びを上げながらオークは完全に粒子化し、経験値と豚肉と言う素材を得ることができた。
この取得した経験値により私は無事、ベースレベルが一つ上がる。ついでに剣術スキルも上がったかな。
「オークって豚でよかったんだね」
戦闘後に出た私の言葉はレベルアップしたことに対する言葉ではなかった。
その後も森の奥に行くに連れてオークと遭遇したけどいくら不意をつこうとしてもある程度近づくと気づかれてしまうことが分かったので最近は正面から攻めている。
ログインしてから2時間ほど経過し現実時間では21時、オーク討伐数を確認するともうじき100になる。レベルも村民が11となり、良い感じです。後4つでカンスト?だそうですよ。
「きりが良い数字だし次でおわろっと……。あ、いたいた!」
発見したオークを倒せば100体目となるので、これで町に戻ることを決めオークに斬りかかる。
森に入った当初に比べて腕力の数値が伸びたのでオークの相手もかなりしやすくなっているので危なげなく特技で斬り倒すことができました。そしてその戦いが終わった瞬間……
《オークヒーローが出現しました。オークヒーローは短時間に仲間をたくさん殺され怒り狂っています。今の実力では倒せないので街まで逃げてください》
「え?これ何?イベント?」
混乱していると200mほど先に巨躯にきらびやかな鎧と兜、そして2m位はある槍を携えたオークが確認できた。
「よ、よくわかんないけど街に逃げればいいのかな?あんなの倒せるとも思えないし、言われた通り?逃げよう!……街までついて来ても大丈夫なのか心配だけどね……」
オークヒーローは私を視認すると、かなりの速さで走り追いかけてきた。
勿論私は、必死に逃げましたとも!あんな巨体と硬そうな防具にダメージが通るとも思えないし!
「グォオオン!!」
私を追いかけながらオークヒーローが吠えるとその周辺からたくさんのオークがワラワラ集まってくる。
……うん。足止めできるとは到底思えないね!
必死に森を走りながら途中βテスターが数に似たので逃げるように指示。だけどそのプレイヤーははじめてみるオークヒーローに向かって喜色満面で走り出したではないですか!オークヒーローどころか行く先を阻むオークにボコボコにされて死に戻っていったのを見ました。
「せっかく教えてあげたのにぃ~!」
なんだかんだで私もオークを探しに結構森の奥に入っていたので、街までの距離がイマイチつかめない。勿論マップを確認しているけど、マップに気を取られていたら前方(進行方向)から来たオークに邪魔されたりしたからね。
かといってこういうオークの相手をしていたら追いつかれてしまうので全力で逃げます。
40分くらい走ったでしょうか?ようやく森を出て町が見える街道まで来た所、街からたくさんの兵が出てきたではないですか。
「もしかして死に戻ったプレイヤーが知らせてくれたのかな?」
なお、この予想は外れており、単にイベントが発生してオークヒーローが森の外に出たので自動的に派兵されただけである。そしてやっとの思いで兵達に合流するとまたメッセージが流れた。
《街の兵士達と協力してオークたちを撃退しよう!》
えぇ!?ここまで走らされた上、次はこのオークの相手をしろと?なんて人使いの荒い……。
兵達は森から出てくるオークの相手をしながら倒されては街から派兵されて合流していく。
まあ兵士以外にも、プレイヤーたちも何事かと思いながら街から現れてはオークを見ると戦い始めたので
兵の数は変わりなくオークたちだけがドンドン減っていく。
それが続きとうとう奥のほうにいたオークヒーローも前線に出ざるを得なくなったとき、兵達の中から明らかに意匠の違った装備をした人が数人現れ、魔法を詠唱し始めたのだ。魔法使いの頭の上には詠唱終了時間というものが表示されていたのでおそらくこの時間を稼げば良いのだろう。
プレイヤーのうち何人かは、自分の判断でそれぞれ魔法使いたちの護衛につく。
「私は……適当にオーク狩りでもしようかな?」
魔法使いの護衛にたくさん入っても邪魔なだけと思い、私が前線へ向かうとオークヒーローが私を視認し更にヒートアップ。兵達の守りをものともせず私だけを目的に突っ込んできたのです。
「えぇっ?ちょっとまってよ。まだ私狙われてるの!?」
結局たくさん人(兵)がいるため逃げること叶わず、私はオークヒーローと対峙する羽目になった。だけどオークヒーローの武器や防具はたくさんの兵たちの足止めを食らったおかげかそこかしこに傷が入り、大分性能が落ちている気がして、なんとなく戦っても大丈夫な予感がしたのです。
「やるからには勝つんだからっ!」
こうして私を含めた周りのプレイヤーや兵と共同戦線が開始されたのです。
オークヒーローとの戦闘開始後22分、魔法使い達の魔法詠唱はまだ終わらない。むしろ途中から減っていない気がするのは何でだろう?魔法発動の邪魔が増えているのか、それとも発動条件がそろっていないのか判断がつきにくいけど、目の前にオークヒーローがいるのにそこまで考えてる余裕はないですよね?
なので私は私のできること、オークヒーローの足止めというか体力を少しでも削ることを念頭に行動しています。
そして更に30分ほど流れ現実時間で22時になった頃、オークヒーローの体力もかなり減っていき、それと同時に魔法使い達の詠唱時間も減っている事に気づいた。
「……もしかしなくてもこれってオークヒーローの体力を減らすことこそが条件なんじゃ?」
そうと気づいてからのプレイヤーたちの行動は早かった。通常オークたちが狙う魔法使いの護衛には体格に恵まれたプレイヤーが数人残り、攻撃に秀でた人たちはオークヒーローに攻撃をドンドン加え始めたのです。
「ブルッヒッィィィン」
相も変わらず、私が近づくと目の色を変えて襲い掛かってくるためそれを利用して隙を作り攻撃を仕掛けてもらう。
「私も攻撃しないと……ねっ!」
オークたちを倒し続け上昇した剣術LV10のスキル【兜割り】でなんどもダメージを与え、他の特技も使用してオークヒーローの体力が残り数ドットとなったとき後方の魔法使い達がいるところから声が聞こえる。
「魔法が発動するぞぉ~はなれろぉぉぉ」
その声に反応したのは私以外の全員。私はというと集中しすぎていてもう声を聞いていなかったのです。
「おいっ!そこの女!早く離れろ!」
といっていたらしいが私はひたすらオークヒーローとの一騎打ちにのめりこんでいた。
「グォォォン。……ヒトゴトキニ、ヤブレルコトニ、ナルト……ハ……」
私がオークヒーローの放つ攻撃後の一周の隙を突いて残りわずかの魔力で発動した【兜割り】からの【一文字】でオークヒーローの体力は消滅した。
その声を聞くと同時に莫大な経験値とアイテムが入り、私の村民レベルはカンストしたのでした。
《総戦闘時間:1時間31分。オークヒーロー討伐を確認しました。この偉業は正式版に持ち越されます》
オークヒーロー消滅後、魔法使い達が私諸共広域殲滅魔法を発動し私は死亡した。