クラスメイト視点 1
「鏡さん来てくれるかなぁ?」
「シュリ、VRでは本名呼びは一応禁止だぞ?」
「そんなこといったって、私のキャラ名もシュリだからね。ある意味本名だよ。鏡さんもそんな感じだけど……」
「まあそうだけどさ。苗字呼びはダメだろ?」
私ことシュリは、クラスで声を掛けた鏡麗華さんのことを考えていました。彼女とは、今日のお昼を除いて話をしたことはありませんが、彼女の事はクラスメイトになる以前から知っていました。 その理由は、地元の陰のある美少女ランキングの不動のトップをひた走っていましたので……。というか、地元民で彼女を知らない同年代はいないんじゃないでしょうか?
彼女の性格はどっちかというと高圧的。ですが、時折彼女が心を許している紡木七実さんとの会話で洩れる笑顔を激写され、それが私達の中を駆け抜けたあと、少数ながらファンクラブが出来始めたのです。
最初こそ、高圧的な彼女のファンが増えるはずが無いと思っていたのは私も含めて何人もいました。ですが、そこは紡木さんが表に出て、鏡さんの性格を説明していくことで周りの態度が軟化していきました。
そんな彼女が変化したのは夏休み前。
紡木さんと一緒にとはいえクラスメイトと話すようになったのです。それによりクラスでは表面には出ないけど歓喜の嵐がおきました。
私としては夏休み前から鏡さんのことをもっとよく知るためにも、ゲームに誘うつもりでしたが、舞い上がっていたあるオバカな男子によってその計画は潰されました。それは彼女が、ドリコム(彼女からするとDCO)をプレイするということを大々的に叫んでしまった事。
本来ならこの位の事で?と思われるでしょうけど、鏡さんとしては知られたくなかったことなのでしょう。話が出る前と出た後では、会話をしなくなるなど反応が違いすぎました。
これに関しても後ほど、紡木さんから説明がありましたので私達は原因を作ったオバカ男子を私刑で精神をズタボロにして反省させました。(イジメではありません。後にも先にもこの一度だけですし、彼はしっかり反省し、夏休み明けに鏡さんに謝っていましたからね)
「そろそろ17時でござるな。シュリ殿、本当にレイカ殿は来るのでござるか?」
この妙な話し方をしているのは神込くんもとい、コメカミというプレイヤーで時代劇らしきロールプレイをしている。断じて忍者ではない!
「うん、来てくれるようなことは聞いてるよ」
そしてもう一人……いやもうたくさん。何言ってるんだろう私。とにかく今現在、この始まりの街の転移ポータル周辺にいるプレイヤーの数は20数人。
「人がいないと思ってこの場所にしたのに今日に限って人が多いね」
ストーリーが進んだ今、始まりの街のこの場所は転移してきた時以外、人が留まることが無いので明らかに何かの目的を持って集まってきた人たちだと思います。
その中の2人組みが私の来て話しかけてきました。
「ちっす!クラスメイトの伊達っす。キャラ名はマサムネっす。かがm……じゃなくてレイカさんに会う為に来た!まだ来てないみたいっすけど」
「よう、真田だ。キャラ名はノブシゲではなくユキムラだ」
伊達君に真田君?そういえば鏡さんと話をしていた時、隣の席にそんな人達がいましたね。
「……もしかしてここにいるのって皆?」
私が周りを見ると、視線をそらしながらも、頷くプレイヤーが多い。どうやら今ここに人が多い理由は鏡さんのプレイヤーキャラ見たさのようですね。大声で話してたわけじゃないですけど、あの会話を聞かれていたんでしょうか。
「あんまり人が多かったらレイカさんが近寄らないかもしれないから、離れてよね」
その発言に、クラスメイトらしき人たちは、それもそうかと少しずつ距離を取り離れていきました。
「ここに来てないクラスメイトって、まだゲーム機を持っていない数人と紡木だけだろうな」
「紡木さんはアメリカに行ってるんだからしょうがないわよね」
これだけ離れていてもフレンド申請は届くようで、集まった全員と登録することが出来ました。もちろん自己紹介のメッセージつきで。
フレンドチャットで話すこと数分、約束の17時が過ぎました。
「レイカさん来ないな?何かあったのかね?」
「う~ん?彼女が時間を間違えるとは思えないんだけど……。あっ!きたかも!」
ポータルから現れたのは、煌びやかな装飾の施された着物を着た女性。着物の肩口には狐の皮が掛かりストールっぽくなっている。着物も光り輝く糸で結われており、インパクトがすごすぎる。
というか、和装に白髪のシニヨンの髪型って!彼女じゃなかったら似合ってないと思う……。
その彼女は周り(クラスメイトたち)を見た後、小首を傾げながらもシュリというプレイヤーネームを表示させている私の元へ歩いてきました。
クラスメイトたちはというと……隣にいたコメカミ含め完全に見惚れていますね。私もこのあと声を掛けられなかったら同じだったでしょうけど。
「シュリさん。遅れてしまい済みませんでした。この着物の制作がギリギリでしたもので……」
レイカさんは申し訳無さそうに頭を下げました。
「いや!気にしないでよ。クラスメイトなんだし、レイカさんにも事情はあるって分かってるんだし」
改めて見ると、レイカさんの容姿の凄さが分かりますね。まずは種族は魔族で妖艶さが滲み出てるように感じます。
先も言いましたが和装といえば簪などで髪を結うのが普通。なのに彼女はシニヨンでお団子にしつつも、チャームポイントとばかりにシニヨンから尻尾が出ているような形。
そして白髪にはあまり似合わないはずの着物が見事にマッチしている不思議。
「レイカさんはやはり綺麗だね。着物が似合ってる」
「え?あ、ありがとう。着物は家でも時折着るからこれにしたの」
「そうなんだ?」
うん、会話が続きません。というかクラスメイトの皆は何時まで呆けてるつもりなんでしょう。早く彼女の相手をしてくれないと私が彼女の姿を堪能できないじゃない!
そんな願望が届いたのかコメカミが再起動し、なにやら話しかけていたみたいだけど私には聞こえなかった。
遠くから様子を見ていたクラスメイトたちも徐々に近寄りながらレイカさんに話しかけていく。彼女はクラスメイトの多さにビックリしていたけど、ちゃんと話をしていたようです。
この時の流れで、夏休みにオーラを迎えた人の正体がレイカさんだと知り、私を含めたコメカミ以外は驚きました。コメカミはSSを保存しており、レイカさんが現れたときに確信したとの事。
コメカミからの情報でレイカさん情報は知識共有されました(本人以外にですけどね)
なんやかんやが終わり、時間も余裕があるということで、私達はクラスメイト全員で第3の街 《グリーディア》にある炭鉱ダンジョンに向かうことになりそこで、レイカさんの恐ろしさを見ることになるのでした。




