βテスト 1-1
Dream Community Online (長いので以下DCOとする……)に再度ログインした私は、先ほど生産スキルで使ったコボルト素材の他にも糸にできるものがあるはずだと思ったので、最初の村(どうやら始まりの村というみたい)にいるNPCである村人に話を聞いてみることにしたんです。
「やぁ!君が噂の旅人だね?何か聞きたいのかい?」
「噂になってるんですか?数時間前に来た(ログインした)ばっかりなのに……」
「ここは小さな村だからね。こういったことはすぐに伝わるんだよ」
とりあえずログインしてすぐ近くにいた農家の男性(以下村人A)に話しかけてみるとこういう返事が来たわけです。
噂云々はもう良いとして早速素材に関して聞きたかったことを聞いてみることにしました。すると村人Aは笑顔で色々と教えてくれました。
「ん?糸になる繊維の取れる植物素材かい?うーん……それなら村の南に森があるからそこに行けばたぶん《薬草》や《麻草》と言ったものがあると思うからそれを使えば良いよ。ただ森には、浅い部分にはウルフやゴブリン、奥に行くとオークと言ったモンスターがでるから十分に注意していくんだよ?」
「ありがとうございます。準備をした後、早速いってみます」
私は村人Aにお礼を言うと、私はその足で村にあるただ一軒の店《萬屋》に赴き、先ほど作ったコボルトの糸を3本ほど売り60C手に入れるとポーション(一つ20C)を3つ購入し店を出る。武器は初期装備の見習いソードで十分です……というか萬屋では剣を置いてなかったので仕方ないのです。
回復アイテムの準備も終えた私は村の南から外に出て目前に見える森へ向かう。道中やはりゴブリンやスライムに襲われたのですがそこは先ほど何度か倒したことで慣れているのでサクッと倒して森へ急ぐ。
森に着くとスキル一覧から【採取】使用。スキルの自動使用をOFFにしていたのでいちいち起動しなくてはならない。と言うのも休憩前、ゴブリンやコボルトに襲われたとき剣術スキルONだったのですが覚えている特技を自動使用されてしまい、死にかけたからです。それからはとりあえずスキルの自動使用を全てOFFにして必要に応じてONにすることにしたのです。
採取スキルを使用すると森の中にチラホラと違和感を感じる場所があったのでそこへいくと薬草が生えていたのでそれを採取していく。
「なるほど。違和感があるところに素材があるのね……。そうとわかれば周りにあるところで採取しなくっちゃ!」
気合をいれて、違和感を感じるところで採取を繰り返すこと数十回。ふとスキルレベルが気になったので確認してみると【採取LV2/LV5】と一つ上がっていた。
「今更だけどレベル上がりやすいのね……ベータテストだからかな?まあ時間を取られすぎないから私としては歓迎だけどね」
レベルが上がると違和感から確信に変化しそこへ行くと必ず素材を見つけることができた。だけど一部採取レベルの関係か採ることができない素材もあったので、それを気にしつつも取れる素材だけを集めていった結果、1時間の採取で1株5本計算で薬草が45株、麻草が32株、毒草を19株見つけることができた。
「うん、こんなものかな?これだけあれば糸をいっぱい作れるわよね?後は……糸だけじゃ物足りないからコボルトかウルフ辺りから毛皮がほしいかな」
ちなみに採取中、何度かゴブリンやウルフに襲われていたので多少は素材があるが出来上がると思われる糸の量からすると縫ったりなめしたりする毛皮の数が圧倒的に足りないことが容易にわかる。
「グルルルッ!」
「あ、噂をすればなんとやらね。私のために毛皮の方から来てくれたわ。……って、えぇ?何よこの数!」
唸り声に気がつき、その方向を見るとウルフが軽く10頭以上、私に対して威嚇をしている。
「えっと、デスペナルティって何があるんだっけ……」
その光景を見た私は既に死んだ後のことを考えていた。流石に単体でのウルフに勝てるとはいえ10体以上も一人で相手できるわけがないのです。
ちなみにデスペナルティは所持アイテムのランダムドロップと装備品の劣化にステータスの一時的低下。らしいけどベータテスト中はアイテムドロップがメインに活用される。
「せ、せっかく集めた素材を落としたくないから精一杯抵抗するわ!」
私は剣を構えるとそれを見たウルフたちが思い思いに突進を仕掛けてきた。
一番前から突っ込んできたウルフに対しては目で追えたので剣で振り払い倒すことができたけど2頭目からは対処ができず、体に傷を負っていく。体力を確認すると112/200となっており、同じような連続攻撃を2度食らったら私は死んでしまうことに成る。なので先ほど買っておいたポーションを使い体力を回復すると162/200となった。
「あと……13頭もいるのね。どう考えても倒せないわ。逃げれるかな……」
色々思案しているところに天の助けか声をかけられる。
「きつそうだね?手伝おうか?」
現れたのは同じベータテスターらしき男性。装備は私よりはしっかりしたものを持っており、強そうだ。
「お、おお、お願いできますか?」
……ドモッたのは相手が男であることと私が人見知りをする性格であることが上げられる。
「了解。俺は範囲技でこいつら片付けるからそこから抜けた奴の相手を頼むよ」
「は、はい!が、がんばってみます!」
男性が来てからのウルフの群れの討伐はあっさりしたものだった。宣言どおり範囲スキルを使用するとウルフ10頭が消滅、残った3頭のうち2頭はに逃げ出し、1頭は私目掛けて襲い掛かってきたので剣で切り払うことで倒すことができた。
それにしても範囲技ってかっこいいなぁ。今は剣を使ってるけど確か魔法って範囲攻撃が多かったはずだし、取ってればよかったよ。
「お疲れさん。君は最近始めた子かな?」
「そ、そうですけどなにか?」
「ん?いや、なんでもない。ベータテストが始まってからもう1週間たち後2日程でベータテストが終わるのにまだ初期装備な子がいたからそれに驚いただけさ。……ところでもし良かったら村まで送るけどどうする?その装備のこの辺りで戦うにはきついと思うし……」
「お気遣いありがとうございます。先ほどの様なことがない限りは一人で戻れますので結構です。……あと助けて頂きありがとうございました」
「……そうかい?じゃあ俺は森の奥に行かなきゃならないから失礼するよ。君も気をつけてね?」
そういうと男性プレイヤーはさっさと森の奥へ向かい歩き去っていく。
「んー、やっぱり家族以外の人が相手だとうまく喋れないよ……あの人、気を悪くしてないと良いけど。とりあえず素材は集まったし、村に戻って裁縫頑張らなくちゃ!」
その後、無事村まで戻った私は生産作業に入る……前に休憩をはさむことにしたのでした。