1周年イベントと…… 終
「ふぅ……」
奥の手の一つ【儀式魔法陣】を使用し夢幻の邪神王を倒した私はその場で一息つく。勿論眷属たちは私の周囲で待機状態となっています。
そこにナナやシヅキ、スミナなどのギルドメンバーが駆け寄ってきました。
「お疲れ様レイカちゃん達!」
「へぇー、近くで見れば見るほどレイカにそっくりなのね~」
「こういう無表情なレイカさんも綺麗過ぎます……」
「そうだよね!それじゃあ早速……」
ち、ちょっと待ちなさい。シヅキたちの言葉は良いけど最後に聞こえたナナのそれじゃあ早速……とか言いながら眷属をテイムしようとするのは止めてよね!
あ~、ナナがそんな行動するからほらぁ!コノハとルルさんまでスキルで【調教】を取得しようとしてるじゃないの!?余計な手間が増やさないでよ!コノハは本気で取ろうとしてたみたいだけどルルさんはノリ……ですよね?
コノハたちを説得して簡単にはテイムできないからやめておきなさいというと渋々ながら諦めてくれました。その代わりにこれからは眷属をちょくちょく召喚して欲しいという懇願もありましたけどね。
特に【飴と鞭】による罰則の時に眷属を召喚し複数のレイカによる罰を受けたいとか言い出したときには引きました。一応、罰云々時においては拒否しておきましたが、時と場合によっては呼ばないとイケないときも来るかもしれません。
「レイカさんに色々聞きたいことはありますけどとりあえず皆さん、イベント報酬の確認しませんか?」
「あっ、そうでしたね。3段階も強化されるボスだったんですから絶対良いアイテムが手に入っているに違いないですよ」
ソフィーが発言するとスミナが同意する。私としても良いアイテムが手に入ってくれないと嬉しくないですから同意しておきました。
まあこれ以上眷属について突っ込まれたくないと言う気持ちもありましたからね。
全員が集まりドロップアイテムと討伐報酬の確認をすると出るわ出るわ、沢山のアイテム。
「あっ、私は《一周年記念迷宮クリア者》の称号と《一周年記念ソード》と《一周年記念コイン》3枚だった」
「同じく《一周年記念ランス》と《《一周年記念》コイン》5枚ですね」
「私もそんな感じですわ」
聞くと全員に《一周年記念迷宮クリア者》の称号と《一周年記念》シリーズの武器が1種類以上と《一周年記念コイン》数枚がドロップされていました。
なお《一周年記念》シリーズの装備は装備本体は大した能力はありませんが生産職に鋳潰してもらうとレアな素材に変化し、そこから高性能の装備を作れるようです。
私は鍛冶とかのスキルを持っていませんので利用できませんが、エミリーとかヒラメキみたいな生産職の知り合いもいますからそっちにお願いしようと思います。もちろんウサミに渡しても良いんですけど、武器を作ってもらってもどうしようもありませんしね。
《一周年記念コイン》はダンジョン周回を行い、専用NPCに渡す事でスキルポイント券や迷宮管理権といった特殊アイテムと交換できるみたいです。
なお《一周年記念迷宮クリア者》の称号は、2周目以降のダンジョン探索時に《一周年記念コイン》入手率が上がるという期間限定の称号でした。
「ところでレイカちゃんは何を手に入れたの?」
「私? えっと称号と……《一周年記念ブレイド》と《一周年記念コイン》2枚、それに未鑑定アイテムの《忌避されし卵》……」
「へー……ってそれレアアイテムっぽい!どんなの見せてー!?」
「まあ良いけど、まだ未鑑定なんだから無茶な扱いしないでよ?」
「だいじょーぶだいじょーぶ!」
私はアイテムボックスから《忌避されし卵》を取り出し、ナナに手渡す。ナナは卵を撫ぜたりこすったりイロイロしていましたが、何の変化も起きない事を確認しガッカリした様子で返してきました。
「うーん、卵って言うからテイム関連のアイテムかと思ったけど私の生物鑑定には反応がなかったよ……残念」
「そう……それじゃあ他の職業の鑑定持ちにお願いしてみるわね」
ナナから卵を受け取りアイテムボックスへしまう。その際、卵が発光した気がしましたが、他の誰もが気付かなかったみたいですから気のせいですね。
ボス部屋から出るとエミリーから手厚い歓迎を受け、ボスの情報を根掘り葉掘り聞かれました。
今の所あの邪神王を倒せたのはアキラたちのギルドと私達だけなので、情報が少ないというのが理由。
「なるほど大体分かったよ。ありがとうねレイカさん。これが約束していた新作の装備よ」
そういって渡されたのは《極光騎士の鎧》と言う名の全身鎧。これはスミナに行くのがほぼ確定ね。と思いながらそれを受け取る。スミナもこの鎧を見て装備したそうにウズウズしていますがまだお預けです。
装備の受け取りを済ませた後は幾つかの《一周年記念》シリーズの装備の鋳潰しと加工のお願いをしておきました。エミリーは嬉しそうにそれらを受け取ると、すぐに作業に掛かるわと言い、ポータルから工房へと帰って行ました。
エミリーがいなくなってすぐ私達も自分たちのギルドホームへと帰還しました。
この後の予定をどうするか確かめた所、シヅキとスミナ、ソフィーの3人はダンジョン周回を繰り返して素材を集めるらしいです。
ウサミ、ルルカ、コノハの3人は3次職へ変更するべく神殿へ。
私とナナはレベルあげもかねてシヅキたちに付き合うことにしようとしましたが、シヅキたちから私達がいると難易度が下がるから別行動でお願いしますと拒否されました。
すっごくショックです!
「あはは、レイカちゃん。しょうがないから二人で潜ろう!そしてまたアレを見せてね!」
「もうやらないわ……あの程度のボスなら眷族を呼ぶ必要なんてなかったもの」
「そ、そんな!じ、じゃあもう一つのあっちの方を……」
「あぁ、あっちの方なら良いわよ。私もあっちの方がスッキリするしね」
「やった!レイカちゃんとの共同作業楽しみ~」
「ナナッたら大げさね」
こうして私達はイベントが終了するまでの2週間。それぞれ好きに行動しつつ楽しく過ごしました。
そして2年目の夏が始まる……。