1周年イベントと…… ⑭
拘束の状態異常にはならなかったけど私の帯術アーツでスタンの状態に陥った夢幻の邪神王は憎々しげに私を睨みつける。しかし状態異常になったとは言え夢幻の邪神王はボスモンスター。
普通のモンスターなら回復までに最低10秒は掛かるのが5秒も経たないうちに復活を果たし、忌々しい攻撃を仕掛けた私に向かって闇のブレスを吐きかける。
夢幻の邪神王の吐くブレスを避けつつ、コノハが調べてくれたデータのさらに詳細としてどの程度の時間、相手の動きを止められるのかを確かめていました。やっぱり効果時間などの詳細は把握しておきませんといざという時に大変な事になってしまいますからね。
それにボス部屋に入る前にエミリーさんからボスのデータを調べられるなら詳細開示よろしくねとおねがいされてますし。このお願いを聞けば新作の金属製防具を一つプレゼントしてくれるといってましたから頑張らないと。
……まあ私が使うものじゃないですけどギルドメンバーに使ってもらう装備としてストックしておくのも良いでしょう。とりあえずはコノハの集めた耐性データと各形態の攻撃パターンを見た限り教えておけば問題ないはずよね。
「レイカちゃーん。ボスの体力全然減ってないよ~?遊んでないで早くアレみせてよ~」
色々検証しているとナナからの野次が飛んできました。
もうっ!こっちは色々やらなくちゃならない事があるから検証しているって言うのに!
でも、シヅキたちも何か期待しているような視線を向けてくれてますし、次の手を切りとしましょうか。
「仕方ないわね、分かったわよ……【眷属召喚】!」
この【眷属召喚】は悪魔化に続く種族能力で文字通り、私に従うゲボk……部下を生み出すアビリティの一つで使用者ごとにその見た目が大きく変わるんです。
眷属召喚を使用した私の回りに魔法陣が4つ現れ赤・青・白・黒の光を放つ。そこから現れたのは……
「おぉぉっ!?」
「ふえっ!?」
「ふわわぁぁぁ!」
「おほーっ!」
「あふん……ブシュウッ!ドサッビクンビクンッ(←鼻血エフェクトを噴出し後ろに倒れ痙攣)」
魔法陣から現れた現れた眷属たちを見てナナを除くギルドメンバーたちの目が点になる。
それもそのはず、眷属として現れたのは私そっくりの悪魔達だからです。まあ色違いという見た目的な特徴は違いますけどね。
……若干一名ショックのあまり大変な事になってる気がしないでもないですけど、気にしないほうが良いですよね。
「ウヘヘ。レイカちゃんがいっぱい……やっぱりここは天国だよ~」
ナナの方はと言いますと、既に何度か見せているというのに目がハートになっているんですよね~。
私が眷属を召喚するたびにお持ち帰りしたい!とか言い出すからすごく困っているのよ。しかもですよ?そのお持ち帰りというのが物理的ではなくシステム的に行おうとするから性質が悪い。
その方法とはナナの相方であるシャナンをテイムした【調教】スキルの最上位である【ハイテイマー】のスキルを使用して奪うと言うこと。
一応システム的には私の眷属でありますがモンスター扱いでもあるので奪えなくもないんですよね……。
まあ眷属それぞれが特定の属性に特化していますし、強さも本体の私に準じてますから難しいはず。だからいつも私がナナに言う事はこの眷属を従えたいなら眷属たちに勝利して力を示してね、と。
その言葉を間に受けたナナのレベル上げなどの頑張りには目を見張るものがあります。そこまでして私そっくりの眷属が欲しいのかしら。
「さて、眷属たちを呼び出したことだし……さっさと終わらせてあげましょうか」
「いよーっ、待ってましたー!」
私の隣に並ぶ4人の眷属。その姿は圧巻 (たぶん)です。4人の眷属は既に攻撃に移れるよう私の指示を待っている。
「さあいくわよ」
眷属たちに指示を出すと共に私は飛び出す。それに続く眷属たち。
赤のレイカは火の属性を持ち炎を纏わせた剣で切り込んでいく前衛ナイト型、青のレイカは水の属性を持ち弓を装備して私や他の眷属たちのフォローを得意とする後衛型。
白のレイカは光属性を持ち回復魔法や支援魔法を得意とするプリースト型、黒のレイカは魔法の攻撃に特化しているウィザード型となっています。
他にも索敵を得意とする緑と防御に特化した黄色の眷属がいますけど、今現在私自身が緑を示す【業風の魔】の形態になっている為、反属性である黄色の2種の眷属の召喚はできません。
言ってしまえば私が通常モードだったら最高で6人の眷属を召喚できるというわけです。
私は敏捷に物を言わせた空からの帯による攻撃をおこない、他の眷属はそれに続く。
夢幻の邪神王は眷属たちに向かって攻撃を仕掛けていく。眷属たちの能力が高いとは言え、緑の属性と違って敏捷に特化しているわけではないので、飲み込みなどの攻撃を食らってしまいますが中の人が存在しないAIなので排出された後にショックを受けて行動不能になるということはありません。
行動が出来るようになったらすぐに攻撃に参戦していくので、夢幻の邪神王の体力がガリガリと減少の一途をたどる。連続した攻撃で大量の体力を削られた邪神王は特殊な状態異常【驚愕】になっていました。
【驚愕】というのは、思いもよらぬ連続攻撃を受けた際に稀に発生するだそうです。効果としてはスタン等と同じような停止系の異常ですけども、この驚愕を含めた特殊状態異常には耐性というものが存在しない為、かかったらそれなりに長い時間動きが止められてしまうそうです。
「(文字通り)レイカさんたち、強すぎます……」
「……もうこれってレイカ一人でどんなボスも倒せるんじゃないの?」
「ハァハァハァ……レイカ様ぁ……美しすぎですわ~」
「……」
夢幻の邪神王の残り体力が数ドットまで減り、後数回攻撃をすれば倒せるといった所で私は眷属たちを下げ距離を取る。そして戦いを見ていたシヅキたちギルドメンバーに言う。
「これが私の奥の手よ?刮目なさいっ!【儀式魔法陣】」
業風の魔の形態を解き未召喚だった緑と黄色の二人の眷属を召喚。眷属たちを六芒星を創るための所定の位置に待機させ、中心には私が立ち魔法を唱える。なお儀式魔法陣を使うにはレベルが50以上で同じ種族の仲間が4~6人必要な秘術です。
レベルと条件だけであれば満たすプレイヤーはたくさんいますが、いざ組んで冒険をしようとすると前衛が不足していたりウィザードやプリーストオンリーのメンバーになってしまい、近接されたらどうしようもなくなるという問題が多々起きている。しかも、メンバーのステータス次第で威力が増減するので数を合わせただけでは大した威力を発揮しないらしいです。
私の場合は眷属が私と同じレベルで召喚されていますし、能力値も私に準じています。さらに属性ごとに得意とする攻撃レンジが違っているので大抵のパターンに対応できるというわけです。
「これでトドメ!【儀式魔方陣・六星流星陣】」
驚愕の状態異常になっている邪神王はこの魔法をまともに受け、わずかに残っていた体力は全て消し飛ばされた。