正式サービス 1-6
次の日、起きると七実に連絡を取り待ち合わせの時間を決めてログインしました。
七実は昨日のログアウトを宿屋ではなく街というフィールド内で行ったのでログイン時の開始位置は女神像前なのです。
「レイカちゃん。お待たせ~。今日も夕方から用事あるけどそれまでは一緒に遊べるよ」
「そうなの?それなら今日は素材集めしたいんだけど良い?」
「もっちのろーんだよっ!私が麗華ちゃんのお願いを聞かない事なんて年に数回もないんだよ!」
「そりゃ私だって七……じゃなかった。ナナの都合を考えて言ってるつもりなんだから」
「レイカちゃんの気遣いが心に染み渡るよ~これで今年一年は学校で頑張れる!」
「へ、へぇ~?ナナは扱いやすいのね」
「私をほいほい扱って良いのはレイカちゃんだけだからね?」
「はいはい。ありがとう」
「ぜんぜん感謝の気持ちが通じてこないよ……」
私とナナの二人はそんな会話をしながら、始まりの街の外周部にあるショップを歩いている。此処に来た理由はナナの見習い薙刀を1ランク上の強い武器に変更する為です。お金は昨日二人で狩をして倒したモンスターの素材を売って得たお金からだしています。
私が昨日ソロで稼いだ手持ちをだせば2ランク上の武器も買えるのですがそれはナナに遠慮されてしまいました。あくまでもナナは自分か自分達で稼いだ分の範囲でしか武器を買うつもりはないようです。
「今日は普通のウルフじゃなくて砂丘ウルフ狩に行こっか」
「普通のウルフと何か違うの?」
「そうね。基本の行動パターンは同じだけどウルフより攻撃力が高くて素早くなってるって話だよ」
「昨日、普通のウルフでも大変だったのに大丈夫かなぁ?」
「きっと大丈夫。私が新しい魔法見せてあげるから」
「わかった。レイカちゃんの言う事だから信じる!」
ナナは私の言う事を何でも聞いているように見えるかもしれませんけど、いつもそういうわけではないですよ。ちゃんとナナはナナ自身の価値観の元に行動していますので。
始まりの街から西門を出てゲームない時間で移動する事1時間。目的のフィールド《砂食みの砂丘》(以後砂丘と表記します)に到着しました。この砂丘には砂丘ウルフをはじめアルジゴク(砂の中に潜むアルマジロみたいなやつ)サンドスライムというモンスターもいるのですよ!?
始まって2日なのにフィールド情報に詳しすぎると思いますよね?実際詳しいのですから仕方ありません!……すみません嘘をつきました。この情報は昨日ここでレベル上げをしていたというミヤさんから聞いたのです。ミヤさんは初期スキルに水魔法を入れているのでこの辺で狩をするのが効率が良かったそうです。
「ナナ、此処のモンスターのサンドスライムとアルジゴク、砂食みの砂丘の主とか言うサンドワームがきたら逃げるよ?サンドワーム以外なら倒せなくはないんだけど私の魔法だと数を撃つ必要があるから魔力がカツカツになるのよ」
「分かった!じゃあとりあえず狼らしい気配を探すね!」
ナナのもつ特性・第六感と索敵スキルを組み合わせた結果、ナナは範囲は広くないがある程度種類を特定した索敵ができるようになっている。
そのおかげですぐ近くにモンスターが出たりしない限りはある程度早めに敵の内容が分かり逃げ道を探す事ができました。
砂丘を探索し始めてから15分ようやくナナが砂丘ウルフと思われる群れを発見……というか感知しました。その場に行くと砂丘ウルフがいることには変わりなかったのですが砂丘ウルフだけがいるわけではありませんでした。
「レイカちゃん。どうしよう?」
「えっと~死ぬかも知れないけど見つかった以上戦わないと……」
「えぇー、レイカちゃんの魔法は~?」
「新しいのは回復魔法だからこれらを倒すのは無理かなぁ~」
「がびーん!!」
「ちょっとナナ、流石にそれは古いわよ」
ナナが発見した砂丘ウルフの群れにはデザートウルフという特殊個体が混じっていたのです。β時代ではこのような特殊個体はいなかったので、情報にもありませんでしたし昨日この周辺で狩をしたというミヤたちもこのデザートウルフには会っていないはずです。
「グルルルル」
デザートウルフが唸り声を上げると、群れの中の砂丘ウルフ数体が私達に向かって襲い掛かってきました。
「ナナ!悪いけど砂丘ウルフの相手はお願いできる?本命と戦うまでは魔力温存していきたいからできるだけ攻撃も避けてくれると嬉しいわ」
「れ、レイカちゃ~ん。それは無茶振りすぎるよぉ~」
そう言いながらも新しく買った薙刀で一振りするごとに2~3体の砂丘ウルフにダメージを与えているナナは流石ですよね。薙刀という武器の特徴は長い事と攻撃位置によって威力が変わる事があげられます。
長いという事はそれだけ遠くの敵に攻撃が当たる可能性があるということ。ですがその代わり近寄られると小回りが利きにくいという弱点もあるわけです。これが二つ目の攻撃位置云々にも繋がりますね。
「ウィンドヒール!」
「レイカちゃんありがとう!」
「回復量はそこまで多くないんだから無理はしないようにね」
「はーい。でもこの砂丘って言う足場で連続戦闘してるおかげで砂丘での戦いのコツが大体掴めてきたかも!」
「ナナッ!避けてね! ウィンドカッター!」
「え!ちょっとレイカちゃ……う、後ろに来てたの気づかなかった……さすが私のレイカちゃん!」
「ちゃんと注意しておいてね?さてもうすぐ砂丘ウルフも品切れかな?後、いつのまに私はナナのものになったのかな?」
「……あとはデザートウルフの左右にいる砂丘ウルフ2体とボスの合計3体だけだよ」
「……自分で振っといてスルーするのね?はぁ、とにかくボスだけにするわ。ボスが来たら対処願いね」
「がんばる」
私はウィンドカッターを詠唱し取り巻きの砂丘ウルフ(左)に当てると直撃した砂丘ウルフ(左)は倒す事ができましたが、(右)の方が体力最大の状態で襲い掛かるタイミングを計っているようです。
「そっちがそうなら……私はこれよ!ウィンドボール!ウィドカッター!」
ウィンドボールによる攻撃をジャンプしてかわした砂丘ウルフだったがその次に飛んできたウィンドカッターに斬られ消滅した。
「後はデザートウルフだけだけど……」
「ウオォォォーン!」
砂丘ウルフを倒し終えデザートウルフに向き直った私達ですが、デザートウルフが声を上げると砂丘ウルフがまた数体現れてしまいました。
「えぇ!?仲間呼んだよ!?やっと倒し終えたって言うのに~!」
「……ナナ。これは本格的に厳しいかも。私の魔力が少ないのに数が増えちゃどうしようもないわ。自然回復量はスキルがあっても戦闘中には頼れないもの」
「だよね。できる限り頑張るけど負けても怒らないでね」
数分後、私達二人は砂丘ウルフの波状攻撃とデザートウルフの攻撃でやられてしまい、気づけば始まりの街の女神像前にいました。
「負けたわね……デスペナルティでゲーム内で2時間ステータス半減かぁ。アイテムボックスの方も素材が大分なくなってしまったわね」
「レイカちゃん。今更だけど二人で戦う事に無理があったんじゃ?」
「そうね。分かってはいるけど……ナナは長い付き合いなんだから私の性格くらい分かっているでしょう?」
「うん。分かってるよ。一応言ってみただけ~。次戦う時に負けないようにするには私達が強くなってればいいだけの話だけだよね」
「そうと決まれば強いモンスターの狩場じゃなくて安全な狩場で力をつけましょうか」
「さーんせーい」
2時間経過しデスペナルティがなくなった後私達は昨日二人で狩をした《始まりの森》に来ました。
この森の中にはウルフ・ゴブリン・オーク・ヴァイパーなどがいるという情報をこの2時間の間に入手しました。この中のウルフとゴブリンに関しては余裕で倒せますので今回はオークもしくはヴァイパーを狙っていこうと思います。
ソロでオークはまだきつそうですが、二人でなら戦えるはずなので。ヴァイパーとはヘビのモンスターで毒攻撃を仕掛けてくるそうです。
「ブッヒィン!」
「甘いよ!」
オークが武器を振り回し攻撃をしてきますがナナは武器相手の受け流しは稽古で習っていた為、危なげなく流していました。
「ナナだったら一人でオーク倒せるんじゃないの?」
「うーん。倒せるかもしれないけど凄く時間かかると思う。私って武器の特徴的に攻撃力高くないもん。あくまでも薙刀は多対一で攻撃よりも防御に念頭をおかれた武器なんだよ?」
「へぇ~。ナナがオークの攻撃を流してくれてるから私は安心して魔法を打ち込めるから楽でいいんだけどね」
「二人の共同作業だもんね」
「もう、ナナったら誤解を招くいい方しないでくれる?」
オークの攻撃方法は武器を振りかぶり振り落とす・がむしゃらに振り回す。の2パターンだけです。ただし私の場合この攻撃どちらを食らっても体力的な問題で死ぬかもしれません。そういう意味ではナナがいてくれて本当に助かっています。
もちろんできるだけ速いうちにソロでオーク狩りができるようになりたいとは思っていますよ?
「ブヒィー!」
私の放った4度目のウィンドカッターでようやくオークを倒す事ができました。ドロップアイテムは豚の牙。今回は豚肉でないのかな?
「オークは体力が高いモンスターだから倒すのに時間かかっちゃうね」
「えぇ。でもその分経験値の類も多めにもらえるわね。そういえばナナ、ステータスの割り振りしてるんでしょうね?朝からあまり動き変わってないみたいだけど?」
「え?割り振り?してないよ?」
「……もしかして砂丘行く前にもステータスの割り振りしてなかったの?」
「してなかった……」
「ナナ……はたいてもいいかしら?」
「や、ヤダ」
オークを倒した時点で私達のベースレベルはレイカが10、ナナは8となっています。よってナナのステータスポイント割り振り可能数は7ポイントあるということ。7ポイントあれば腕力に振っていれば攻撃力の上昇が半端なかったでしょうし、体格に振っていれば砂丘ウルフたちの攻撃にも耐えれたかもしれません。……いまさら何を言っても後の祭りですけどね?
名前 ナナ
種族 亜人族獣
職業 ファイターLV6
スキル 【薙刀5/30】・【腕力強化5/50】・【ステップ4/30】・【索敵6/50】・【採掘1/30】
特性 第六感
ステータス 体力8 魔力3 腕力9 体格5 賢さ2 敏捷6 運5
今あげたのが朝砂丘へ行く前のナナのステータスです。
名前 ナナ
種族 亜人族獣
職業 ファイターLV8
スキル 【薙刀7/30】・【腕力強化6/50】・【ステップ6/30】・【索敵10/50】・【採掘1/30】
特性 第六感
ステータス 体力10(+2) 魔力3 腕力10(+1) 体格7(+2) 賢さ2 敏捷8(+2) 運5
ステータスポイント残り0
スキルポイント残り1
となりました。ナナには、この上昇した後のステータスでオークと戦ってもらいましたが、先ほどと違い動きのキレが目に見えてよくなっており攻撃を受け流す必要がない為、あっさり倒してしまいました。
攻撃力自体は30回切り払う必要があるのが27~8回に減った位の感覚でしょう。
「あ!ヴァイパー見つけた!」
「近寄る前に魔法で一撃当てるわ。少し待って」
ナナが発見したヴァイパーを確認した私がウィンドカッターを詠唱し放つと見事にヴァイパーに当たり半分近くのダメージを与える事ができました。
「おぉ~?後は私に任せて~」
残り体力の少なくなったヴァイパーを攻撃し倒す事に成功しました。ヴァイパーからのドロップアイテムは蛇の皮と毒の牙。皮は鑑定の結果裁縫で使えるのが分かったので数を集めたい所です。
お昼をはさみ、ナナが出かける夕方まで森でオークやヴァイパーを狩り続けた結果それなりに蛇の皮を集められました。
「ナナ。今から生産作業に入るから明日にはたぶん防具の一つか二つはできると思う。装備を整えたらもう一度砂丘に行かない?」
「いいよ~。ベースレベルも大分上がったしあのデザートウルフにリベンジマッチだね!」
「そうよ。ステータスも高くなったし、朝のように負けたりはしないはず」
「それじゃあまた明日ねー。お疲れ様レイカちゃん」
「うんナナもお疲れ様。習い事頑張ってね?」
「うぅ、私の用事が習い事ってバレてる……」
その後、ナナと別れた私は宣言どおり生産作業に入るため施設に入っていき、色々作ることになるのです。
名前 レイカ
種族 魔族
職業 マジシャンLV12
スキル 【裁縫10/30】・【採取16/30】・【風魔法13/30】・【精神統一11/50】・【魔法運用の知識10/50】
特性 闇の加護・古き英雄の記憶
ステータス 体力3 魔力13 腕力1 体格3 賢さ12 敏捷10 運5
ステータスポイント 残り 0
スキルポイント 残り 4
風魔法;ウィンドボール・ウィンドカッター・ウィンドヒール
裁縫:糸作成・鑑定・飾り縫い
採取:採取ポイント発見・採取個数アップ・レア発見率+2%
精神統一:魔力自然回復量上昇(小)
魔法運用の知識:魔法攻撃力上昇(小)




