1周年イベントと…… ⑪
本体の支援を担当する夢幻の邪神王の左手を破壊する事に成功した私とルルカの二人は、攻撃魔法が強力な右手担当をしているシヅキ達の方へ遠・近の両攻撃も出来てしまう私が、頭担当をしている近距離構成のナナ達の方へ後方から高火力魔法を放てるルルカがそれぞれ援護に向かう事になりました。
「レイカさん!左手をもう倒したんですか!?」
「えぇ、ちょっとしつこかったけど倒せたからこっちの援護に来たのよ。で、状況は?」
「右手の魔法を誘発させて魔力枯渇を狙っているんですけど、まだまだって所ですね」
あー、ボスの魔力枯渇を狙うとか大変よね。最初の方のフィールドのボスとかなら十分それで対処できるけど、コイツ相手にはそれは悪手じゃないかな?と思う。
「そんな面倒な事しなくてもシヅキとコノハなら魔法を掻い潜ってダメージを与えられるんじゃないの?」
「コノハくらいの速度があればそれも可能なんですけど、私の敏捷値が足を引っ張ってしまいまして」
「なるほどね」
シヅキは腕力と体格はそれなりにあるけど右手が敏捷が足りない、コノハは敏捷があっても腕力が足りてないから思ったよりダメージを与えられないのね。
ソフィーからの支援があってもそこは埋められないのなら私がフォローするのはそこかしら。
「シヅキとコノハは右手の攻撃魔法を何度まで受けられるか教えてもらえる?」
「え?私ならそうですね……4度までは大丈夫かと。コノハは2度食らえばやられますね」
「なるほど、大体状況は理解したわ……それなら」
私はソフィーにバフによる支援だけを頼み、基本は頭担当の回復に徹してもらうことにしました。
私がいるのにソフィーがこっちの回復まで担当してしまうと、いざ夢幻の邪神王の頭に全力投球するときに魔力が足りなくなりますからね。頭戦では試したいスキルがあるので前衛として突っ込みたいですし。
「シヅキはダメージを気にせずゴリ押しで突っ込んで。コノハは一撃を食らったら私の回復魔法の範囲まで下がってちょうだい」
「はい」
「わかりました!レイカさん」
こうして私が右手組の専属ヒーラーになったことで、瀕死の重傷となってもすぐに全回復されるので攻撃が出来る頻度が多くなり、右手を追い詰めていった。
夢幻の邪神王の右手も体力が減るに連れて今までよりも威力の高まった魔法を発動させてきましたが、こちらのメンツを一撃で倒すには至らず、体力が赤ゲージになってから数分後に倒すことに成功しました。
さあ、あとは本体だけね。急いで援護に向かわないと!
☆☆☆☆☆☆ ナナ視点 ☆☆☆☆☆☆
一方頭を担当する私達の方に合流したルルカは、あははと笑いながらトリガーハッピーの状態の如く魔法を撃ちまくっていた。
スミナのヘイト管理と竜人化した私の物理の連続攻撃により、ルルカの方にヘイトが向く事がなかったからである。
「ルルさん、あんなに笑ってすっごい幸せそうだね~」
「そうですね……最近は大魔法を撃つとすぐにヘイトが集まる鉱山ばっかりだったから、きっと今みたいに好き勝手に撃てなかったんですね。いくら大魔法を撃ってもヘイトが向かないこの状況で何かがふっ切れたんだと思います」
「あはは。そうかも。私やレイカちゃんもペアで狩りに行くと交互であーいう風になるもん」
「えっ?あのレイカさんがあんなふうに笑いながら魔法を放つと?」
「もちろん!レイカちゃんがギルド狩りの時に見せてる行動なんて全然無茶なんかじゃないよ。ペアで狩りに行くと敵寄せのお香は必ず使用する為、敵の数には困らないからストレス発散にはちょうど良いんだよ」
「す、ストレス発散……ですか」
「ま~、レイカちゃんにもいろいろあるからね。ゲームでくらいハッちゃけていってもらわないと」
「そうですね」
夢幻の邪神王の本体である頭部を相手にしながらもこう言った会話を重ねる私達。たぶんあれかな。左手の支援がないから、思ったより強く感じないのかもね。
ほんとレイカちゃんが先に左手を倒してくれてありがたいよ。さすが私 (だけ)のレイカちゃんだよね!
頭部の行ってくる攻撃はブレスと多種多様な攻撃魔法、そして頭を移動させて押しつぶし目的の物理攻撃。たまに舌をだして飲み込み攻撃をしてくるけど、一撃では殺されないので安心。
まあスミナが盾のためよく飲み込まれるんだけど、最初見たときは驚いたよ。飲み込まれた後吐き出されるのかと思いきや、なんと頭部の後ろから排出されるんだよね。ちなみにお○の穴みたいなものは見受けられないから不思議な現象の一つです。排出されたスミナがなんとも言えない顔をしていたのが笑えました。
あと飲み込み攻撃をしてきたあとは頭部の傷が回復しているっぽいので回復的行動なんだろうけど、そこまで回復力は高くないね。
スミナもしくは私が飲み込まれ、排出された後はヘイトがリセットされるので注意が必要かな。
とくに今はルルさんも攻撃に参加してるから、この事はちゃんと教えてあげないとトラウマになっちゃうかもしれないしね。
結局注意はしたにも関わらず、トリガーハッピーなルルさんは飲み込まれ後ろから排出されたんだ。
その時の愕然としたようなもうすぐ泣きだしそうなルルさんの表情は私とスミナのSSに保存される事になったのは秘密だよ。
そうこうしている内にレイカちゃんたちが右手を倒したというログが流れ、数分後に合流。
支援担当と攻撃魔法担当を倒された夢幻の邪神王へ、ここから私達の猛反撃が始まる。