1周年イベントと…… ⑧
異界迷宮30層の扉の先にいたのは、体長2メートル程の黒づくめの人型のモンスター。その名も《夢喰の邪神》。
夢喰の邪神は入ってきた私達を見て雄叫びの様な奇声を上げました。うん、まあサイクロプスとかダイダラボッチとかで分かってたけど会話なんてないですよね……やっぱ。
というかむしろ、あの悪魔フォラスのように会話が成立する方が珍しいんですよね。
「うっわぁ……ここでコイツ出してくるとか神官GMは、私のトラウマえぐろうとして来てるな~。今度文句言ってやるんだから」
そんなことを思ってる中、夢喰の邪神を見たナナは少し顔を引きつらせながらそう呟いた。
「知ってるモンスターなのかしら?」
「うん。とはいっても何もかも同じという訳じゃないと思うけど、見覚えがあるモンスターだよ。
詳しい事は皆がいる手前言えないんだけど、オリジナルはものすごく強かったんだよね~。主にラスボス的な意味で……」
「へぇ?まあその辺の事情は良いわ。そういう事ならナナはそのオリジナルとの違いを見極めるのに専念して、他のメンバーに行動指示を出してちょうだい」
「了解だよ!任せといて!」
「SYASYAAA--!!」
夢喰の邪神は闇で構成された槍を手に持ち、私達を屠るべく襲い掛かってきました。
「!?ボスが襲ってくるわ。敵の攻撃力がどのくらいなのか分からないからスミナ以外は、可能な限り相手の攻撃は避けるようにするのよ!分かったわね?」
「は、はい!」
私達のギルドの中で、体格とスキルボーナスを含めると一番防御力が高いスミナなら一度攻撃を食らえば、他のメンバーがどの位ダメージを受けるか判断が付きやすい。
いつも強敵と戦う時って、壁役のスミナが凄い役に立ってくれるんです。
その役目を私が強制したわけではなく、本人たっての希望ですから勘違いしないでくださいよ?
ナナも受身系最終スキルである【反射受身】を持ってはいるものの、装備やら他のスキルの補正値を含めるとスミナには遠く及ばない。
ナナと私の二人で狩りに行く時は、ナナにお任せしてるけど、それは私がナナの体力値を熟知しているからできることで、スミナやらコノハたち他のメンバーのステータスなどは聞いたことがありませんからね。
一応他プレイヤーのステータスを知る事はマナー違反に当たりますからね。
とは言え、持っているスキルから、ステータスを導き出すのは難しくないんですけどね。
「FUSYAAAAーーー!」
「盾技【鋼帝の大盾】!」
夢喰の邪神の黒槍を被ダメージを1/10に減らす技を使用して防ぐスミナ。急いで被ダメージを確認すると大変な事に気づいてしまいました。
「予想より少ないわね。これならザーバンエリアのエリアボスの方が強いんじゃないかしら?」
「そうだね~。私の記憶にあるオリジナルよりは弱いみたいでよかったよ。オリジナルも槍とか斧とか使ってきたんだけど、一撃の破壊力が凄かったからね~」
「まあ初手しか見てないからどうともいえないけど、この程度なら普通に倒せそうね」
「うんうん。じゃあ私も戦闘に参加……したいけど、先に邪神の中距離と遠距離の攻撃方法まで見てからにするね」
「そうね。……と言う事で皆聞いたわね?当初考えていた物よりは手応えが無さそうだけど油断することなく、最後まできっちり倒しきる事!……いいわね?」
「任せてください。ナナさんが情報を纏めてる間に片付けるくらいの気持ちで行きますから」
夢喰の邪神は槍を正面に構えての突進技【チャージ】やら足元から対象を打ち上げ、空中に浮かされ無防備な間に攻撃を加える【穿空破】等を多用してくる事がわかりました。
そして扱う武器も夢喰の邪神の体力が25%削れるごとに変化し、槍の次からは本気を出すと言わんばかりに魔法に加え大剣、斧、刀と変化していきました。
最後の刀を使ってくる段階では【無月散水】と言うガード崩しから斬りこみなど連撃につなげる極悪な技まで使用してきた事にはすごく焦りました。
この技を最初に食らったスミナの体力を一撃目のガード崩しが入った瞬間に回復していなかったら間違いなく体力を全て削られていたでしょうからね。スミナが倒れた場合、多分私達も立て直すことが出来ず蹂躙されていたでしょう。
夢喰の邪神が魔法やら斧を使用してきた辺りからナナが戦闘に参加したおかげで、攻撃面では苦労する事はありませんでした。私自身もナナと連れ立って前線に移動し、スキル【裁縫闘士】で習得した技【貼衝御綿】を使って、スコルナの邪神の動きを少しだけ阻害し、ナナやらシヅキたちの高火力物理攻撃を成功させるべくサポートする事が出来ました。
ちなみにこの戦いでは、ボス戦では回復アイテムによるサポートをしていたウサミが戦闘不能になりました。ですが、この部屋の前のミルフィーさんの露店で購入したお高い復活薬のおかげでデスペナは受けましたが死に戻りは免れることができました。おかげでウサミの持っていたレア素材も無事でした。
ルルカは最初から攻撃魔法に専念し、ソフィーさんはプリーストらしく回復を担当。
コノハは私と同じく遊撃と言う立場で戦場を移動し、蝶のように舞い蜂のように刺す(斬る)!と言った事をそのままの意味どおり行っていました。
「レイカちゃん!トドメのアレいっくよ~!」
「アレ……?」
「人形遣いの号令系のあの技だよ~」
「!?あぁ、アレね!分かったわ」
ナナの言うアレとは【人形遣い】のスキルレベルアップ時に覚えた技で、その戦闘中に呼び出した残っている・いないに関わらず人形の数に応じて攻撃の威力が変わる【人形暴走】の事でした。
この戦闘中に呼び出したのは飛龍型やら猛獣型の人形を合計8体。そのどれもが攻撃の余波から後衛メンバーを守り、身代わりとなって夢喰の邪神に屠られていきました。
「人形達がやられた恨みは晴らしておかないとね。【人形暴走】!」
「続けて私も行くよ!【竜人化】!そしてぇぇ、力を籠めた回転突きぃ」
人形暴走により再び現れた人形たちは一時的に無敵状態となり、夢喰の邪神に向かっていく。
敵が無敵とは知らない夢喰の邪神は持っていた刀で襲ってくる人形たちを切り伏せようとしたが、その刀身は悉く空を切る。
人形達は与えられた使命を果たすべく夢喰の邪神に渾身の体当たりを行い、その巨体を物理法則を無視して吹き飛ばす。
羽根や飛行に関するスキルを持たない夢喰の邪神に素早く追いついたナナは、自分が修得した最も力の籠もる体勢で渾身の突きを放った。
その一撃により夢喰の邪神はその体力を全て削り取られ粒子となり霧散していく。
「か、勝った?」
「勝ちましたね!」
その様子を間近で見ていたスミナとシヅキは嬉しそうに声を上げました。しかし止めを刺した本人は浮かない表情。それが気になった私は詳しい話を聞く為、ナナがいる方向に足を向けたその時。
「レイカちゃん、それに皆。まだ終わってない!!」
「えっ!?」
「そ、そんな!?確かに消えてたのに!」
ボスが粒子と化した場所に再び、粒子が集まりその体を再構築していく。そこに現れたのは先程の人型と違い、獣のような姿をしていた。
すみません。同じく更新をしている《うみマニアのやりこみ冒険記》でも書いたんですが、暫く(具体的には12月の24日くらいまで)更新が止まるかもしれません。
理由としては仕事が繁忙期に入り、平日に少しずつ書いていくと言う作業ができない為。
土日に書こうにも、テンションが上がらず筆が進まないし……。
エタらないように頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。