1周年イベントと…… ⑦
平日の投稿が難しいので暫く土日の両方、もしくはどちらかに投稿の形になります。
ここまで来れる高レベルプレイヤーは、そこまで多くないはずなのに30層のセーフティエリアには3人の生産トッププレイヤーが露店を開いていました。
一人はまあ知ってる人だから良いとして……残りの二人は生産受注掲示板でもよく指名依頼されているので名前だけは見たことがありました。
……私が作る装備の注文?そんなものはなかったですよ?だってその生産受注掲示板の存在に気づいたのはつい先日の事だもの。で、その受注掲示板についてはシヅキから聞いたことです。
私がスキルあげをしている時に工房に入ってきて「生産依頼品の作成をしているんですか?」等と聞かれ、頭に《?》マークを浮かべた様子を見たシヅキに「あれっ?もしかして知りませんでした?」と説明を受けたことから。
生産受注掲示板は大学の受験勉強をしている頃に、生産プレイヤーが協力して立ち上げた専門サイト。
当然、立ち上げ時の初期メンバーには今この場に居る3名全員が入っていたりします。
初期メンバーは次の5名。
主にウォリアーやナイトが使う物理武具を扱う【武器鍛冶】のグラント。
魔法使い・プリースト用の武器やアクセサリを扱う【魔装具】のケミクリー。
客を選り好みするが腕前は一級品……知り合い兼変な人【防具鍛冶】のエミリー。
その手から作り出される攻撃・回復などの使用アイテムは見た目は不気味、しかし効果は非常に高いと言われ恐れられている【錬金術】のミルフィー。
そして彼らの使用する素材獲得を一手に請ける総合生産ギルド《森羅万象》のギルドマスター【調達師】のビアンカ。
「よっほー、レイカさん」
「こんばんは、エミリーさん。こんなところに来てまで露店開いてるんですね」
「いやー、私は工房に篭っておきたかったんだけど、こっちの二人に誘われてねぇ」
「はぁ、そうなんですね……それでこちらのお二人はどういった方なんですか?」
「歩く大量破壊兵器ミルフィーと、打算と色気で他人を誑かす腹黒女ビアンカだよ」
「お待ちなさい!エミリー。何よその説明はッ!私がいつ誰を誑し込んだですって?」
「エミリーはん!ウチがいつ大量破壊兵器になったんよ~?」
ひどい紹介の仕方だったので、流石に本人達から「待った」がかかりましたね。もしこれで反応を示さなかったら私がツッコんでしまう所でした。
無駄に七実とお笑いグランプリの番組を見てた訳じゃないのよ?
「ウチは破壊するだけや無い。ちゃんと回復もしたってるやんかー。……有料で!」
「私はただお金を持っていそうな女慣れしていないプレイヤーに、しな垂れかかって高そうなアイテムを安く譲ってもらってるだけなのよ~?その後は一手間加えて売ってるだけなのっ!アフターフォローもしてるわよ?ちょっーとだけ良い思いをさせてあげてね。フフッ」
……あぁ、やっぱりエミリーさんの知り合いだけあって十分変な人達でした。
二人とも見れば見るほど美人さんなのにどうしてこんなに残念なのかしら。
「……レイカさんも同類なんだけどね……」
「えっ?」
「なんでもないわ……気にしないで」
エミリーさんが何か言っていましたが何を言っていたのかまでは聞き取れませんでした。
でもなんか、彼女達同じような扱い(どこかおかしい人認定)をされた気がします。もしそうだとしたら断固として、私の意見を示す為、徹底的に戦いたいと思います!
こうして知り合った生産トッププレイヤーであるミルフィーとビアンカにギルドメンバーたちの紹介を済ませ、出会えた縁という事でフレンド登録もしておきました。特にミルフィーさんはフレンド登録するとなったときに目が光ったような気がしました。気のせいだと思いますけどね。
その後は改めて彼女たちの露店の商品を見せてもらいました。
並んでいたのは、ミルフィーの露店には各種属性ダメージのついた攻撃アイテムやら体力・魔力をそれぞれ最大値の70%も回復する回復剤などを扱っていました。勿論後者のお値段は高かった……。
続けてビアンカの露店には、この異界迷宮で採れる凄くレアリティの高い素材を始めとして、見たことの無い植物素材やらオリジナリティ溢れる料理などを扱っていました。本来は生産ギルド本部での売買なので品数は少ないらしいです。
エミリーさんの露店は……まあスミナが見ていた凄い性能の鎧やら、明らかにダンジョンでは売れないでしょうって言う値段をつけているレアリティ10の武器が何点か。ちなみにレアリティ10の製品は私も作ったことがないです。品質の評価とはまた別ですね。
あとこれらの武器に関してはここに来ていない他のトッププレイヤーからの委託商品だそうですよ。
トッププレイヤーとも言われるようになると、凄いものが作れるんですねぇ…と素直に感心した私と、これより凄い装備品を必ず作り上げてみせる!と意気込む私がいました。
「レイカはん達はこのままボスに行きはるん?」
「えぇ、その予定できているわ。と言ってもボスの事が分からないので下見も兼ねて来てますけどね」
「さいですか~。ほな、もしボスドロップでいらない素材でたら買取するからいつでも声かけてな~」
「その時はお願いしますね」
全員が改めて持ち物を確認し補充をしてエミリー達に別れを告げ、いざ出発とばかりにボス部屋に向かう。
「レイカちゃん。この奥から凄く嫌な気配がするから気をつけてね」
「そうなの……?皆聞いたわね?ナナのこう言う予感は結構当たることが多いから注意して頂戴!」
「「わかりました!」」
「それじゃあ……いきましょう」
予感も何も獣人の特性なんだけど、こう言うのってノリが大事ですからね。
まあ少々ナナの顔がまじめな感じだったので、気をつけるくらいはしておきましょうか。