1周年イベントと…… ④
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次話。24日に予約投稿済み。
「私は良いけど麗華ちゃんはダメだと思いますっ!」
ギルドメンバー交流会を無事に終えた数日後、私と七実は三枝社長に呼び出され雑誌社に赴きました。
その内容とは、当然ながら新しい仕事に関する事。季節も夏という事で、地元から少し足を伸ばした所にある海浜公園やビーチで決められたお題に関してインタビューしていくというものです。
その説明を受けて真っ先に反応したのが七実でした。
「……どうしてか説明してもらえるかい?」
「麗華ちゃんが海にきたら大変な事になるからです!」
「参考までにどういう意味で大変なんだい?」
「はぁ……社長さんの目は節穴なのかな?麗華ちゃんが水着を着て海に出たらどうなるか位、そこらの子供でも分かると思いますっ!」
「そこらの子供でもというのはどうかと思うが……なるほど、紡木さんは大勢の人に鏡さんの水着姿を見せたくないという事かね?」
「勿論ですっ!」
「……だそうだが鏡さんとしてはどうなんだい?」
「え?私は全然構わないですよ?七実は心配しすぎなだけですので、気にしないで良いかと思います」
「えぇっ!?だ、ダメだよ麗華ちゃん!水着なんか着たら絶対に目立っちゃうからぁぁ!」
まさかの裏切り!?というような顔でギャーギャー言っている七実は放っておき、私は社長と話を進める。
撮影は急だけど今週の末に行い、カメラマンは当然葉子さんが担当する。しかし、今回は三条さんが様子を見に来るという事で気を抜けない撮影になりそうです。
あっ、三条さんは以前顔合わせしたディレクターで30代のイケメンさんです。
と、話がそれました……。
場所は先も言った通り、地元から程近い場所にあるビーチで水着持参との事。
新しい水着を購入するなら経費で落としてくれるらしいので、ちょっと高いの買ってみようかしら?水着の種類は問わないらしいけど、地味過ぎるのはやめて欲しいと言ってましたから。
あと現地へは寺田さんと言うおじさんハイヤーが送ってくれるらしいけど、個人的に近寄りたくないので七実と一緒に電車で現地に向かう事にしています。
やっぱり初対面での第一印象って後々響きますよね。学校でもバイトでも……。
拘束時間は丸一日とのことでした。集合は朝日が出る時間帯だし、上がりは夕日が沈む時間帯になるみたい。うーん、帰りの時間を考えるとDCOをプレイできないかも。イベント中なのになー。
エトランゼの方のシフト調整をしてもらわないといけないから、代わりに何処かで入っておかないと、お給料が減っちゃいますからね。
「くっ、こうなったら仕方ない。麗華ちゃんを可能な限り目立たない様な水着を買いに行くしかないよねっ!」
「……撮影する側としては目立って欲しいんだがね?」
「……となると麗華ちゃんに似合う水着は体のラインを隠せるような感じのを……あっダメだ。あれだと麗華ちゃんの胸が揺れすぎて逆に目立っちゃう……ならあのメーカーのだったら……ブツブツブツ…」
「聞いちゃいないね……」
「えっと……七実にはあとでちゃんと説明しておきます」
「そうしてくれると助かる」
水着について考えている七実の頭を軽くひっぱたき、正気に戻しアパートへ帰宅する。
七実はアパートに着くなり「大事な会議があるから先に部屋に帰るね!」と自室へ戻っていきました。
「他人の水着の事でよくもまあ、あそこまで必死になれるわね~」
その日はDCOにログインして先日使用したお香の補充と、ステータスアップやら属性耐性、属性付与などの効果を持つ香玉を作りヒラメキとエミリーさんに納品してログアウトしました。
その際、ヒラメキからは異界迷宮24層辺りで採れる《黒翼宝石》の採掘護衛を頼まれ、エミリーさんからは、異界迷宮27層で採れる《銀熱魔晶》の採掘護衛を頼まれました。
このあたりの依頼に関しては、ナナと相談し二人で請ける予定です。シヅキ達はまだ50レベルなってないもんね。私達以外のプレイヤーは50レベルになったら3次職になれるから、ダンジョンに潜ってくれるか微妙だし。
翌日の午前中、目の下に隈を作った七実に誘われるまま近くにあるショッピングモールへ。
今日の目的は撮影に使う水着を見に来る事。詳しく聞いてみたところ、七実の立ち上げたサイト内で私に似合う水着アンケートをとったらしい。
そしてその集計を出し、インターネットやらでモノを映像確認したみたいですが、七実的にはイマイチだったみたい。
それならば実際に水着売り場に私を連れて行って着せて見た方が良いと判断して今に至る……。
「うーん。このビキニだとフリルをつけてても、胸の膨らみが目立っちゃうし~。というか麗華ちゃんにフリルが似合わない!……となると、やっぱりこれだねっ!」
七実が出したのは全身タイツ……ではなくフィットネスタイプの水着でサーファーの女性が着ているようなヤツでした。けどこれでは胸が締め付けられてきつかったんだよね……。
その事を七実に言うと、大丈夫!と言って私の写真を一枚撮り、どこかへ電話をかけていました。そこで一言二言追加注文をしてから電話を切っていた。
「明後日には麗華ちゃんに合うように調整されたのが届くから安心して良いよ!」
どうやら、私はあのフィットネスタイプを着用する事が決まってしまったようです。おかしいな……私はあれが欲しいなんて一言も言ってないのに……。
午後からエトランゼでバイトが入っているので、ここで七実と別れました。しかし私はバイトへ向かうではなく、またしても水着売り場に来ていました。
さっき見た時に私好みのビキニを見つけて気になってたのよね。
七実にこれを買う所を見られると後で面倒になりそうだから、口実を作って七実を先に帰らせたんです。あと七実からフリルは似合わないと言われましたけど、このビキニにはワンタッチでフリルも付けれるんですよ?流石にこの歳でフリルつけたりはしないですけど参考までに……。
若干暴走気味だけど七実が私の事を考えてくれてるのは十分理解してるんだけど、趣味の押し付けは良くないわよね?
いつも言うけど私なんかの水着を見て誰得だって言うのよ。ねぇ?
「おはようございます」
午後、エトランゼの従業員の休憩室側から入った私は挨拶をする。そこにはほぼ毎日入っている城場さんと、私と同じ大学に通いながらも、毎日のようにシフトに入っている穂邑さんがいました。
「お、鏡さんおっはようー」
「あぁ!かがみんおはようー。聞いたんだけど週末に水着で撮影するんだって~?」
……漏洩早過ぎない?そんなことを考えていると、穂邑さんがそれを察して続けた。
それによると、穂邑さんは昨日七実が行った水着アンケートに参加した一人だった。日程まで知らせていたのは予想外でしたが拡散されたわけではなく、七実からの個人メールで知ったらしい。
「撮影を見に行きたいけどその日シフト入ってるから、影ながら応援してるね。頑張って読者を悩殺する雌豹のポーズよろしくね!」
「なっ!?そ、そんなエッチな画は撮りませんってば!」
「へっ!?その体つきでありながら海で悩殺ポーズをしないなんて犯罪よ!」
「そこまで言うなら穂邑さんがやってください。私はそんな事しません!」
「わ、私はダメよ。かがみんみたいに胸が大きくないもの……。
この話はもういいわよね?それよりせっかく水着を買うのならお盆休みでバイトが休みの間に海に行かない?」
このまま話を進めると墓穴を掘りそうになった穂邑さんは話題の変更をしてきました。慌てる天然物の金髪美人さんはやはり可愛らしいですね。
「海……ですか?私としては大丈夫ですよ。でもその時期には既にクラゲが一杯いるんじゃ……」
「その時はその時で!海に入る事だけが目的じゃないのよ?」
「おっ!いいね、それ。行くのなら撮影してあげるよ。先月買ったばかりの最新式のデジカメで!」
という訳で、なぜかお店が完全休業するお盆期間中に海に行く事になったんですけど……穂邑さんの言っていた海に入る以外の目的が分かりませんでしたが、仲の良い人と遊びに行く事は嬉しいです。
先日の騒ぎ(リアル割れ)から数日経過して、落ち着いてきましたがあれから男性客がやけに増えた気がします。
しかし、もともとの原因は私かもしれませんが、今も続けて来店してくださるのはきっと金髪美人の穂邑さんが毎日いて容姿も綺麗だからですね!
……ジョーさんも休憩中以外は、麗人さんだから何気に人気があるはずだし。
「かがみん。気付いてる?窓際でコーヒーとケーキを食べてるサングラスかけてる人。あの人ね、かがみんが出勤してくる間際にいつも来店するんだよ?」
休憩中、補充用の資材を取りに来た穂邑さんに話しかけられました。
……聞いた瞬間思ったのはそれってストーカーじゃないんですか?あっ、でも偶然かもしれないし……。
「偶然?そんなわけないよ?かがみんがシフトに入ってない日は来店しないもの」
そ、そうなんですか……。まさか私目当てのお客さんがいるなんて予想外でした。でもそういったストーカー行為は気持ち悪いですからやめて欲しいです。
と面と向かって言えたらどれだけ良いか……。仮に話しかけて偶然だ!とか言いがかりだ!とか言われると自意識過剰な女と思われちゃうかもだし。
最初からそういう風に見るのは失礼かもしれないけど、ちょっと怖いかな……。
こう言うときは七実に相談しないと!しかしこう言うときに限って七実は電話に出ませんでした。
多分DCOにログインしているのだと思います。なのでメールでちょっと怪しい人に付きまとわれてるかも……といった内容を送っておきました。
休憩後、見るとまだそのお客さんは食べたり飲んだりしていました。気になるけど今は仕事優先ですね。