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1周年イベントと……  ③

 「フフフフッ」

 「あ、あの!や、やめてくださ……ひぃんっ!」


 新しくソフィーをギルドに加入したその日の夜、再度ログインした私の前にはソフィーのウエストからヒップに取り付き、頬ずりするナナの姿が。

 私の予想したとおりソフィーの身体スペックはナナを性獣に進化させてしまった様です。

 高校生の時までは私もよく七実に抱きつかれては、胸を攻められてましたのでソフィーの今の気持ちは痛いほどに良くわかります。ですので……


 スパァァァン!!


 何処からともなく取り出されたハリセンがナナの頭にクリーンヒットし、その衝撃でナナはギルドホームの壁に跳ね飛ばされていきました。


 「た、助かりました。レイカさん、ありがとうございますー」


 涙を浮かべながら私にお礼を述べるソフィー。うん、今さっきのナナの表情はいろんな意味でアウトだったからね。


 「アイタタタッ……もぅ!レイカちゃん。いきなり何するのさー!」

 「ナナこそ何をしていたのかしら?新しく入ってくれたギルドメンバーを苛めていたのかしら?」

 「ちち、ちがうよっ!?新しい人……ソフィーさんの自己紹介を聞いているうちにこう、ムラムラッときちゃってつい……」

 「ナナはつい、でこう言う迷惑をかけるのね?せっかく入ってくれたプリーストを追い出したかったのかしら?私はその気に入ったものや人に抱きつく癖については慣れているから良いけど、他の人は知らないんだからもう少し自重して頂戴」

 「は、はいぃ!ソフィーさんごめんなさぁい!」


 ソフィーは私とナナのやり取りを見ながら苦笑しつつもナナの謝罪を受け、この件は水に流す事になりました。そしてそうこうしている内に他のメンバーもログインしてきたので改めて新規加入したソフィーの紹介をする。

 初のプリースト加入という事でシヅキを始め、ルルカ等も喜んでいました。この時ちゃんとソフィーの希望(狩を強制しないとかその他諸々)を良い含めた上で仲良くするように言っておきました。

 やっぱり今までに出来たフレンドとの交流も大事ですからね。


 「今日からよろしくお願いしますね。ソフィーさん」

 「やっとまともな回復職が入ってくれてあたしは安心したよ……」

 「……ちょっと、ルルカ。その言い方だと私の回復スキルがまともじゃないように聞こえるんだけど?」

 「実際その通りっしょ?レイカの回復スキル……というか天光魔法だっけ?そこまで育ってる人ほとんど居ないじゃん」


 ぐっ!?確かにそうかも。……というのも私は光魔法の次に天光魔法になりましたけど、他にも当然光魔法を育てている人がいます。

 しかし他のプレイヤーの大半は天光魔法へ派生ができず【聖魔法】になるパターンが多かったんです。割合的には光魔法から天光魔法に派生できたのは1割以下。残り9割は聖魔法となったんです。

 掲示板では種族に関係するんじゃないか?とか色々憶測が流れてましたが、最終的に運任せという事に落ち着きました。種族に関係するとなると、魔族である私が天光魔法を覚える要素が無い気がしますからね。


 「あ、私も聖魔法なんです。だからお昼にレイカさんの天光魔法を見て凄く羨ましかったんですよ」

 「そ、そうなの?まあ見たいならいくらでも見せてあげるわよ」

 「はい、その時は是非お願いしますね」


 当時の私としては、ナナと二人でガンバるつもりだったから聖魔法で支援スキルを覚えたかったんです。

 それが何の因果か強力な回復魔法と闇モンスターへ特化する魔法になってしまったんですから。

 そういうわけで私的にはソフィーの魔法の方が羨ましいとなります。ようするに隣の芝生は青い。



 「ところで……せっかくギルドメンバーが全員居るんですし、交流の為に狩りに行きませんこと?」

 「へぇ、いいわね。私は構わないけど……皆はどうなのかしら?」

 「もちろんおっけー!」


 スキルの話をしている中、コノハがおずおずとした感じで会話に入ってきました。コノハはログインした時に私を見つけたときから狩りに誘えないか虎視眈々と狙っていたらしい。

 けど8人そろっている中で空気を読まず2人で行きたいと言うと、他のメンバーから冷たい目で見られるかもしれないという考えに至り、ソフィーを山車だしにしてレイカを誘おうとしていたのです。

 ちなみにその裏での企みは友人関係にあるシヅキやスミナはお見通しだったが…。


 「私はレイカちゃんがいくなら問題なしだよっ!」

 「あたしも時間あるし良いぞー」

 「勿論、私もご一緒させていただきます。レイカさんの片腕とされるナナさんの強さも見たいですから」

 「ふっふ~ん。私の強さに見惚れると怪我するぜ~」


 ……若干一人ダメな子が居ますけど気にしないで良いですよね?ソフィーさんがまたしても苦笑を浮かべていますし。


 「……行き先は何処にするのさ?また異界迷宮に行く?」

 「そうね……ウサミ。異界迷宮の素材で欲しいものはあるかしら?」

 「ん~……なら17階層で採掘した《クレイドル結晶》がもうちょっと欲しいかな~。あとは18層のキングスナイトのドロップアイテム《ジャンバラナイト》もそれなりの数が欲しい!」

 「うーん、なら……」


 両方行くのは思ったより大変そうなので、討伐を兼ねて行えるキングスナイトの討伐の為18層へ潜る事が決定しました。

 お昼にダンジョンに潜っていた私達(ソフィー、スミナ、ウサミ)は転移で20層に行くことが出来ますが、ナナ達は初見ですからそれに併せて1層から一緒にスタートする事になりました。


 既に一通り探索済みなので15層まではあっという間に駆け抜け、16層からマジメに探索を行います。

 1~10層、11~15層、16~20層、21層~25層、26層~最下層で敵の強さというか難易度が変わりますから油断してると死にかねませんし、私個人としてもこの層から先で採れる《スピルマー香石》がそれなりの数量欲しいですからね。

 このスピルマー香石から抽出できる香球には《昆虫特効》もしくは《精神耐性:微》の効果がつくのでぜひとも欲しいのです。この香石を普通に集めようとすると、モアールフライというボスを何度も倒す必要があるので面倒なんです。



 「それにしてもサソリが多いね~」

 「水系の攻撃に弱いからルルカお願い」

 「合点承知ぃ!【ウォータージェット】!」


 ルルカの攻撃魔法でサソリのモンスター《サンドスコルピオン》を倒していく。倒されたサソリは《硬い甲殻》をドロップアイテムとして落としていくが、この甲殻は防具鍛冶だけでなく裁縫スキルでも扱える数少ない装備素材のアイテム。使い道としては足元に装備する脛当てやら靴に使う事ができます。

 名前からして甲殻が硬いと言うだけあり、基本性能もそれなりに高いので最近の攻略組が使う最低限の装備素材として流通している。



 17層に関しては次の階層に行くまでの採掘ポイントで幾つかの《クレイドル結晶》を得るだけで通り抜けました。この幾つかの数だけでもウサミにとっては嬉しかったらしく、ギルドホームに戻った後の使用用途について考えているみたい。


 そして目的の18層。

 この階層には下りてきた階段を南とすると19層への階段が北西にある。

 逆に北東には長い通路を経て突き当たりに丁度良いサイズの小部屋があるので、私の秘密アイテムである敵を呼び寄せる効果を持つお香を焚こうと思います。

 お香系のアイテムを最後に使ったのはナナがオーラになった時以来だけど、制作だけはスキルレベルを上げるのに手っ取り早かったから常に続けてきてたのよ。

 今となっては制作評価10は当たり前で、使用すれば呼び寄せたいモンスターの種類を指定できるようになったんですよ?……そこに居ない種族は呼べませんけどね。



 「ち、ちょっとまって。レイカちゃん!ここでそれ使うの!?下手したら私とレイカちゃん以外死ぬよ?」

 「あ、多分大丈夫よ。呼べるモンスターがランダムじゃないから」

 「じゃあ、数の指定は?」

 「そんな事までできるわけないでしょ」

 「……」


 私とナナのやり取りを見て、嫌な予感を感じるほかの面々。


 「あ、あのー?今どういったお話を?」

 「レイカ。使う使わない以前にアイテムの説明してよね」




 お香のアイテムの効果を細かく説明したところ、ウサミ以外のメンバーが喜んでいました。まあウサミは一部の種族を除いて戦闘向きじゃないもんね。


 「えっ!以前ナナさんが言っていた地獄の特訓ができるんですか!?」

 「なるほど、この小部屋で使用すればここまでの長い通路から入ってくる敵の量も調整できるし、安定しそうだね。やるじゃんレイカ。ナイスアイディア~」

 「私もこの小部屋くらいの支援なら切らせる事はないと思います!」

 「私だけ役立たず!?」

 「ウサミはドロップアイテムの一括荷物持ちでよろしく!」

 「へーい。しょうがないか~」




 それぞれの役割を話し合い、スミナはいつもどおり中央で敵を抑える壁役、コノハはその少し後ろで敵の数の報告とはぐれモンスターの討伐、スミナの隣はナナとシヅキで後方に流れるモンスターを減らす役割。

 後衛の役割を持つ私とルルカは、それぞれの持つ火力で部屋全体を対象とした魔法攻撃を打ち続ける事になりました。


 「じゃあ、使うわよ。効果は今から60分間。出現モンスターのほとんどは物理攻撃をメインとするキングスナイトで、少しくらいはその亜種である魔法攻撃も仕掛けてくるクィーンナイトが居るくらいのはずよ」

 「「「了解!!!」」」

 「どれだけの数が来るのかワクワクしますね!」

 「腕が鳴るよ~」



 私が《魅惑のお香》を使用すると、マップの各所に敵モンスターを示す赤点が大量発生し、幾つかあった他プレイヤーを示す黄色の点がどんどん消えていく。そして赤点は私達の陣取る小部屋へ向かって侵攻を始めるのだった。


 「レイカちゃん。また他のプレイヤーを巻き込んでるよね……」

 「そ、そうね。まあそこは彼らの運が悪かったという事で……ね?今回は見られてるわけじゃないし気にしないで良いわ」

 「そこは気にしようよ……」


 この時間帯、異界迷宮でのモンスター大量発生について暫く掲示板が騒がしくなったのは言うまでもない。そして元凶である私達ですが、お香の効果により襲ってくるモンスターを安定して倒し続け、誰ひとりかけることなく……言い換えれば傷一つなく無事に狩りを終了させ、目的のアイテムを大量入手しホクホク顔で帰還しました。


 ウサミはこの狩りの後に入手した鉱石を使い、各種武器を製作し、ギルドメンバーに分配してくれた。私には無いんだけどね~。

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