目立ちたくないのに 7-2
次話、未定です!さーせんっ!
午前のお客さんを捌き、時間はお昼になろうかという頃。うちの店の前に並んでいるお客さんの数が増えてきました。どこまで並んでいるのか分からなくなりそうですね。
「あぁ、鏡さん。悪いのだけど店の前の行列の整理をお願いできる?」
「あ、はい。どういった感じにすればよろしいでしょうか?」
「そうね。この整理券を配って他の通行人の邪魔にならないようにブロック毎に分けてもらえると助かるわね」
「分かりました。やってみます」
夢見店長から言われ、整理券を受け取る。そのまま店外に出て並んでいるお客様達に声を掛けました。
「現在店内は非常に混み合っております。店内でお食事をされる方々にはこちらの整理券をお配りしております。テイクアウトのお客様はドアの右手側に、店内希望のお客様は左手の方へお並びになり整理券を受け取ってください!」
店を出た時から賑わっていた声が収まっていたので私の声はそれなりに遠くまで届いたはずよね。
でも動こうとする人が居ません……もう一度言った方が良いかしら?
もう一度、場所を移動しながら声をかけていくと、ザザッとお客さんたちが並んでいく。男性客が多いわね?さっき見たときはここまで居なかったはずなんだけど……。
「あぁっ~~。麗華ちゃん!なな、何でここに居るのさ!?」
「ん?あら七実じゃない」
整理券を配りながら列の後ろへ後ろへ進んでいくと、オフ会へ行っているはずの七実に声をかけられました。七実の周りには七実を含めて5名の女性が居て、私を見て驚いている様子が見られました。
「私は見てのとおりアルバイトよ?言っておいたでしょ?」
「そうだけど、何でここのお店なの?」
「あっちの店長に応援に行くように頼まれたからよ?……っと、あまり喋っている時間はないわね。七実たち?は中で食べていくのね?」
「えっ?もも、もちろんだよっ!整理券5枚よろしく!」
「はいはい。でも今の状況だと1時間待ちはすることになるわよ?ほんとにこの店で良いの?」
「麗華ちゃんが居るお店に行かない私が居るはずが無いよ!」
「そ、そう?それじゃ私は他にも配らないといけないから行くわね」
「うん!またお店の中でね~!」
七実たちと別れ追加で並んでいるお客さんにも整理券を配っていく。ていうか、追加多すぎるんですけど!?さっきから配っても配っても人が減りません。
お店のほうもあまり長時間居座られると回転率が悪いので事情を説明し、退店していただいたりと大変だったらしいです。
大半の人がイベント目的で来てる人達みたいですから、説明さえちゃんとすれば分かってくださる人ばかりだったとか。
午後13時半過ぎ。私と穂邑さんは休憩を頂ける事になりました。
ちょうどそのタイミングで七実たちも入店できたらしく、バックヤードに下がろうとしている私を呼びとめたのです。
「麗華ちゃん!もしかして休憩?皆で一緒にご飯食べようよ!」
「何を言ってるの。休憩といっても、仕事の時間である事には変わりないのだからそんな勝手なことは出来ないわよ」
「えぇ~。そこをなんとかぁぁ!」
「ダメ「いいんじゃない?」……よ?って穂邑さん!」
「鏡さん。ちゃんとそういうことは融通を利かせてあげないと?よくウチのお店に来てくれてる親友なんでしょう?」
「いいんでしょうか?店員がお客さんと食事をしても」
「気になるなら服を着替えれば良いじゃない?時間通り戻ってくるなら大丈夫よ?エトランゼはそこまで厳しい規律はないから安心して」
「……分かりました。ちょっと着替えてくるわね」
「やったぁ!穂邑さん、援護射撃ありがとう!」
「その代わり私もご一緒して良いかな?」
「もちろんだよっ!」
と言う事で、私は着替えて七実たちの居る席に合流。穂邑さんは制服のままで行く様子。
席に合流するなり私は七実に一緒に居る人たちの事を尋ねました。
「あ、麗華さん。こちらでは始めまして藤堂紫月といいます。あちらではシヅキという名前です」
「始めましてレイカ様……じゃなくて麗華さん。私は住田花江といいます。あっちではスミナです」
「わわ、わたくしは九重実羽と申しますの。コノハでプレイしております……」
「やっ、レイカ。あたしは敷島瑠香。ルルカだよ」
なるほど、みんなギルメンでしたかぁ。どおりで見たことがある雰囲気が感じられたわけですね……。
スミナはまた人の事を様付けしてるしっ!?次呼ばれたら注意しないと。
「遅ればせながら私は鏡麗華です。こっちで皆に会うことになるとは思っていなかったわ」
「だよね。私もさ、最初はルルさんとだけ会ってたんだけど、偶々確認したコミュニティサイトにシヅキ達の書き込みがあったから合流して食事をしようとしたところだったんだよね。で、そこに麗華ちゃんまで現れたって訳」
なるほど、偶然と言えば偶然な訳ね。
「盛り上がってる所悪いけど、かがみんの知り合い?」
DCOをプレイしていない穂邑さんには理解できなかったようなので、自分たちがしているVRMMOで同じグループに所属していることを告げる。
「なるほど!あのゲームね!?確か私の知り合いがやっててPV?とかいうのを見せられたことがあるわ」
PV……嫌な予感がします……。穂邑さんは携帯を取り出しそのURLを呼び出す。そして皆に見えるように再生する。
それはやはり、私が龍潜境でPKを殲滅していた時の暴れ映像、その続きとしてギルドバトルでの私達のギルドの戦いっぷりなどが出ていました。
「あっ、これ麗華ちゃんだ!」
「えっ?この銀髪さんはかがみんなんだね?へぇ~、ハッちゃけてる~!楽しそう」
この時、七実たちが頼んでいた食事を持ってきた男性従業員が居た。そう、あの3人の中の一人です。
「このボコボコにされてるの俺らだな……」
「えっ!?」
男性…石山氏は苦虫を噛み潰した顔で淡々と告げていく。
「へぇ?じゃああのPK達なんだ?……ねぇ少しだけで良いから裏に行こっか。ちょっと聞きたいことがあるんだよね(レイカちゃんを押し倒したとか色々ね)」
「仕事中なんで無理だな(gkgk)」
「大丈夫大丈夫。待っててあげるから!女が待ってるって言うんだから来てくれるよね?(逃がしはしないよ)」
「い、いや。結構だ。お、女は間に合ってるんでな(怖ぇ!こいつぜってぇ竜騎士だ!)」
「そういわずにさぁ、付き合ってくれても良いじゃない。きっと楽しいよ?(私が)」
「こ、断る!っと、バイトが忙しいからいくぜ(やべぇ。マジで終わったら全力で帰ろう)」
七実がナンパするかの如く絡んじゃったせいで石山氏は怖がって逃げてしまいました。それにしてもどうして石山氏は自分からPKだと言う事を晒したんでしょうか?普通はそういう話をしてても、飛び込んでいきませんよね?
石山氏がバックヤードに戻った後、残りの2人が私達の様子を伺うかのようにチラチラと見ている。
そんなに気になるのかしら?もしあっちで会えたら熱い視線を向けすぎとか言って、からかう事にしますね。
休憩時間が終わり戻った私は、勤務終了時刻まで滞りなくこなす事ができ、夢見店長に二人ともウチの店に来ないとか誘われてしまいました。
佐田店長が怒りますよ?と言うと、夢見店長は押し黙ってしまったのが二人の関係を分かりやすくしているように思えます。
七実たちは食事後イベントに戻っていきました。ただしアパートに帰る時は、一緒に帰るというので、少し待つことになりそうです。待つ位ならこっちから迎えに行こうということで、イベント会場へ行くと夜であるにもかかわらず、沢山の人が残っていました。
DCOのモンスター着ぐるみを着た人や、好みのPC・NPCになりきっている人とかね?誘惑狐の着ぐるみを着てる幼女が居た時はお持ち帰りしてしまいそうになりましたね(穂邑さんが止めてくれたのでセーフです)。
あとは銀髪シニヨンの魔族っぽい格好をしている人も居ましたけど見なかったことにしました。その際、腕を引っ張られたような気もしましたけどね~。気のせいに違いありません。
RINEで連絡を取りながら、探す事30分ようやく合流できました……意外と掛かっちゃいましたね。
勿論ルルカやシヅキたちも残っていましたよ。
「麗華ちゃん。あっちにおじさん居たよ?」
「パパが?」
「うん。麗華ちゃんがこっちに来てるって言ったら、会いたいんだぁて叫んでた」
「……恥ずかしいわね。会うのやめようかしら……」
「れいかぁぁ。そんなことを言わないでおくれ~~」
「あっ、遅かったみたいだね」
「そのようね……はぁ」
和仁との会話は1つのお願いをされた事以外はいつもどおりなので割愛するとします。
適当にパパをあしらい、シヅキたちとRINEの交換をし、連絡を取り合うことが出来るようになりました。コノハとスミナの二人がその際、狂喜乱舞していましたが、あまりに沢山のメッセージを送ってくると登録を切るよ?と言うと落ち込んでしまいました。
なんかこの二人は事ある毎にメッセージを送ってきそうですからね。あらかじめ釘を刺しておきました。
そんなこんなで、イベントが終了し私達は駅で解散。
ルルカは南方線に乗り換え。シヅキたちは北央線、私達は東門線でしたからね。
アパートに到着し、全員から無事帰宅したという連絡を受け安心した所で就寝しました。