目立ちたくないのに 7-1
1本にかけなかったので分割。2つか3つのどっちかになるかと~。
今日は、アリーナST店の応援へ行く日です。RINEを使用して、穂邑さんと待ち合わせしたので現在駅へ向かっています。
現在時刻は、午前6時30分。アリーナSTに行くには片道1時間と少し掛かるので、余裕を見て早めに出たんです。応援要員が遅れて出勤とか超ダメなイメージ持たれてしまいそうですから。
……まあ穂邑さんはそんな私に巻き込まれた(?)形になりましたね。すみません……。
「おーい、かがみーん!こっちこっち~」
駅のロータリーには金髪の美人さんが!?はわわっ……時間が早いので人が少ないとは言え結構目立ってますよ?穂邑さんは美人さんだから仕方ないでしょうけど、見比べられる私の身にもなって欲しいです……。
「お、おはようございます。穂邑さん」
「おはよう、かがみん。じゃあいこっか。電車の時間調べてくれたんだよね?」
「あ、はい。ちゃんと調べて鞄の中に……あ、あれ?」
「……かがみん?」
「すみません、さきほどRINEをする為に携帯を取り出した時、メモした紙を落としてしまったようです」
「あっちゃぁ~。まあ落としたなら仕方ないね。早い目に待ち合わせたんだし、駅員さんに聞きながら行こう?」
「申し訳ありません」
「気にしない気にしない。さぁズンドコ行きましょう」
私と穂邑さんはICカードのEKOKAを取り出し、ピッと改札を通り抜ける。こっちの残金は先日補充したので大丈夫ですよ!
駅員に乗り換えの駅などを聞きながら進んだ結果、予定時刻前にアリーナ駅前駅に到着しました。
駅員といえば私達が道を聞いているというのに、私達の顔を見続けてボーっとしてたんですよ?
それも5人の駅員さんに聞いて4人までもがっ!問題なく答えてくれたのは女性駅員だけでしたからみなさんも今度から女性の駅員を探して聞いたほうが良いですよ。……あれ?皆さんって誰の事でしたっけ?
アリーナ駅前駅を下車し、BIGLEマップを見ながら店を探す事10分。
無事見つけることが出来ました。という事で早速、佐田店長から聞いたとおり、店の裏手にある従業員用の扉から休憩室へ入りました。
そこには、高校生くらいの男性従業員2人と私達と同じ位の女性従業員が1人座っていました。3人とも突然入ってきた私達に驚きを隠せないようです。
流石に強盗とは思われてないはずだけど……やっぱりドアベル鳴らした方がよかったのかしら?まあ今更遅いわよね。
「おはようございます。ゆめさき支店から2名応援に来ました」
穂邑さんが3人に声をかける。すると3人が再起動して女性店員が奥へ確認に。
「あっ、どうぞ。かけて待っててください」
残った二人は私達に座るように机を譲ってくれました。アリーナ駅前駅に到着する列車では結構人が多くて疲れてたのですごくありがたいです。
「ありがとうございます。かがみん。座らせてもらいましょう?」
「あっ、はい。休憩場所を譲って頂きありがとうございます」
ちゃんとお礼は言わないとね。勿論、アルバイトで身につけた最大級の作り笑顔で!
「!?い、いやっ、気にしないでくれ。俺達はもうじき入るからな。数分くらい座ってなくても平気なんだ」
「そうっすよ。んじゃ…お、俺達はもう入るんでまた後で挨拶させてもらうな」
それだけ言い残し、そそくさと中に入って行く男性従業員たち。なぜか私の顔を見て怖いものでも見たかのような顔になった気が……?あっ!さっきの作り笑顔が笑顔じゃなかったのね!
やっぱり男性相手だと笑顔が硬いのかしら。もう少し練習しないと。
「お待たせしました。貴女達がゆめさき支店から応援に来てくれた中里さんと鏡さんね?」
店長っぽい人から確認されそれに対してハイと頷く。その流れで私も穂邑さんも自己紹介を済ませる。
「私はこのアリーナST店店長の夢見です。さっちゃ……コホン。佐田店長から二人ともよく働くと聞いてます。今日一日ですがよろしくね」
「はい。頑張ります」
夢見店長はショートカットで、スーツを着こなしている凛々しい女性です。中身が伴っていないかもしれませんけどね。
にしても、佐田さんは夢見店長に「さっちゃん」って呼ばれてるんですね。友人なのかしら?
「次に仕事についてです。基本的な仕事内容はエトランゼは全店共通ですので説明は省きますね。今から説明するのは基本以外についてです」
「はい、お店により様々な特徴があると聞いてます」
穂邑さんが夢見店長に尋ねました。さすが先輩です。頼りになりますね!私、自己紹介でしか喋ってないかも!
「そうよ。ゆめさきではケーキの質が良いわよね?ウチの店ではモーニングの質を他の店舗より高くしています。とはいえ、中里さん達に入ってもらう10時過ぎには、ほとんどモーニングが終わってるのだけどね」
「なるほど……ではモーニングは何時まで受け付けているんでしょうか?」
「11時よ。そして11時からはランチの受付になります。ランチはゆめさき支店でもやっているわよね?それと同じで大丈夫よ」
「分かりました。では私達が仮にモーニングの注文を受けてしまった時はどうすればよろしいでしょうか?」
「そうね。時間を確認してもらう必要があるので、こちらの腕時計を渡しておきます。これで受けるか受けないか判断してください」
「はい」
その後もアレコレと説明を受け、最後に制服に着替えるため更衣室に案内される。
あっ、制服はゆめさきの物を持って行くように言われてるので、ここに来てサイズが合わないとかの問題は起きませんでした。
ちなみにゆめさきの制服とアリーナSTの制服は色が違ったりします。ゆめさきは薄い赤のラインの入った服で、アリーナSTは緑のラインが入っているんです。
「それじゃあ、今日はよろしく。休憩は交代要員を送るからその時にちゃんと取ってくださいね」
「分かりました!」
こうして私と穂邑さんは戦場……もといカウンター裏へ向かっていきました。
パッと見た感じ、店内のお客さんの割合は男女比が半々といった所でしょうか?
今日はやはりイベントとやらの関係上、いつもより男性客が多いようです。
カウンター裏にいたのは休憩室に居た3人の男女の従業員とその同じシフトと思われる男性が1人、女性が4人となっていました。
よかった。他にも女性従業員が居ました。夢見店長と休憩室に居た1人しか見ていなかったので女性の数が少ないんじゃないかと思ってしまいましたよ。
「俺はバイトの石山だ」
「お、同じく百内です」
「よよっ、横田……だ」
……なんかこの男性従業員3人、私を睨んでくるんですけど!?さっきの笑顔が怖かったからって睨まなくても良いじゃない……ねぇ?特にそっちの二人に聞いたのかもしれないけど、3人目の男性までもが怖がってるとか……。
女性従業員達の名前も聞きましたが、あまり覚えられませんでした。呼ぶ機会が少ないからしょうがないですよ。
という訳で、私達の自己紹介もすることに……。最初は当然穂邑さんが。そして次に……
「鏡麗華と申します。本日だけですがよろしくお願いします」
この男性3人は人が自己紹介しているって言うのに何をこそこそ話しているんでしょう?人の話はちゃんと聞くように。と学校で習わなかったのかしら?……私?私は良いんです。今はちゃんとしてるので!
「あの?なにか?」
「い、いひゃ!?なにもないぞ?よ、よろしく。鏡さん」
「「(ウンウン)」」
怪しい態度の3人をジトォッと見ていましたが3人とも目をそらしてしまったので聞いても無駄と判断いたしました。
自己紹介も終わった所で、午前の仕事を開始する。そして私達が接客に入った瞬間、店内に居た男性客がこぞってカウンターへ押し寄せる。従業員同士の挨拶をしてる時、凄く見られてたもんね。
きっと店員が急に居なくなったから注文を頼めなかったのでしょうね。
お客様なんですから遠慮なさらずに呼べば良いのにね。
「ぱ、パンのおかわりおねがいします!」
「俺はお手製のコーヒーをぉぉ!」
「モンブランをくださいっ」
「すす、スマイルをお願いしますっ!」
「ワシには入れ歯をもらえるかのぉ?」
……注文できなかったのは分かりましたから落ち着いてください。私まだバイト初めて1ヶ月経ってないんですからね?
パンのおかわりは、後ろの上段保存ボックスの中に……ありました。で、コーヒーも……後ろにありました。残念ながらお手製ではないですけどね。
モンブランはシェフが製作中ですので待って頂くとしまして……。あとの二つは一体何よ?
スマイルってたしかM○Cとか呼ばれる所でメニューに載っていたらしいけどこの店には書いてないのよ?
少し困ったので一緒に居た穂邑さんに相談すると、親指を立ててOKサイン出しました。
し……しょうがないですね……(ニコッ)。
「ウグッ!?」
「ハウッ!?」
私がはにかみながら笑ったその瞬間、胸を押さえ、地に膝をつき始める男性客達。入れ歯を……とか言っていたおじいさんは……もう席に戻ってるわね。入れ歯もテーブルの上にあったみたいでよかったわ。カフェで入れ歯を頼まれてもどうすれば良いかわからないもんね。
巻き添えを食らったお客さんの男性客が数人腰を前のめりにかがめながら必死に席に戻る。
……そこまで私の笑顔は酷かったの!?ショックです……欝になりそう。