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目立ちたくないのに 5

明日はお休みです。多分

 今日は朝からアルバイトです。ただいつもと違うのは朝食時に七実がいないこと。

 と言うのも、七実は昨日の夜「オフ会があるから日曜日まで遊びに行って来るね」と言って、数日分の着替えなどを持って何処かへ行ってしまったから。

 いつもは聞かなくても行き先を言ってくるのに、今回は言ってくれなかったって事はオフ会という理由だけじゃないのかもしれません。


 ちなみに私も誘われたのですけれど、土日共にアルバイトがあるからと言って断ったんです。

 ……しょうがないじゃないですか。七実は実家から援助してもらってますけど、私は援助してもらえないんですから……。まあ私が望んだ事で、家に文句を言うのは筋違いですよね。


 七実のこう言うコミュニケーション能力……悪く言えば、怖いもの知らず?な所が時に羨ましくもなります。



 ……今日は二人ともモデルの顔合わせだったんじゃないのかって?そうなんですよっ!

 七実ったら今日(土曜日)はどうしても無理と言い張って、三枝社長に直談判。後日改めて顔合わせする事になったんですって。そんな我侭ばかり言う子は叱らなくちゃね!

 それなら私も……と言いたい所ですけど三枝社長から「君だけでも良いから来てくれ」と念を押されたので予定は変わらずです。


 私だけでも…の「でも」の部分に所に必死さを感じました。きっと社長は、私まで自分勝手な言い分で来ないかもしれないと思ってるのかもしれませんね。

 これでも、責任感はあるつもりなんですよ?……自分で決めた事に関してはですけど。

 言いたい事はこのモデルやらの仕事も姫島さんに頼まれて引き受けたけど、最終的に契約期間内は続けると決めたのは私ですし、途中で放り出す真似はしたくありません…ってこと。




 しかしいざアルバイトに来て見ると土曜日だと言うのにエトランゼゆめさき支店の朝は忙しい……訳ではありませんでした。あらら?

 常連のイートインのお客様はお見えになるんですけど、テイクアウト関連のお客さまが、非常に少ないような?確か先週はもっと忙しかったのに……。


 「今日は思ったより暇ねぇ。おかげで夕方まで掛かる予定の在庫確認が終わってしまったわ」


 はっ!する事がなくて暇だったからってボーっとしちゃってました!そんな所に声が掛かったものだから内心汗がダラダラです。



 「ジョーさん。そんな事言って……先週、午後到着分の荷物の計上がされてなかったって店長が言ってましたよ?」

 「あっ!そうだったぁ。その店長が横浜支店が集客数伸びてるらしくて在庫が薄いから、配達してきてって言われてたんだった~!」

 「……ジョーさ~ん。しっかりしてくださらないと困りますよ?」

 「あははぁ…面目ない。急いで届けてくるわね。…今の人数でも大丈夫と思うけど、後ヨロシクね!出来るだけ早く帰るから!」

 「分かりました。事故しないように気をつけて行って来てくださいね」

 「はいよ~サンキュ~」



 嵐のように出かけていったジョー(城場)さんを見送り、とりあえず午前中は乗り切ることが出来ました。昼になり客足も伸びて忙しくなってきた頃、横浜に配達に行っていたジョーさんが戻り指示を出す事で忙しさに混乱アタフタしていたレジ係も我に返り、無事勤務終了時刻を迎えることが出来ました。


 「お先に失礼しますね」

 「お疲れさま~。鏡さん明日は他店応援だったよね?がんばってきてよ~?」

 「はい。あちらのお店の方の迷惑にならない様に頑張ってきます!」


 ジョーさんと挨拶を交わし、店を出る。ジョーさんは今日・明日のシフトはラストまでらしい。

 いつもよく頑張ってますよね。途中抜けてる所も魅力があると言うかそんな感じ?

 ……っと、下っ端の私が先輩であるジョーさんの事を頑張ってる…なんて言っちゃいけませんね。少なくとも本人を目にしては……。


 アルバイトが終了し、手早くシャワーを浴びて汗を流したら次はモデルの顔合わせです。

 春とは言え、やっぱり人と会うのにその……体臭がきついと嫌だもんね。

 なので、家を出る前にきつくないコロンを軽くシュシュッとしておくのは女性のマナーなんですよ?たぶん。




 「おーい、鏡さーん。こっちだこっち~」


 △◇雑誌社の正面にある落ち着いた雰囲気のイタリアンも食べられるファミレスに入ると、店の奥から社長が立ち上がって手招きしていました。

 あぁ~、私を呼ぶ程度の事で社長が立ち上がるなんて……違いました。立ち上がらせてしまったなんて申し訳ないです。

 ちなみにここなら私でも入り易いだろうって事らしいです……けどファミレス初入店です。わーい……。

 で社長のいるテーブルには社長以外に男性が二人、女性が一人いました。



 「お待たせして申し訳ありません」


 こう言うのは最初が肝心ですからね。私は席に着くなり、頭を下げました。

 態々仕事終わりの時間に、こうして顔合わせする時間を作ってくださったのですからこう言うのが良いはずです。自信はないですけど。


 「あぁー気にしないで良いですよ。聞けばこの時間までアルバイトしていると聞いてましたから」



 席にいた男性の片方……多分20代後半……いや、30代前半位の人が私の言葉に対して、気にしないで良いと返してくれました。あぁ、こう言う雰囲気の人なら少し位話せるかも……とか思ってました、が……



 「いやまさかこれほどとはね……。こんな身近な場所に君のように容姿の整った女性がいたとは……まさに灯台下暗しだ。と思ってね」



 ……うーん。何度も言いますけど私、こう言う話しかけ方をしてくる人がほんとに苦手なんです……。この声の主は同じく一緒のテーブルに座っていた男性の片割れで40代行ってるんじゃないかって位のおじさんですし。



 「寺田さん!初対面の女性をいきなり口説こうとしないでください!」


 そこに割って入ったのは、最後の一人の女性でした。この人は荷物にカメラを持っているので、カメラマンなのかもしれませんね。



 「なな、何を言っているんだ、沢村くん!私はただ、見たまま褒めただけじゃないか」

 「寺田さんの話し方は初対面の女性相手には不評ですよ?いい加減改めたら如何ですか?そうすれば彼女の一人くらい出来るかも知れませんよ?」

 「ぐぬぅ!?痛いところを……」


 寺田と言われたおじさんと女性カメラマン?の間で戦いが始まろうとした時、社長がそれをぶった切る。

 社長のコメカミには、青筋が立っているように見えなくも無い。……青筋なのかただの血管なのか分からないけど。


 「寺田君に沢村さん。君たちはそんな言い合いをする為にここに来ているのかね?」

 「い、いや、違います……」

 「も、申し訳ありませんでした」

 「ウチの鏡さんが困っているので、ちゃんと話をしたいのが問題はないだろうね?」

 「も、もちろんです」

 「はい」


 こういった事から始まった顔合わせですが、ようやく自己紹介をできる所まで来ました。

 長かった……ここまででお店に入ってから15分も経ってるって想像つくかしら?いい加減座りたい……。

 自己紹介は、私から始まりました。けど私の自己紹介は必要ないですので詳しくは言いませんよ。

 社長を除く残り3人の自己紹介に入る。最初に声を出したのは最初の男性です。



 「初めまして鏡さん。俺はディレクターやってる三条一馬です。「さんじょうひとま」じゃなくて「かずま」だからそこは間違えないようにしてくれよ?基本は会社に缶詰になっているから顔を合わせるのは、打ち合わせくらいだろうけどよろしく。

 あっ、これ名刺ね。何か意見とかあれば遠慮なく電話していいから。すぐに出れるかどうかは難しいけど、用件を留守電に入れてもらえれば内容次第では折り返すからね」

 「はい。こちらこそよろしくお願いします」


 うん、ギャグっぽい自己紹介も入れてくるところが凄いですね。現場で会えないのが残念……あれ?今私残念って思った?まさかね……。



 「次は私が……。先程は見苦しい所を見せてごめんなさいね。私はカメラマンの沢村葉子です。

 三枝社長から撮影を担当するように頼まれたの。同じ女性同士だし、遠慮しないで相談してくれたら良いからね?」

 「こちらこそ、これからよろしくお願いします。女性が撮影班にいてくださるだけで凄く気が楽になります」

 「ふふっ、そういってくれると私も頑張り甲斐があるね」


 沢村さんは、次の寺田さんと言い合っていた時とは違って話やすそうです。きっと、七実と一緒に3人で話す事が多くなると私は(確定的に!)予感しました!



 「顔合わせは以上だな……では解散っ!」


 なんと社長はある一人を無視して言いました。えっ!?と驚く私や沢村さんたち。て言うか注文した料理がまだ全然届いてないんですけどッ!?

 

 「待てマテまてぇぇ!社長それは酷いぜ~。さっきみたいにふざけたりしないから、まともに扱ってくれよぉ」

 「寺田はいつも調子に乗りすぎだ。いい加減歳を考えろ!」

 「悪かったって……な?俺と社長の仲じゃんか」



 ん?どんな関係か気になりますね。てか寺田とか言う人が迷惑らしきものをかけるのはいつもの事なのかしら?……どちらにせよ、私に害がないのならどうでもいいわ。


 社長と寺田氏が何か話し合い折り合いをつけたところで、寺田氏の自己紹介になりました。

 むぅ!途中が気になるっ!そんな方は七実の言うプロデューサーに連絡してください(嘘)。



 「俺は寺田賢蔵だ。仕事は音声と関係者限定のハイヤーを担当している。撮影現場とかへの送り迎えは俺がすることになるからよろしくな」


 ……本当マジですかぁ……?よりにもよって一番話したくない人と一番よく会うことになるなんて……。チェンジできませんよねぇ?はぁ~……。


 基本七実と二人で行動するんだし、そこまで警戒しなくても良いか。

 初対面で最低でも慣れれば普通くらいには上方修正できるかもしれませんしね?




 自己紹介が終わった後は早速、第一回目の仕事について話し合いをしました。七実がいないけどね……。

 社長や三条さんが言うに最初は慣らしも兼ねてここ、ゆめさきエリア界隈の人気のお店やデートスポットの取材をするらしいです。

 前者は興味ありますが、後者は経験がないのでどう紹介すれば良いのか分かりません……。

 取材ついでに私や七実の写真を撮るとか……ちなみにその写真は地域雑誌の一面を飾るらしいですね。

 できるだけ七実を前に出してもらえるようにお願いしてみようかしら。なんて我侭はダメよね……。


 ちなみに突撃取材とか言うのではないので、あらかじめ行く店に許可を取るんだって。知りませんでしたよ。



 取材日に関しては、相手のお店の状況次第なので、決まり次第連絡をくれるそうです。

 大学を休んだり、アルバイト欠勤することもあるかもしれないわね。撮影を全部、夕方にしてもらうわけにもいかないしね。最悪DCOの時間も削らなくちゃダメかも……。



 撮影の方向性が纏まった所で解散となりました。早速寺田氏が送るぜ?とか言ってましたが、ここからそんなに遠くないですから丁重にお断りしておきました。

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