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目立ちたくないのに 2

 「お待たせしました。遅れてすみません」


 内藤氏もとい、バッキバキと待ち合わせたのは始まりの街の中央噴水広場。

 彼がキャラクタ名を頭上に表示しているのは、待ち合わせをしてます。という暗黙のルールだそうです。

 ここは誰もがわかりやすく、初心者から上級者まで幅広く待ち合わせに使う所で、いつ来ても広場の半分は人で埋まっている。


 そうそう、彼のアバターの説明をしましょうか。彼のアバターは大学で見た彼をそのまま持ってきたような甘いマスクで、髪の色が赤く、瞳の色が緑になっているくらいでしょうか。

 女性プレイヤーの視線を集めているのが私でも分かりましたよ。


 バッキバキは私に気付くと立ち上がり片手を挙げる。



 「あぁ……女が男を待たせるのは世の常だろ?気にすんな。しかしなんというか……目立ってるよな…」

 「なにがですか?」



 バッキバキは周りを見ながら私に話しかけるが、いきなり目立ってるな…とか言われても理解できるはずがないですよね。



 「いや、レイカクラスの美人と待ち合わせてた相手が俺だと分かり、そこらのプレイヤの落胆のエモがウザったくてな…」

 「はぁ……そうなんでしょうか?」


 ……この人バッキバキは何を言ってるんですか?私が美人とか…もしかしてナンパ?……なんてね、私なんかをナンパする人が居る訳ないですよね。

 となると……あっ、お世辞なのね!

 なるほどx2。周りからの視線に気づく事で細やかな気配りできるだろ的なアピールでしょうか?

 そんな事されても私の心が動く事なんてないですよ?はっきり言って無駄です!


 あれ?何処からともなく「自意識過剰じゃね?」って聞こえてきました。ですよね、調子に乗ってごめんなさい……。

 


 「まあ、とりあえず場所を変えようぜ。裁縫スキルについての意見やら、レイカの作った見た目装備のセンスについて色々聞きたいんだ」

 「分かりました」


 バッキバキに目を奪われる他の女性プレイヤーからの視線(?)から逃れたいのでその提案には賛成です。でも次に会う事があれば、バッキバキとは何の関係も無い事をしっかり告げておきたいと思います。

 だからハンカチを噛みながらキィーという感じで悔しがる真似はしないでくださいね。




 「ここだ。パーソナルスペースを確保してある」


 バッキバキに案内されてきたのは始まりの街にあるNPCが多く住む住宅街で、プレイヤーが滅多に入ってこない場所です。

 バッキバキが言うには、NPCと仲良くなれば、このように部屋を貸してくれるらしい。

 ここなら許可されていないプレイヤーは入れないので、安心・安全に秘密のお話が出来るという事ね。


 「早速だけど、何が聞きたいのかしら?」

 「あぁ、さっきも言った通り裁縫に関してだ」



 バッキバキに聞かれたのは、あらかじめ聞かされていたデザインやらについて。

 聞く所によると、彼はゲーム内での経過時間が現実の三分の一という事を利用して、自分自身の裁縫能力向上のために、DCOを利用しているという。

 この辺は高校生の時の私と同じ気持ちですね。最初の数ヶ月しかその気持ちを維持できなかったけど。



 で、彼はDCOで見た良いデザインを作り上げたプレイヤーと、話をして意見を交換しているということでした。つまり彼は私がこっちで作った装備品のデザインを気に入ったという事。

 ……これは嬉しいですね。自分の作品が他の人に認められるって言うのは、作り手として最高な気分です。



 「という事で是非、差し支えない範囲で良いので教えてほしい」

 「構いませんよ。では……この作品についてからですが……」



 そして気付けばログアウト予定時刻。とりあえずバッキバキが欲しがった情報を話しておき、また何かあればメッセージで聞くという形で落ち着きました。

 えぇ……気付けば私ともあろう者が忌避しているはずの男性プレイヤーとフレンド登録していました。彼で4人目だったかしら?……あ、あれ?意外と多い?


 ナナ辺りに、浮気(?)だ!とか言われないか心配になってきたわ……。




 その日は私有地に戻りログアウトしまして、翌日講義とバイトを終えてログインした私は昨日の話し合いの最中、自分は戦闘ばかりでして生産・採取系列のスキル上げをしていない事に気づきました。

 ……いえ、気付かされましたので、今日はザーバン方面へ赴き、採取スキルのレベル上げを行う事にしたのです。

 必要な素材を集め終わると、私有地の裁縫工房に引きこもり初心を思い出すべく糸作りから開始。


 久しぶりに【裁縫】の基本スキルである糸作成を開くと作れる数が凄く増えてたのには驚きました。

 その中から《原初げんしょの糸》《無垢むくの糸》《欺瞞ぎまんの糸》の三種類を新規作成し、ステータスを見るとなかなか面白い素材になりそうなものでした。



 《原初の糸》はレアリティ8で装備品作成時に使用すると、追加で運が+3

 《無垢の糸》はレアリティ8で装備品制作時に使用すると、追加で体力・敏捷に+20

 《欺瞞の糸》はレアリティ8で装備品制作時に使用すると、追加で腕力・体格に+20



 この三種類の糸でよく使う事になりそうなのは《原初の糸》になりそうですが、それは私にとってという意味ですからね。

 ナナやら、他のギルドメンバーに装備を作る時はその人に合った糸を使用してあげないといけませんから在庫はあるほうが良いわね。


 ナナの装備は、暫く要らないかな。シヅキたちの装備をスキル上げを兼ねて作っておこうかしら。


 シヅキは、回避盾だから《無垢の糸》、スミナは重装系だから《欺瞞の糸》、コノハは急所攻撃を狙うタイプだから私と同じく《原初の糸》となりますね。

 でも問題はスミナの重装系のどこに私の糸を使うかなのよね……。




 「レイカさんが装備を作ってくださるのですか?」

 「えぇ、それでスミナの装備品って見た目からしてゴツいじゃない?全身鎧じゃないと嫌だって言うならこの話はなかったことにするのだけど……」

 「い、いいえ!プレート系装備でも大丈夫です!レイカさんの作る装備品は、時に全身鎧のステータスを大きく上回るって聞いたことがあるので!」


 ……誰がそんな事を言ったのかしら?いくらなんでも限度って物はあるわよ?


 「そう、それなら知り合いの鍛冶スキル持ちと相談して決めさせてもらうわね」

 「はい。よろしくお願いします!」


 まあ、スミナをガッカリさせないくらいの装備には仕上げてあげたいわね。

 とりあえずプレートメイルの相談をする為、半年前にフレンド登録した鍛冶スキルもちの彼女に会いに行きましょう。

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