正式サービス 1-3
転送された先は街の中心部《始まりの女神像》のある広場です。以前は小さな村だったんですけど……ですがここまで大きく成長しているにも関わらず周囲にお店は一軒しかないのはどういうこと?中心部じゃなくて外周部に点在してるのかな? あっ女神像も以前はなかった事を追記しておきますね。
プレイヤーがたくさん犇いている広場から街の雰囲気を確認した私は、七実と待ち合わせをした外門に向けて歩き出しました。お店で待ち合わせをしても良かったんですけど七実は先にモンスターを見たいと言い出し、私は私でβ時代とは違ったスキル構成になっているのでその確認もかねて付き合う事にしたのです。
門周辺には既に数人のプレイヤーがいましたがその中に七実らしき姿はありませんでした。どうやらまだキャラクタ作成を終わらせていないようですね。なので七実を待つ間にステータスのチェックを行いましょうか。
名前 レイカ
種族 魔族
職業 マジシャンLV1
スキル 【裁縫1/30】・【採取1/30】・【風魔法1/30】・【精神統一1/50】・【魔法運用の知識1/50】
特性 闇の加護・英雄の記憶new
ステータス 体力3 魔力10 腕力1 体格3 賢さ8 敏捷8 運5
「あれ?特性が増えてる?……そういえば最後の方で何か言っていたような……過去ログで調べてみよっと」
《英雄の斧にこめられた偉業の一つを確認。英雄の記憶を特性に追加いたします》の文字がありました。
どうやら、聞き逃していたようですね。とりあえず効果を見ておきましょう。
英雄の記憶:ソロ時の獲得経験値が上昇する。パーティ時は英雄の気質を発揮し仲間のステータスを3ずつ上昇させる。
「成長強化系ってことかな?上昇率っていうのがどの位なのかわからないけど、特性が一つ多く持っててもおかしくはないよね?」
ちなみにβテストプレイヤーの何人かはレイカと同じように何らかの偉業を成し遂げ特性を入手している。だがレイカの取得した偉業ほど凄いものを取ったものはいないのだが……。
「えっと……麗華ちゃん……よね?」
ステータスの確認をしていると背後から声をかけられ振り返る。するとそこには立派な耳を生やした見慣れた顔の女性がいた。
「うん、七実。遅かったのね?キャラクタ作りに悩んでたの?」
「そうだよ~。ってソレより麗華ちゃんが麗華ちゃんが……」
「もうなによ~?言いたい事があるなら言ってよ」
「麗華ちゃんが……いつもより3割り増し……うぅん5割り増しで綺麗になってる」
「はいはい。お世辞は聞き飽きたわ」
「うぅ、お世辞じゃないよぉ!」
七実のキャラクターデータは次の通りです。
名前 ナナ
種族 亜人族獣
職業 ファイターLV1
スキル 【薙刀1/30】・【腕力強化1/50】・【ステップ1/30】・【索敵1/50】・【採掘1/30】
特性 第六感
ステータス 体力8 魔力3 腕力7(+2) 体格5 賢さ2 敏捷5(+1) 運5
ふむふむ、七実……改めナナは攻撃系に特化したみたいね。亜人族獣の時点で魔法に不向きだもんね。
私が後衛職だからナナが前衛やってくれると色々楽になりそう!
スキルに関しても資金稼ぎをするために採取系を一つお勧めしておいたんだけど、腕力を活かして採掘を取ってる辺り結構考えてるんじゃないかなぁ。スキルの索敵と特性の第六感がやや効果が被っていますけどまあしょうがないですね。たしかLV10までは育っていないスキルに限り取替えが一度だけできると書いてありましたし。
あとステータスボーナスは近接特化振りですね。きっと体格と体力も含めてあげていくのでしょうか。
「レイカちゃん。モンスター見に行こう?」
「……その前に装備しないと!」
「そっか!装備ってどうやるの?」
「ステータス画面を表示させて装備タブからできるわよ」
「んっ!できた。武器に見習い薙刀を装備できたよ」
ナナがそう言うと手に長柄の武器が現れる。私も見習いワンドを装備しようやく街の外へ。
「はぁっ!たぁ!とぉ~」
「ウィンドボール!」
街の外で出会った最初のモンスターはβテストでもお世話になったウルフ。βテストの時はそれなりにLVが上がっていたので倒すのは楽だった記憶しかないけど、ログインしてすぐに出会ってしまった相手としてはかなりの強敵です。
「こなくそ~。 払い落としっ!」
「ナナ!前に出すぎ~。私の魔法の範囲に入るわよ!」
「えっ?分かった!」
相手がウルフ一体だけとはいえ、武器や魔法のレベルが1しかない今の段階では早々当たるものではない。ウルフの攻撃が私に当たろうものなら一撃で体力がイエローラインになるのですから。2回あたれば死ぬということですね。
ここでまたしても説明を。
βテスト時は体力も魔力も数字で表示されていましたが、正式サービス版からはバーによる%表示になりました。
体力 51%~100%がグリーンで表示
体力 50%~26%がイエローで表示
体力 25%以下でレッド表示となります。
さてでは戦闘に戻りましょう。ウルフは素早い攻撃をしながらナナをメインターゲットにしているのでまだしばらくこちらに襲い掛かってくる気配はありません。ですが魔法が当たればこちらに牙を向くのはおそらく間違いないでしょう。
「ウィンドボール!×2」
「ギャインッ!」
ナナが薙刀を振るうと同時に私は魔法を発動しました。一つは直撃コ-スで発射。もう一つは時間差でウルフの後方に飛ばしました。こうした理由は今までのウルフの回避パターンを見ていたからです。最初の方のモンスターですしそこまで多彩な動きはしないと思っていたのです。
その予想は当たり私の魔法は2連続でウルフにヒットしその体をポリゴン化させる事ができました。
「レイカちゃんやったね!初勝利だよ!」
「そうね。ナナはあんまり当たっていなかったとはいえ薙刀の扱いが素人目から見てもうまいよね。道場で合気道以外にも薙刀習ってたの?」
「!?えっ?なんでレイカちゃんがそのことを知ってるの?隠してたのにぃ」
「数年前に偶々見かけたのよ?まあ見たのは後にも先にも1度だけだけどね?」
「むぅ!レイカちゃんの秘密を私が知るのはいいけど、私の秘密をレイカちゃんに知られるのは凄く恥ずかしいよ~」
「いや?私の秘密知っちゃダメでしょう?秘密ばかり探ろうとするなら親友止めないとだめになっちゃうわよ?」
「それはダメぇ!レイカちゃんの不利益になるような事はしてないから許してぇ」
「……まあこの話を後でつめるとして、ドロップアイテムの確認と分配しよう」
取得したドロップアイテムは2ヶ月ぶりとなるウルフの毛皮とウルフの牙。毛皮の方は私が使いますが牙はいらないのでお店売りにしましょうか。
その後もスライムやウルフと戦闘をして、私達は戦闘に使うスキルが5になったので戦利品売却もかねて街に戻ることにしました。売却金額はウルフの毛皮を除いた全てを売り払い、1080cとなりました。
「レイカちゃん。今日のところはもう落ちるね。この後習い事に行かなくちゃならないから……」
「そうなの?それじゃあしょうがないわね。じゃあまた明日ね?」
「うん。レイカちゃんまたねー」
ナナはフレンド登録をした後、さっさとログアウトしてしまった。時刻は夕方、何か忘れている事があるような気がします……。何でしたっけ……?えっと、ナナ、狩り、宿……まちあわせっ!
「あぁっ!ミヤさんたちと約束していたのを忘れていました!今から行ってもいるでしょうか……」
大変な事に気づいた私は急いでミヤさんたちが待つ(はずの)宿屋へ向かうのでした。
名前 レイカ
種族 魔族
職業 マジシャンLV5
スキル 【裁縫1/30】・【採取1/30】・【風魔法5/30】・【精神統一3/50】・【魔法運用の知識4/50】
特性 闇の加護・英雄の記憶
ステータス 体力3 魔力10 腕力1 体格3 賢さ8 敏捷8 運5
ステータスボーナス残り4 ※レベルが4つ上がった為




