夢の始まりープロローグー
ほんとは短編にして1本にするつもりでしたが、まとまらなくなってきたので連載にしました。更新速度は低いですがよろしくお願いします。
「……とうとう……完成だな」
「はい!我々がこの企画を立て制作を開始して既に2年半。やっと満足の行く出来のものができました」
「うむ。主任。君を含め開発班のメンバーにはこの企画を立ててからは寝る間も惜しんでよくやってくれた……感謝している。だがあくまでもこれは我ら開発班の中で満足がいくものができたに過ぎない。
近々ベータテストの日程を立てるのでそれまでは久しぶりの家族での生活を楽しんでくると良い」
「ありがとうございます。では失礼します!」
会話がなされた場所は日本のとある都市に存在する大規模の敷地をもつ医療機器メーカーでこの会社は本来VR機能を使用した医療機器の開発から制作までを行う会社だ。だが彼らはそんな最新の医療機器を完成させたから先のような会話をしていたのではない。
彼らは医療機器ではなくこのVR技術を使用して娯楽分野へ手を伸ばしたのだ。VRで娯楽というが基本全てゲームである。トレーディングカードや囲碁や将棋にチェス、カルタに花札、リバーシなど挙げればきりがない。
そんな中、とあるレトロゲーム好きの社員がポツリと「RPGとかアクションゲームがないんだよなぁ」と呟いたことを聞いた会社の重役に話が流れて行き、あれよあれよの間にVR機器でゲームを作ると言う発想に至ったわけである。
VR機器で初めてMMORPGやアクションゲームが完成してから5年の年月が流れたある日のこと。
VRゲームの開発が爆発的に伸びた近年、また一つの会社が新しいゲームを開発、近い内にテスターを募集すると言う話が流れた。そのゲームには従来LVアップのみの機能が組み込まれるものが多い中、初めて自由にスキル(技術)が設定できるとあり話題を呼んだ。
その名もDream Community Online と言う。
「そういうわけで私の可愛い娘よ。このゲームのテスターをしてくれないだろうか?」
「イヤよっ!!」
場所は変わって、とある都市にある鏡邸内で朝食を取っていた男女二人……一人は40台中盤になったあたりだろうか、ほんの少し白髪が混じっているがイケメン(イケてる感じのする中年メンズ……複数いるわけではないけど、ズにしてみました)が、娘と呼んだ女性に対して声をかけるが、娘は無碍もなくバッサリと断ったのだ。
「なな、なんでだい?パパの会社が始めて作り上げた傑作なんだよ?ぜひとも娘である麗華にプレイしてほしいんだよ」
「何度言われてもイヤですっ!パパがそういう風に勧めてきたもので良い思いした事なんてほとんどないもの」
「そこをなんとか……」
「パパ、くどいよ!しつこいと嫌いになっちゃうけど良いのかしら?」
「うぐぅ!麗華に嫌われたらパパは……パパは……」
娘に真っ向から拒否された父親の姿は端から見ていてすごく可哀相である。そこに母親が現れ父親に対して助け舟を出した。
「そういえば和人さん、麗華ったら新しい生地がほしいって言ってたわねぇ。それを買えるくらいお小遣い上げたらどう?」
麗華は自分の方の味方をしてくれると思っていた母親……鏡陽菜が父親である鏡和仁の味方をしたことでジト目を向けたが内容は自分が有利になる取引なので黙っていた。
「生地?……あ、あぁ、趣味の裁縫だね?そうかその手が!麗華。聞いてのとおりお小遣いアップしてあげるから頼まれてくれないかな?」
勿論、和仁は陽菜の提示した内容を瞬時に理解し、麗華に対して取引をもちかけたのは言うまでもない。
結局の所、麗華はお小遣いを現状より50%上まで引き上げることに成功し、その代わりとして新しいゲームのテスターをすることになった。
麗華の返事を聞いた和仁は、すぐに電話で会社に連絡し最新型のVR機器とDream Community Onlineのベータテストアカウントを取り寄せ触れる程度に説明をしていく。
「まずこのゲームには、種族、職業、ステータス、スキル、特性の5つの項目があるんだ。
アカウントでログインしたらまずは種族を決め、次にスキルを決めるんだ
けど正式版では5つ今回のベータ版では7つ選べる。
この二種を決めると次に職業を決めるんだけど、種族とスキルを決めた際にその二つを選んだ上での、お勧め職業の一覧が表示されるからそこから選ぶといい。 勿論なりたい職業があるなら職業一覧の項目から選んだら良いからね? ステータスに関しては「正式版」だとスキルと種族、職業を決められた後に身体データの読み込みがあるからそこから数値化されて表示される。
今回はベータだから基本ステータスに種族値の増減がある。
次に特性だけど基本的にランダムで決められるんだけど今回のベータテストでは存在しないから気にしなくて良い。
最後に容姿設定と名前だけど今回は決められないよ」
「パパ……説明長い。眠くなってきた……」
「……とりあえず習うより慣れろだな。麗華 スキルの種類はたくさんあるからゆっくり楽しんでおいで……グスン」
★★★★★★★★★★★★★★★★
和仁はなにやら私の発言に傷ついたようで大げさにガックリと膝を突きながらゲーム世界に旅立つ私を見送ることとなった。
私は、そんな和仁のことを気にすることもなく最新式のVR機のスイッチを入れDream Community Onlineを起動する。
起動すると真っ白な空間にDream Community Onlineのロゴが輝いており、ステータスの開き方から戦闘のチュートリアル等項目が選べるようだった。
とりあえず簡単にベータテスト用の設定をした後、初期説明はほぼ和仁から聞いていたので、戦闘方法などを聞いておこうと思い、戦闘訓練を複数回受け動きを体に慣れさせるとすぐに街へ転送を選んだ。
気づけば遠くへ来たもんだ……と言いたくなるような長閑な村からスタートした私は早速、先ほど決めたスキルを確認することにした。
【剣術】【ダッシュ】【ジャンプ】【回避術】【索敵】【裁縫】【採取】の7つ。正式版では2つ削ることになるが、それはまたその時に決めるとして、装備の確認をして村の外へ。
街道にでるとすぐに定番のスライムに絡まれた私は先ほどチュートリアルで行ったように正眼の構えで剣を縦に勢いよく振り下ろした。
スライムは最弱モンスターということもありその一撃で体を粒子に変化させ消滅する。
《スライムを討伐しました。経験値1と2C取得しました》
どこからともなくそんなメッセージが聞こえてきたのだが、そのメッセージに対して私はというと……
「いちいちこんなメッセージきいてたら気が散るじゃない!これは要報告ね」と少し怒っていました。
その後もスライムに加え、ゴブリンやコボルトと言うような定番モンスターに襲われたがスキルをうまく利用することで何とか倒すことは出来た。
「レベルアップしました。村民Lvが5になりました。ステータスの割り振りを行ってください」
聞いてのとおり私の職業は村民。というかベータだからそれしかできない様です。だが実は村民はベータでしか存在しない職業らしく剣でも魔法でも好きなものを使えるように成長するらしい。
ステータスの割り振りだが、レベルアップごとにランダムで自動上昇するものが一つ、自分で任意に上昇させることができるものがある。
ここで簡単に私のステータスとスキルをチェックしてみようと思います。
レイカ 種族ヒューマン 職業村民LV5/LV15
体力 200(ベータ時固定)
魔力 100(ベータ時固定)
腕力 14
体格 9
敏捷 15
賢さ 8
運 5 (ステータス割り振り不可)
スキル 【剣術LV3/LV10】【ダッシュLV2/LV10】【ジャンプL1/LV10】
【回避術LV2/LV10】【索敵LV2/LV10】【裁縫LV1/LV10】【採取LV1/LV10】
※【スキル名(現在スキルレベル)/(最大スキルレベル)】
特性:なし(正式版をお待ちください)
何度も言うけどベータテストなので上限が決まっているので勘違いしないでほしい。
さてでは次にステータスの説明だけど、これはざっと流させてもらいましょう。
腕力は攻撃力やアイテム所持最大量に影響。
体格は守備力やスタンなど肉体的状態異常の耐性に影響。正式版ではHPにも影響する。
敏捷は素早さや手先の器用さに影響。生産者なら腕力と同時にあげたいもの。
賢さは魔法攻撃力と精神系状態異常耐性に影響。正式版では魔力にも影響する。
運は攻撃から生産までいたる事に影響するが任意で振れないステータス値。
ステータスなどの確認が終わった所で初期の村へ帰還した私は、コボルトの毛皮以外を全て売り払いお金130Cを入手、そのお金で見習裁縫セットを購入し【裁縫】を育てることにしました。
生産スキルに必要な道具類にも段位があり、見習、初級、中級、上級、特級、神級などがあるとかいう噂。正式版での話だろうけど。
「よし、じゃあ早速……【糸作成】」
スキルを使用してみたところ、【毛2=糸1】という公式が出てきたのでコボルトの毛皮を2つセットする。すると毛皮が光に包まれ爆発!体力が15%ほど減って
しまった上、素材もなくなってしまいました。
「び、びっくりした!……あぁ!髪の毛がちりちりになってる!リアルすぎてイヤな感じ……次はスキルじゃなくて手作業でやってみようかな……」
コボルトの毛皮を更に二つ取り出し、裁縫セットについていた抽出機(超劣化)に入れて手作業で繊維を取り出しよりあわせていく。この道具に入れると高確率で品質が下がるが手だけじゃ無理なので使わざるを得ない。
《コボルトの糸が完成しました!レアリティ1、制作評価3/10》
「生産でも報告あるんだぁ。初成功品の品質が3かぁ。でも戦闘のよりは役に立つ情報が載ってるからこれは良いね」
その後も私はせっせとありったけのコボルトの毛皮(と言っても10数枚程度だったけど)を何度か失敗しながらも糸に加工することが出来た。現在コボルトの糸の所持数は8本。
次は森の狼辺りから毛皮を採り、採取スキルで糸にするのに適した植物も採りに行こうと決めたところで一旦ログアウトしました。
スライム 1exp 2C~3C スライムゼリー・スライム核
ゴブリン 3exp 6C~8C 汚れた腰布・錆びた剣
コボルト 4exp 9C~11C コボルトの毛皮・コボルトの牙
今回入手したものが入っていたりいなかったりしますが、今後取得するかもしれないものですので記入しておきました。
……あくまでもでるかもしれない程度ですよ?