特一級機密調書八二三〇一号より抜粋④
〈記録者〉
‥‥‥その後は、まんまと逃げられ、その先は概ねそちらの知っての通りだな。長らく不透明だったレイヤ・ソーディスの存在が確認され、〝殲月鬼〟などと呼ばれるようになり、彼らの高度な技術力も明らかになった。
〈会見対象者〉
あの、不躾は承知の上でお聞きしますが‥‥‥もしかして、その襟巻きは
〈記録者〉
そういうわけだ。
(記録者は、襟巻きを外し、斬首痕を露呈)
〝首を切られても生き延びられる〟の伝説を、図らずも証明する形になってしまった。いや、完全に切られたわけではないのだから、証明したことにはならないか。
〈会見対象者〉
それにしても、随分、その‥‥‥生々しいというか、くっきり残っていますね。わざわざ襟巻きなどで隠さなくても、皇国の医療技術なら
〈記録者〉
確かに、端から見れば気分の良いものではないがな。これは、決して消さない。
言ったろう、あの男の全てを奪い尽くして私のモノにすると。それまでは、この傷が消える事は無い‥‥‥と、失礼。
(記録者の通信機が着信音を鳴らしたため、会話は中断)
はい‥‥‥はい‥‥‥では、後ほど。申し訳ないが、急用が入った。これで失礼させていただきたいのだが?
〈会見対象者〉
では、あと二つ‥‥‥レイヤだってちゃんと分ってます。貴女がその身を差し出したのが、決して打算でないことくらいね。
〈記録者〉
何?
〈会見対象者〉
もう一つは‥‥‥レイヤを手に入れるなら、とんでもない壁が立ち塞がりますよ。彼を欲しがっているのは、貴方一人ではありませんから。
【補足事項】
この直後、会見対象者は消失。しばらく付近を捜索するも、記録者は会見対象者を完全に見失う。また、この時提示された会見対象者の身元は、架空の物と判明。
本調書の会話記録と併せ、本格的な調査の要ありと認む。
記録者:第四遊撃師団特務情報部 ルディ・ヴィオール少尉