特一級機密調書八二三〇一号より抜粋③
〈記録者〉
恥ずかしながら、私は〝料理〟などしたことはなかった。野菜は、三分の一になる程分厚く皮を剥いてしまったし、両手の指は切り傷だらけになったし、調味料を無駄遣いして‥‥‥それでようやく出来上がったのは、野草と干し肉のスープだった。
〈会見対象者〉
ちなみに、味の方は?
〈記録者〉
どうにか食える代物には仕上がった、とだけ言っておこう‥‥‥いや、話が逸れたな。
その後は、ストラガイゼルに回収されて、ヘルトリーに帰るまでは、のんびり空の船旅‥‥‥というわけにはいかなかった。
医師の診断やら報告書やらが済むなり、今度は雷征龍の死体を回収にきた学者やら研究員やらに捕まった。何せ天災級の餓獣の死骸が、殆ど完全な状態で回収できたのだ、随分と喜ばれたよ。
もっとも、讃えられるのは私ばかりで、誰一人あの男の方には見向きもしなかったが。
〈会見対象者〉
彼が讃えられないのはどうかと思いますが、雷征龍の討伐は、紛れもなく貴方の功績でしょう。
失礼ですが、それで〝捨て駒〟は、さすがに卑下が過ぎるかと。
〈記録者〉
もし私一人だったら、何も出来ずに雷征龍のエサになって、こうして呑気に〝武勇伝〟など語っていなかっただろうさ。
まあ、あの男にしてみればその方が好都合だったのだろうが。




