プロローグ
朝目覚めると、天気は少し曇っていた。
今日2002年5月15日は俺、木村一哉 2年の刑期を終えて網走刑務所から出所の日だ。
朝8時半頃だろうか?
ガチャガチャと響き渡る鍵を開ける音とともに、刑務官が舎房まで迎えに来た。
『木村!時間だ行くぞ』
刑務官が相変わらず感情のない言葉でそういった。
『はい!』
と、俺は答えていよいよ最後の舎房を出た。
自分の荷物を整理して、現金80万円程だろうか思ったより残っていた。最後に腕時計ロレックス青サブをカチッと腕にはめて、パリッとしたスーツを着てネクタイを締めた。
準備は終わった。
暗い廊下を歩きいよいよ外に出た、やはり外は曇っていたが久しぶりの解放感が漂っていた。
最後の扉がガチャガチャと開けられた。
『おい木村!もう来るんじゃないぞ!』
刑務官が決まり文句を言う、
『はい!もう来ませんよ』
これも又、決まり文句であろう・・・
刑務所の外に一歩出た、
『御苦労さまです!』
迎えに来ていた、舎弟の 有馬 信二
大沼 智一
斉賀 仁
『兄貴車は一台3人までしか前までは来れないので、すみません。』
『みんな近くの駐車場で待ってます。行きましょう!』
有馬が言ったが、正直そんなのどうでも良かった。
有馬の日産プレジデントで迎えに来ていた。
後部座席に乗り込みまずは、
『タバコくれ』
と俺は一本の煙草をくわえて2年ぶりの煙を吸った。
久しぶりの煙草は本当に不味い、頭がクラクラしてどうしようもない。
それでも吸ってしまう。
『おい有馬、そう言えば小木が本部長になったらしいな?』
『はい、本部長になって偉そうにしてますよ!兄貴が娑婆にいれば兄貴がなっていたのに・・・』
そろそろみんなが待つ駐車場に着くな・・・
俺は北海道釧路市に有る田舎の組の若頭補佐、会社で言うと中間管理職だろうか、2年前にパチンコ店にゴト師軍団を入れて荒稼ぎして結局軍団の少年が捕まり首謀者という事で逮捕されて刑務所送りになった。
俺はこれからの出会い、裏切り、恋愛、激動のヤクザ人生が始まり果てていくことをまだ何も知る由もなかった。