「別れよう」とジョージは言った
タイトル思いついたところからサクッと書きました。短いです。
「別れよう」とジョージは言った。
「わかったわ、別れましょ」
「え?」
きょとん、とした恋人に正面から向き合いながら、焦点をぼかす。目を合わせる必要はない。
「だから、別れましょう。あんたが別れようって言ったのよ?ジョージ」
あたしの言葉を理解しているのかどうか、ジョージが馬鹿でかい目をぱちぱちと瞬かせている。
そう、この男、全体的に造形が大きい。身体はもちろん、頭も額も、顔のひとつひとつのパーツも、何からナニまで全てが大きいのだ。
だから焦点をぼかしても、瞬きしているのははっきりわかる。
「え、待ってよリンダ、冗談だろ?」
そう、声も大きい。
周りにいた人たちがなんだなんだとこちらを見る。
今いるのは大衆酒場だ。
互いの手には麦酒が入った木彫りのジョッキ。
あたしは町の小さな商店で働いている。ジョージは大工。
親方や兄貴分の使いっ走りとして店に通っていたジョージがある日、仕事中のあたしに大きな声で告白してきた。
『好きだ!付き合ってくれ!!』
大きな手に握られたのは小さな一輪の花。
そのギャップにキュンとしてしまったのだ。
いつでも大きく構えているその様子も、頼り甲斐があるなと思っていた。
恋は盲目というやつか。
付き合ってみると、ジョージはとにかく大きかった。
声も常に大きい。
動きも大きい。
態度も大きい。
***
「冗談?なんで?ジョージが別れようっていうから、わかったって言ったんじゃない」
「えっ、だって、リンダ今まで別れたい素振りなんてちっとも」
「今。ジョージに別れようって言われて別れたくなった」
「は!?」
ジョッキの中の麦酒を一気に喉に流し込む。
音を立ててジョッキをテーブルに置き、ぷはー!とわざとらしく声を出すと、手の甲で口元を拭い、ニヤリと笑ってみせた。
「それともアレ?あたしが泣いてすがったら『仕方ないな』って言おうと思ったの?
自分が器の大きい男だってところを、このにぎやかな酒場でアピールしたかった?」
「なっ!?」
ジョージが大きい小鼻をひくつかせた。図星。
この男はとにかく全てが大きいのだ。
そして小さいものも大きく見せたがった。
「悪いけどそういう駆け引き嫌いなの。付き合おうって言われて生理的にオッケーなら付き合うし、別れようって言われたらすぐ別れる。それだけ」
財布から銀貨を一枚出すと手のひらで思い切りテーブルに叩きつけた。
これで今日の支払いは足りるでしょ。周りのヤジにも一杯くらいはおごれる。せいぜい慰めてもらってちょうだい。
「リンダぁ」
「なぁに泣きそうな声出してんのよ。あんたの望み通り別れるの。
あたしみたいに気の強い女じゃなくてもっと立ててくれる子が好みだ、ってこの前昼休みに親方たちと笑ってたんでしょ?聞いたわよ」
あたしの言葉にギクリと身を硬くする大男を見やると、あたしは席を立った。
「見つかると良いわね。じゃ!」
おいおいと泣き始めたその大声を聞き流して、酒場を出た。
見上げると今夜は満月。まんまるい月が親指を立てて笑っている。
嫌いじゃなかったけど、デカいだけの男だったわ。
周りに聞こえるように俺を褒めろとか、デカいくせにやることがちっせえのよ。
それが可愛いとちらっとでも思っていたあたしも大概ね。
「はー嫌だ嫌だ!」
腐った男はとっとと忘れて次にいこう。
気の強さに文句言わない男、落ちてないかなー。
キャラメルボックスの名作タイトルをもじりました。
そして「ジョージなら……リンダだな」という安易なネーミング。狙いうちぃ!




