表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
野球はスリーアウトから  いよかんシーズン  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/20

投手の決断

 ある海外かいがいのプロリーグが、シーズンの終盤しゅうばんにさしかかっていた。連日れんじつ激戦げきせんつづいている。


 そんななか一人ひとり選手せんしゅ注目ちゅうもくびていた。


 所属しょぞくチームは下位かいしずんでいるものの、このシーズンちゅうずっと、ホームランを量産りょうさんしている。「いちシーズンでったホームランのかず」、その記録きろく更新こうしん現実げんじつびていた。


 そして、ついに過去かこ記録きろくならんだ。


 したがって、つぎ一本いっぽんてば、記録きろく更新こうしんになる。


 当然とうぜんながら、対戦たいせんするチームの監督かんとく投手とうしゅたちはかんがえた。


 ――あの選手せんしゅしん記録きろく達成たっせいするとき、その対戦たいせん相手あいてにはなりたくない!


 もしもしん記録きろく達成たっせいしたら、「そのとき映像えいぞう」がテレビやネットで、くりかえ使つかわれることになる。


 それは、その記録きろくを「だれかが更新こうしんするまで」つづくだろう。


 記録きろく更新こうしんは「来年らいねん」かもしれないが、「ひゃくねん」かもしれない。屈辱くつじょく映像えいぞう反復はんぷくされることになる。最悪さいあく場合ばあい末代まつだいまでのはじ


 だから、どのチームもリスクをきらって、試合しあいちゅうにこうする。


「『申告しんこく敬遠けいえん』!」


 すでにシーズンの終盤しゅうばんだ。いっ試合しあい価値かちおもみがしている。


 あの選手せんしゅにホームランをたれるくらいなら、一塁いちるいあるかせたほうがいい。


 そう。これはつための作戦さくせんだ。文句もんくわれるすじいはない。


 それで、どのチームも、


「『申告しんこく敬遠けいえん』!」


「『申告しんこく敬遠けいえん』!」


「『申告しんこく敬遠けいえん』!」


 これがここ最近さいきんたりまえになっている。


 球場きゅうじょうこるブーイング。


 どちらのチームのファンもブーイングをしている。『申告しんこく敬遠けいえん』ばかりは、もうきた。それでも、おまえらプロか。ちからちからのぶつかりいをせろ!


 そして、その選手せんしゅがまたもや打席だせきつ。これがおそらく、この試合しあいでの最終さいしゅう打席だせきだ。


 さて、どうする。ノーアウトでランナーはいない。ここは勝負しょうぶするのか。それとも、やはり『申告しんこく敬遠けいえん』か。


 球場きゅうじょうのファンは注目ちゅうもくする。


 マウンドにいるのは、リーグ屈指くっしおさ投手とうしゅだ。この投手とうしゅ非常ひじょうだから、もしかして・・・・・・。


 ファンは期待きたいする。ここは勝負しょうぶしてくれるかもしれない。


 ところが、そんな期待きたいはあっさりと、


「『申告しんこく敬遠けいえん』!」


 監督かんとくがベンチからてきてう。やはり、勝負しょうぶはしないのか。


 しかし、マウンドにいる投手とうしゅが、りょううでおおきく「×(ばつ)」じるしをつくった。


 投手とうしゅが『申告しんこく敬遠けいえん』を拒否きょひ!?


 予想よそうだにしない事態じたいに、球場きゅうじょうがざわつく。


 捕手ほしゅがあわてて、「タイム」をとった。マウンドへとはしっていく。


 まさかの事態じたいに、ベンチから投手とうしゅコーチがてきた。


 マウンドではな三人さんにん


 どうやら投手とうしゅは、「この打者だしゃとの勝負しょうぶ」を主張しゅちょうしているようだ。


 その剣幕けんまくされて、捕手ほしゅ投手とうしゅコーチがベンチをる。


 視線しせんさきには監督かんとくがいた。りょううでおおきく「×(ばつ)」じるしをつくっている。投手とうしゅ主張しゅちょうみとめるはないらしい。


 ――このチームの監督かんとくおれだぞ。ここは『申告しんこく敬遠けいえん』だ!


 そんなかおをしている。


 投手とうしゅはやれやれと、かたをすくめた。


「『申告しんこく敬遠けいえん』はしない。普通ふつうよんきゅうげて、この打者だしゃ敬遠けいえんする。絶対ぜったいにバットがとどかない、そんな場所ばしょげるから安心あんしんしてくれ。今日きょうボールはこんなにはしっている、それをファンにせたい」


 投手とうしゅコーチがベンチにはしる。


 コーチの説得せっとくにより、監督かんとく不満ふまんがおながらみとめた。


一塁いちるいあるかせるならいいだろう。さっさとよんきゅうげてしまえ」


 結局けっきょく打者だしゃとの勝負しょうぶはしないことになった。


 球場きゅうじょうはブーイングのあらしである。


 で、投手とうしゅ渾身こんしんのストレートをげた。チームのベンチにかってだ。


 そのねらいはもちろん――


 ボールが監督かんとく命中めいちゅうする。


 と同時どうじに、


「まずはいっきゅう!」


 投手とうしゅえた。


 予想よそうがい出来事できごとに、球場きゅうじょうしずまりかえる。


 が、つぎ瞬間しゅんかんには、


「あとさんきゅう!」


「あとさんきゅう!」


「あとさんきゅう!」


 ファンのこえ喝采かっさいへとわった。


次回は『投手コーチの食事会』というお話です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ