給食の時間
プロ野球では、シーズン中に選手たちが、小学校を訪問することがある。
そうやって、プロ野球を知ってもらうのだ。身近に感じてもらう。
とはいえ、プロ野球に興味のない子もいる。
そんな子にとっては、プロ野球選手は「でかい人」でしかない。
そこで、この球団では、「球団マスコットキャラクター」を同行させることにしていた。
選手には寄ってこなくても、マスコットキャラクターには寄ってくる。そういう子どもたちは結構いるのだ。
球団にとっても、大きな利点がある。マスコットキャラクターは基本的に、球団からいなくならない。
一方で、選手たちは違う。「移籍」や「海外挑戦」でいなくなってしまうことがある。
なので、子どもたちにおぼえてもらうなら、マスコットキャラクターの方が将来おいしい。
で、今回の小学校訪問も、今のところ順調だ。
けれども、非情な時間が訪れる。
給食の時間だ。
残念ながら、大人の事情により、マスコットキャラクターはここで退場となる。
「次の用事があるみたいだから」
小学校の先生が子どもたちに言う。
しかし、選手たちは子どもたちと一緒に、給食を食べていくのだ。
マスコットキャラクターは以前から思っていた。「ずるい」と。
そこで今回、抵抗してみる。
教室では、給食の用意をしていた。
そんな教室に、マスコットキャラクターは留まり続ける。
次々と用意されていく各種おかずに、パン、イチゴジャム、そして、牛乳。
マスコットキャラクターはまだ粘るつもりでいたが、
「そろそろ時間なので、帰りますよ」
球団マネージャーがそう言って、コッペパンを一個わたしてくる。
そのあと、教室から追い出そうとしてきた。
抵抗するマスコットキャラクター。
それを見て、選手たちは笑っている。
その時だ。
女の子が一人、マスコットキャラクターに近づいてくる。
「これ、あげる」
イチゴジャムだ。自分のイチゴジャムを、マスコットキャラクターにくれるらしい。
さらに何人かがやって来た。同じようにイチゴジャムをくれる。女の子ばかりではない。男の子もいる。
イチゴジャムを受け取りながら、マスコットキャラクターは思った。なんて心の奇麗な子どもたちだ。
(それにひきかえ・・・・・・)
じろりと選手たちをにらむ。
そして、三〇分後だ。
マスコットキャラクターは、球団マネージャーが運転する車で、小学校を後にしていた。
結局、給食を一緒に食べることはできなかった。
が、足元の袋には、たくさんのイチゴジャムが入っている。
(少しやり過ぎたかも)
あのあと、マスコットキャラクターは放送室を占拠した。全校放送でイチゴジャムの提供を呼びかけたのだ。
その結果、さらなるイチゴジャムを獲得した。予想していた以上の数になる。
足元の袋以外にも、車のトランクは今、イチゴジャムで「ぎっしり」だ。
マスコットキャラクターはニコニコしながら、
(あの小学校には、来年も行きたいな)
その時は、今年のように「手ぶら」というのも何だし、
(よし! タッパーを持っていこう!)
次回は「天ぷら」のお話です。




