最後のくじを引く者
「えー、今年のドラフト会議で、一位指名が重複したわけだが」
ある球団では秘密の会議が開かれていた。
ドラフト会議の開催は三日後。
すでに、いくつかの球団が一位指名を公表している。
この球団も、その一つだ。「マサキ選手」だと公表している。
そして、すでに指名が重複していた。くじ引きは確定。
「それで、前もって決めておきたい。誰がくじを引くのか」
「そうは言っても、うちは最後だからね」
マサキ選手を指名する球団がさらに増えても、それは変わらない。くじを選ぶことはできないのだ。箱に残っている最後の一つを、黙って引くだけ。
「だから、誰が引いても同じでしょ」
他球団が先に「当たりくじ」を引いてしまえば、こっちはお手上げだ。
「だからこそ、こう考えたい。くじを引く人選は自由だと。本人に責任は皆無。これは、最後にくじを引く球団だけの『特権』だ」
「なるほど」
たとえばの話、「話題性に走る」ことも可能だ。うまくいけば、球団のイメージ向上につながるかも。
さっそく自由な意見を出し合う。
「元アメリカ大統領とか、面白いかもしれませんね」
「さすがに謝礼が、ものすごいんじゃないか?」
「でも、大統領のそっくりさんだと、インパクトが弱いし・・・・・・」
「こんなのはどうかな? マサキ選手と同姓同名の別人」
そんな感じで会議は続く。
そして、ドラフト会議当日になった。
会場がざわつく。
謎の覆面男が、くじ引きに登場したのだ。プロレスラーのようなマスクで、頭部を覆っている。
体つきからして、中年男性のようなので、
「球団OBの誰かか?」
ひそひそ声が飛び交う。
で、抽選だ。各球団が、くじを引いていく。
最後のくじを、謎の覆面男が引いた。
その結果、当たりくじを引いたのは――
「よっしゃー!」
謎の覆面男!
してやったりという顔で、その球団の関係者全員が、椅子から立ち上がって大喜びする。
そして、関係者の一人が覆面男に駆け寄ると、会場にいるテレビカメラに向かって、こっちを注目するよううながした。
生中継の中、謎の男が覆面をとる。
「マサキー、見てるかー! 父ちゃん、引いたぞー!」
選手の父親である。もちろん本物だ。そっくりさんとかではない。
当たりくじを引いた場合にのみ、正体を明かすことになっていた。
これにより、翌日のスポーツ新聞各紙、その一面が楽しいことになった。
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