予行練習
ドラフト会議の前に、複数の球団が「一位指名」を公言した。
その結果、三球団の指名が重複する。ドラフト当日を待つまでもなく、くじ引きになることが確定した。
ある球団の事務所で、球団社長が監督に言う。
「くじを引くのは、あなたに任せました。家で練習してきてください」
球団職員がつくった「くじ引きセット」を、監督はもらった。
本番と同じ大きさの箱、そして、大量の「くじ」だ。「当たりくじ」一枚と「はずれくじ」二枚が一セットになっていて、全部で二〇〇セットある。
「こんなに必要ないんじゃ」
監督が言うと、
「何回も使うと、くじに特徴的な折り目とかがついちゃうでしょ。本番では、そんなのありませんよ。たっぷり練習してきてください」
監督は家に帰ると、さっそくやってみた。
普通に考えれば、当たる確率は三分の一だ。
三〇回連続で試したところ、
「八回か」
やや不調。
監督は小さなため息をつく。
そろそろ、一人で練習するのにも飽きてきた。
そもそも、本番では相手がいるのだ。今の練習では不十分な気がする。
なので、五歳の娘を呼んだ。
「くじ引きで、パパと勝負しようか」
「いいよー♪」
で、一〇〇回勝負してみた。
その結果、
「・・・・・・な、なぜだ」
当たりくじを、娘は五〇回引き当てた。
それに対して、監督は二〇回である。ぐぬぬぬぬ・・・・・・。
そして、本番当日になった。
ドラフト会議の会場がざわつく。
なんと、監督が病欠(仮病なのは内緒)!
しかも、その代理として、監督の娘(五歳)が登場したのだ。この子が、くじを引くという。
「今日はお父さんのお手伝い? お父さんの病気、早く治るといいねぇ~」
「くじの箱まで、手が届かないでしょ。ほら、靴をぬいで、このイスの上に乗りなさい」
ガキだと思って、なめてかかる他球団。
その結果は、みなさんの予想通りだ。
監督の娘、「当たりくじ」を引き当てる!
この時、監督は家のテレビの前にいて、
「よし!」
ガッツポーズをしていた。
一方、ドラフト会議の会場では、
「やったー♪ これで欲しいものを買ってもらえるー♪」
娘もガッツポーズをしていた。
次回、小学校で事件が・・・。




