闘将
そのデッドボールに、球場は一瞬静まりかえった。
だが、すぐにざわつく。
この時、球場にいる者たちの多くが、同じ人物に目を向けていた。
片方のチームの監督だ。
たった今、同じチームの選手がデッドボールをくらったのだ。しかも、その選手は前の打席でもデッドボールだった。
この監督の性格を考えると、今すぐ乱闘になってもおかしくない。
先日もそうだった。自ら先陣を切ってベンチを飛び出すと、相手チームの投手に殴りかかったのである。
しかし、そんな闘志あふれる監督が、なぜか今日は動かない。
それがかえって不気味だ。
そのまま試合が進んでいく。
で、またもや回ってきた。前の打席、前の前の打席で、この選手は連続デッドボールだ。
ネクストバッターズサークルから打席へと向かう選手。
その時だ。監督がベンチから出てくる。
ここで代打を出すのだろうか?
しかし、どうも様子がおかしい。なぜか監督はバットを握っている。
これって、もしかして・・・・・・。
球場のざわつきが大きくなる。
監督の視線ははっきりと、相手チームの投手をにらんでいた。
そして、自ら打席に入ろうとする。
これはまずいと思って、周囲が止めに入った。同じチームの選手やコーチ、さらには審判もだ。
相手チームの投手は内心びびっていた。あの監督は、「ケンカがむちゃくちゃ強い」と評判なのだ。
一回目のデッドボールも二回目のデッドボールも、わざとぶつけたわけではない。
しかしながら、ぶつけてしまったのは事実。
投手は味方のベンチをちらりと見る。
そこには衝撃の光景が広がっていた。
全員が寝ている! よりにもよって、こんな時に!
どう考えても、あれは「たぬき寝入り」だろう。このまま乱闘に突入しても、味方ベンチからの加勢は期待できそうにない。
だったら・・・・・・。
投手はマウンドで帽子を取る。相手チームの監督に向かって、深々と頭を下げた。
次回、まずは『路上ライブ』からスタート。




