ある計画
宇宙空間を白い球体が飛んでいた。
野球のボールだ。どこかに向かっている。
それを、別の何かが追尾していた。
小型無人探査機だ。搭載したカメラで、野球のボールを撮影している。
宇宙空間を飛行する、二つの物体。
地球を飛び出してから、すでに四か月が過ぎていた。
やがて目的地が見えてくる。
火星だ。赤い大地の惑星。
野球のボールは一直線に、火星へと降下していく。
一方、小型無人探査機はこれまでと違って、ボールを追いかけなかった。火星の上空を飛びながら、カメラの倍率を上げていく。
その映像が、地球に届いていた。
「『野球のボール三号』、火星への着陸に成功しました!」
オペレーターが言う。同じ部屋にいる人たちは、ほんの少し喜んだ。
着陸成功は第一段階。
このあとが重要だ。
「ボールからの電波を受信! 内部カメラが起動しました!」
第二段階も問題ない。
正面のモニターに、ボール内部のカメラから映像が届く。
モニターは真っ暗だ。
しかし、ボールから送られてくる各種数値によれば、特に問題ないようだ。
カメラの起動から三〇秒後、第三段階に入る。
火星上にあるボールが、左右に開き始めた。
この時、桃太郎の話を思い浮かべた者もいる。あの話で桃が割れる時、こんな感じだったような。
画面が明るくなる。ボールの内側に、外からの光が入ってきたのだ。
火星の景色が見える。
ところが、カメラのすぐ前に、ある物が置いてあった。それが景色の中央をさえぎっている。
けれども、オペレーターは気にしない。
「すべての数値が良好です」
そして、数日後だ。
火星から届いた映像の一部が、インターネットやテレビを通して、地球上に流れていた。
ボールの中にあったのは、「カメラ」と「特製の超小型植木鉢」だ。
カメラはとらえていた。植木鉢から芽が出る瞬間を。
火星の景色を背に、緑色の双葉が開いていく。地球の植物「シロイヌナズナ」だ。
映像を見た人たちは想像する。
いつの日か、火星は緑あふれる星になるかも。
これは始まりだ。
次回、乱闘?




