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野球はスリーアウトから  いよかんシーズン  作者:


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15/20

星を見るツアー

 いまなつやすみだ。


 そして、まもなくよるじゅうになる。


 集合しゅうごう場所ばしょ体育館たいいくかんでは、大勢おおぜい親子おやこがうきうきしていた。これから特別とくべつなイベントがあるのだ。


 しばらくして、小学校しょうがっこうまえに、さんだいのバスがまった。


 体育館たいいくかんにいたどもたちが次々と、バスにりこんでいく。


 りこむときに、どもたちはもらった。一本いっぽんの「ペットボトル」と、「おかしのわせ」だ。


 あさまでにおなかがすいたら、これをべればいい。


 全員ぜんいんわると、バスがはしした。郊外こうがいへとかう。


 これは『ほしるツアー』だ。


 希望者きぼうしゃ事前じぜんもうしこみをして、このった。


 ちにったイベントなので、バスのなかはにぎやかだ。


 どもたちが、はしゃいでる。今夜こんやは、あさまできているつもりだ。途中とちゅうねむくならないように、しっかりひるをしてきた。


 バスがいち時間じかんくらいはしって、目的もくてき場所ばしょく。


 プロ野球やきゅうぐん使つかっている「野球場やきゅうじょう」だ。


 この時間じかん野球やきゅう試合しあいはやっていない。


 けれども、野球場やきゅうじょうのゲートはひらいていた。


 野球場やきゅうじょうなかからは、どもたちのこえこえてきている。


 どうやら、ほか小学校しょうがっこうどもたちが、さきいているらしい。


 バスからおりて、野球場やきゅうじょうなかはいる。


 見上みあげると、満天まんてんほしだ。


 その光景こうけい感動かんどうするどもたち。


 今日きょうあさまで、ここでほしるのだ。


 あさごろには、「りゅーせーぐん」とかいう、たくさんのながぼしることができるらしい。


 なかなかることのできないものだから、しっかりておこう。


 自分じぶんせきくと、イヤホンをもらった。片方かたほうみみにつけるイヤホンだ。


 さっそくみみにつけてみると、アニメのこえこえてくる。


 いま野球場やきゅうじょう大画面だいがめんでやっているアニメだ。


 ねむたくなったら、イヤホンをはずせば、おとこえなくなる。


 でも、今日きょうあさまできているつもりだ。そのために、しっかりひるをしてきたのだから。


 とはいえ、すでにねむそうにしているもいる。


 そんなどもたちに、らせだ。


 あさ四時よじになったら、野球場やきゅうじょう全体ぜんたい音楽おんがくながれるらしい。


 だから、たとえねむってしまっても、きることができる。


 しかし、どもたちのおおくが、こうかんがえていた。


 あさまできていよう。


 これは未知みちへの挑戦ちょうせんだ。簡単かんたんなことじゃないだろう。でも、がんばればなんとかなるはず。


 そんなかんがえだったけれど、よる十二じゅうにぎると、ているどもの姿すがた目立めだつようになった。


 で、さらに時間じかんぎていき、あさ四時よじになる。


 野球場やきゅうじょう全体ぜんたいに、音楽おんがくながはじめた。


 どもたちがます。


 まだぼけているものの、どうにかこうにか球場きゅうじょう時計とけいる。んーと、あさ四時よじだ。


 しまった! ちゃった!


 しかし、時間じかんもどせない。真夜中まよなかのドキドキタイムが、わってしまった。


 すこしだけ後悔こうかいする。さらに、すこしだけ反省はんせいもした。


 そのあと、そら見上みあげる。


 まもなく、「りゅーせーぐん」だ。たくさんのながぼし


 それをるために、ここにたのだ。


 ふとおもう。おなかがすこしすいてきたかも。


 でも、おかしをべるのは我慢がまんする。


 どもたちのなかには、こうかんがえるたちがいた。


 いえってかえって、おとうといもうとせびらかしながらべよう。


 または、いえってかえって、おとうといもうとけてあげよう。


 どもたちの性格せいかくはさまざまだ。


 いまはおかしを我慢がまんする理由りゆうが、ほかにもあるし・・・・・・。


 空腹くうふくらんぷりして、どもたちはそら見上みあげる。


 まだよるだ。ほしている。


 どもたちはわくわくしながらった。


 ながぼしはまだかな、まだかな。


 でも、集中力しゅうちゅうりょくつづかない。


 うえばかりをずっとているのは、けっこう大変たいへんだ。くびつかれてくる。


 なので、ときどききゅうけいだ。


 そうしているうちに、あさまで、のこ十五じゅうごふんくらいになった。


 突然とつぜん何人なんにんかのどもたちがさけぶ。


 最初さいしょながぼしだ。


 それをいて、球場きゅうじょうにいるどもたちが、いっせいにそらる。


 しかし、そらひろいな、おおきいな。


 しかも、ながぼしうごきははやい。


 うまくつけられたは、かがやかせた。


 一方いっぽうで、そうじゃないは、さらにさがつづけて、さがつづけて・・・・・・


 つぎながぼしつけた!


 ついに、「りゅーせーぐん」がはじまったっぽい。


 そら一面いちめんながぼしおおう、そんなかんじを想像そうぞうしていたけれど、ながぼしひとつかふたつずつだ。


 しかも、ずっと連続れんぞくして、ながぼしえるわけじゃない。一分いっぷん二分にふんか、そのくらいの間隔あいだがあく。


 それでも、すごい! すごい!


 そうおもっていたのは、最初さいしょ十分じゅっぷんくらいだった。


 どもたちはきてくる。


 ながぼしつけてねがいごとをしようにも、そのねがいごとのほうきてきた。


 むりやりひねりすので、どんどんねがいごとのしつがしょぼくなっていく。


 ついには、あくびをするどもたち。


 あとでながぼし写真しゃしんをもらえるそうだし、もうそらはいいや。


 こういうのにずっと夢中むちゅうになれる、そんなおおきくなったら、宇宙うちゅう飛行士ひこうしだったり、UFOをさがすお仕事しごとをするんだろうか。


 などとかんがえていると、球場きゅうじょうそとから、おいしそうなかおりがただよってくる。


 パンだ。きたてパンのかおり。


 球場きゅうじょうない放送ほうそうながれる。


「パンががりました」


 どもたちにチケットがくばられる。


 この『ほしるツアー』には、あさごはんがついているのだ。


 チケットはさんまい。


 あかいチケットと、黄色きいろいチケットと、あおいチケットだ。それぞれいちまいずつ。


 チケットの説明せつめいが、球場きゅうじょうないながれる。


あかいチケットで交換こうかんできるのは、『しょくパン』です。きなしょくパンと交換こうかんできます」


 どもたちはくびをかしげる。


 しょくパンって、だいたいどれもおなじだ。なのに、きなしょくパン?


 つぎは、黄色きいろいチケットの説明せつめいだ。


黄色きいろいチケットで交換こうかんできるのは、『きなパン』です」


 どもたちはよろこぶ。こっちは色々なパンのなかから、きなものをひとえらべるみたいだ。


あおいチケットで交換こうかんできるのは、『きなみもの』です」


 これもうれしい。バスにりこむときにもらったペットボトルは、もうからっぽだ。


 いま放送ほうそういて、どもたちのテンションががる。


 もう眠気ねむけはまったくかんじない。


 はやく、はやく。


 とはいえ、ここにいるどもたちが、いっせいに球場きゅうじょうそとると、大混乱だいこんらんになってしまう。


 だから、順番じゅんばんだ。おなじバスにってきたどもたちで、ひとつのグループになる。


 まだかな。まだかな。


 きたてパンのかおりは、どんどんつよくなっている。


 球場きゅうじょうのあちこちでは、おなかが「グー」の大合唱だいがっしょうだ。


 すでにパンをにしたどもたちもいて、まだのはそれをうらやましそうにている。


 でも、自分じぶん順番じゅんばんはもうすぐだ。


 そして、ついに――


「じゃあ、ってください。移動いどうしますよ」


 係員かかりいんさんの案内あんないで、球場きゅうじょうそとる。


 すると、そこにはキッチンカーがたくさんならんでいた。


 なか料理りょうりができるくるまだ。絵本えほん図鑑ずかんたことがある。おいしいくるま


 きたてパンのかおりは、キッチンカーのなかからしている。


 キッチンカーのまえには、「のぼり」がっていた。


 これも絵本えほんたことがある。「桃太郎ももたろう」が背中せなかにつけている、たてにながい「はた」だ。


 あかい「のぼり」があるキッチンカーでは、あかいチケットとしょくパンを、交換こうかんできるらしい。


 バターをぬって、オーブントースターでいただけの、シンプルなしょくパンだ。


 しかし、どのキッチンカーのしょくパンもまったくおなじ、というわけではなかった。


 それもそのはず。これらのキッチンカーは、ライバル会社がいしゃ同士どうしだ。「パンをつくる機械きかい家庭おうちよう)」や「パンをくオーブントースター(家庭おうちよう)」が主力しゅりょく商品しょうひん会社かいしゃばかりである。


 ――きたてパンのあじを、どもたちにってもらおう。これは業界ぎょうかい全体ぜんたいのためになる。


 そんな建前たてまえ一方いっぽうで、本音ほんねはこちら。


 ――きたてパンを試食ししょくしてもらえば、どこの会社かいしゃ一番いちばんかわかる。たぶん、うちの会社かいしゃだけどな。ほかのみんなは、二番手にばんてあらそいを必死ひっしにがんばってくれ。


 そういうわけで、ライバル会社がいしゃ同士どうしんだ。この『ほしるツアー』を企画きかくしたのだ。


 だから、流星りゅうせいぐんるのは、あくまでも「前座おまけ」。


 重要じゅうようなのは、ここからだ。


 うちの会社かいしゃ機械きかいでつくったパンをべて、「おいしい!」とってもらいたい。


 できればいえかえったあとで、「あさはやっぱりきたてパンだね♪」と、親御おやごさんにってもらいたい。


 そういう下心したごころがあるので、参加さんかりょう格安かくやす地域ちいきによっては無料むりょうだ。もしも、機械きかい売上うりあげにつながらなければ、会社かいしゃ赤字あかじになってしまう。


 なので、いまやるべきことはひとつだ。どもたちに、おいしいパンをべてもらう。そのことだけに集中しゅうちゅうするのだ。それがかならずや、機械きかい売上うりあげにつながるはず。


 まずは、ほか会社かいしゃあじ比較ひかくしやすいように、「バターをぬっただけの、シンプルなしょくパン」で勝負しょうぶ


 ――こっちのかおりは~、おいしいぞ~。


 きたてパンのかおりを、うちわでパタパタあおいで、どもたちのほうおくる。


 ――どうだ、どもたちよ。こんなパンを、毎朝まいあさべたいとおもわないか?


 もちろん、しょくパンだけでどもたちが満足まんぞくする、とはかんがえていない。


 だから、黄色きいろいチケットがある。このチケットで交換こうかんできるのは、それぞれの会社かいしゃ得意とくいとするパンだ。


 クロワッサンやブリオッシュが得意とくい会社かいしゃ。あんパンやジャムパンが得意とくい会社かいしゃ。ホットサンドが得意とくい会社かいしゃ。ワッフルなんかもつくれちゃう会社かいしゃ


 ――さあ、どもたちよ。きなパンをえらぶのだ。


 黄色きいろいチケットをに、どもたちがキッチンカーにむらがってくる。


 ――あとはわかっているね。おうちにかえったら満面まんめんみで、「あさはやっぱりきたてパンだね♪」だ。「ながぼしたよ♪」だけでますんじゃないぞ。


次回は『ある計画』というお話です。

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