射的屋
プロ野球の本拠地球場に、射的屋がオープンした。
お客さんたちはコルク栓式の空気銃を借りて、景品を狙う。棚から落とすことができれば、その景品を獲得だ。
ここはプロ野球の球場なので、それに合わせた景品もある。
たとえば、「選手の首振り(ボブルヘッド)人形」だ。他にも、さまざまな選手グッズが並んでいる。
で、今のところ、一番人気は「選手の直筆サインボール」だ。
なんと、この「直筆サインボール」には、選手直筆の「イラスト」がついている!
最上段の棚に並ぶ「選手の直筆サインボール」、それだと少し殺風景かな。そう思ったスタッフが、選手たちにサインだけでなく、ちょっとした「イラスト」も描いてもらったのだ。
これが大当たりする。
イラストが上手か下手かは関係ない。かなりの「レアもの」というのが重要だ。欲しいファンは結構いる。
そういうわけで、最上段の棚にずらりと、「選手の直筆サインボール(イラストつき)」が並んでいた。
で、期待した通り、お客さんたちの多くが狙っている。
子どもにせがまれた「父親」。彼女にせがまれた「彼氏」。
そして、孫にせがまれた「おじいちゃん」だ。
空気銃を手にして、おじいちゃんは目をしばしばさせる。
(ど・・・・・・どれだ?)
おじいちゃんの視力だと、直筆サインや直筆イラストが見えにくい。棚の最上段にあるのは、すべて野球のボールなのだ。
とりあえず、孫の声を頼りに狙うものの、
「ちーがーうー! おじいちゃん、そっちじゃないよー!」
この射的屋では、こういう光景が珍しくなかった。孫たちに怒られる「おじいちゃんズ」。
それを見かねて、射的屋のスタッフは改善に乗り出した。
どの選手のボールかわかりやすいように、一工夫してみる。
ボールのうしろにある壁に、選手の顔写真を貼った。こうしておけば、今よりもわかりやすいはず。
そして、本日もプロ野球の試合が終わった。地元球団の勝利だ。
試合のあと、射的屋にはお客さんの列ができていた。
ただし、今日はお客さんの多くが、相手チームのユニフォームを着ている。
で、狙うのは・・・・・・。
「その写真は景品じゃありませんよ。当てても何ももらえませんよ」
射的屋のスタッフが、やんわり注意するものの、
「わかってるって。おかしいなー、ボールを狙っているつもりなんだけどなー。まだ銃に慣れていないから、こういうこともあるかもー」
にやにやしながら、選手の顔写真にコルクの栓を当てまくる。
よくも、今日の試合でホームランを打ったな。ポコッ。
よくも、今日の試合でファインプレーをしたな。ポコッ。
よくも、今日の試合でナイスピッチングをしたな。ポコッ。
そうやって敗戦のストレスを発散してから、満足そうに帰っていくのだった。
次回、星を見に行こう!




