オリンピックの正式種目
国際会議が終わった。オリンピックの正式種目を決める会議だ。
新たに採用されるのは、最終候補に残っていた競技の内、どの競技なのか。
会議場から出席者たちが出てくる。
それを取り囲む記者たち。
日本代表として会議に参加していた男性、彼も同様だった。日本の記者たちに取り囲まれる。
「最後の正式種目は何ですか?」
質問された男性は短く沈黙してから、首を横にふった。
そのあとに告げる。最後に正式種目に採用された競技は、何なのか。
それは、日本が強く推していた『野球』ではなかった。
つまり、次の次のオリンピックでは、『野球』は正式種目ではない。
記者の間からも、落胆の声がもれる。
しかし、その三日後だ。
例の会議に出席した男性が、日本で記者会見を開く。
「えー、先日は非常に残念なことになりましたが」
このあと男性の口から、爆弾発言が飛び出す。
「次の次の冬季オリンピックで、『冬野球』の正式種目化を目指すことにしました!」
夏がダメでも、冬がある。
だから、つくった。新競技の『冬野球』を。「冬に試合をする」という以外はすべて、『野球』と同じだ。
この先いくつもの「ハードル」があるだろうが、まずは正式種目化に向けての「行程表」をつくりたい。そう男性が語る。
「たとえば、どんなハードルですか?」
記者たちの一人が質問する。
「試合会場です」
その答えに記者たちも納得だ。『野球』と同じなら、試合会場として「野球場」が必要になる。
しかも、冬季オリンピックの開催地となると、野球場は野球場でも、「ドーム球場」が必要だ。開催地にそれがなければ、つくることになるが・・・・・・。
「たしかに、ハードルはたくさんありそうですね」
記者たちの一人が言った。
で、その翌日。またもや記者会見だ。
ただし、今回は前日の男性ではない。若い女性と若い男性の二人組だ。
彼らが声をそろえて言う。
「次の次の冬季オリンピックで、『ベースボール5(ファイブ)』の正式種目化を目指すことにしました!」
この競技、その名の通り、『野球』によく似ている。
しかし、いろいろと違いがあった。男女混成チームだったり、ピッチャーというポジションがなかったり、バットやグローブが必要なかったり。あと、ヨーロッパなどで人気上昇中。
そして、試合会場も違う。
なんと、この『ベースボール5(ファイブ)』は、「体育館」でも試合が可能だ。専用の球場がなくても何とかなる。
正式種目化を目指す『冬野球』にとって、強力なライバルの出現だった。
次回は「射的」のお話です。




