むかしむかしのパソコンは
一九七〇年代半ば、「コンピュータ」の歴史は、一つの転換期をむかえようとしていた。
個人が所有するコンピュータ、いわゆる「パーソナルコンピュータ」、その市場で劇的な出来事が起きたのだ。
ある製品がアメリカで登場した。
組み立て式の「パソコン」である。
ハンダ付けの知識や、その技術や道具が必要なものの、買った本人が組み立てることで、大幅なコスト削減に成功した。これまでのパソコンと比べて、非常に安い。
組み立て式のパソコンが登場したことを、当時の理系男子たちは歓喜した。
「このパソコンなら、お財布に優しい! 自分たちにも手が届くぞ!」
しかし、それはアメリカでの話だ。
日本では事情が違う。
そのパソコンをアメリカから運んでくる、そんな経費が上乗せされるのだ。
「この値段だと、まだ手が出せない」
そこで、関西にある町工場が決断した。
「じゃあ、自分たちでつくろう! 日本製の組み立て式パソコンを!」
さまざまな困難を乗り越えて、日本製のパソコンを完成させた。アメリカから運んでくる経費が不要なので、パソコンの値段を安くできる。
で、さっそく販売を開始するが、
「動かないぞ!」
知識も技術もないのに買えば、そうなるのは当然だ。かわいそうだが、そんな人にはあきらめてもらうしかない。
だからこそ、きちんと完成させた時には感動ものだ。自分で組み立てたパソコンが、ちゃんと動く!
関西の町工場から全国へ。次々と出荷されていく、日本製の組み立て式パソコン。
この理系男子も、そのパソコンを買った一人だ。バイトをしまくり、それで貯めたお金で買った。
だから、絶対に動かす!
パソコンを慎重に組み立てていき、最後の部品を取りつけた。
そして、電源をオンにした時だ。
パソコンから音楽が流れ始める。
「え?」
これは、販売元の町工場からのサプライズだ。完成させて最初に電源をオンにすると、その一回だけ曲が流れる。
音質は悪いものの、何の曲かはすぐにわかった。関西にあるプロ野球球団の「球団歌」だ。
この理系男子は、その球団のファンなので、苦労して完成させた感動が、さらにアップする。これは良いサプライズだ。
一方、別の場所。
こちらでもパソコンを完成させたばかりだ。音楽が流れ始める。
しかし、こっちの理系男子は、他球団のファンなので、
「は? なんで、ライバル球団の曲を流してんだよ! ふざけんな!」
思わず手が出てしまい、完成させたばかりのパソコンを、台無しにしていた。
次回は「ファン感謝デー」のお話です。




